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卒業試験 (2)

(リジェット視点)


「完璧ですわ…! ハロックル様!!」


建物の外装の正確で緻密な装飾と…室内の小さなテーブルクロスに至るまで、私がイメージした通りの色合いと質感が再現されている。やっぱりハロックル様をスカウトしたことに間違いはなかった。


「よかった、リジェットさん。まだ時間はあるから、何かリクエストがあれば微調整ができるよ。」


魔力でこれだけ立派な宿を建てても、ハロックル様は涼しい顔をしていた。やっぱり魔術師の研究生の中でもトップの実力はスゴい。


「ありがとうございます。念のため各部屋をもう一度チェックして参ります。」


ハロックル様はここまでよくやって下さった。


「これ…本当に効くかしら…」


リジェットはメイド服のポケットから、緑色の液体が入った小さなガラス瓶を取り出した。


(不安だが、やらなければならない…)


どんな手を使ってでもメイド最後の試験に悔いは残したくない。何より今度こそ、フィリに絶対勝ちたい。

意を決してハロックル様の待つロビーに向かうと…


「リース?」


「リースさん…!」


魔術師のローブごと全身びしょ濡れになって、真っ青な顔をしたリースが立っていた。


「ハロックル様っ、一緒に来てください! ナズナ…ナズナが…!!」


「あっ?! ハロックル様っ!!」


リジェットが言葉を発するより早く、2人の魔術師は一瞬で視界から消えていた。



(フィリ視点)


「バテ様…こちらの方々は?」


メイドの卒業試験でアーゼの土地に宿が建つのは珍しいらしく、審査員の一人である王妃様は最初の宿泊先にこの地を選んだ。


「宮廷楽士のみなさんだよ!! ほら、毎夜に湖上をライトアップしてコンサートをしたらステキでしょ? 観客席は僕が個々に空に船を飛ばすからさ。音楽とポーリンの街の夜景も楽しめてロマンチックだし。昨日思い付いたんだ!!」


(バテ様のこの屈託のない笑顔が恐しい…)


「それはステキな催しですけど…採算が合うかどうか…」


どうしよう…このアーゼの落ち着いた神聖な空気を最大限に味わってもらおうと部屋数も最小限にしてしまった。

宮廷楽士に支払う賃金も含めて…もう一回計算しなおさなくては…。


「フィリなら何とかなるよ。こちらは僕のお友だちのミミィちゃん! ポーリンの街からこのアーゼの宿までお客さん達を運んでくれるって。必要だったら仲間もたくさん呼んでくれるみたい。」


「あっ!」


王宮殿の西の広間の壁画でみたことがある…! 実物はなんて美しい…大きな白い嘴とフワフワの白銀色の羽毛は思わず触れてみたいと思わずにはいられない。

でもこれって基本人に慣つかないポーリン伝説の霊鳥獣なんじゃあ…。


「エサは、ペリソナの花と竹の葉を10キロずつでいいって。」


「え…?」


(も、もう一度、予算の計算を…)


「さっ、今日は早速、王妃様と宮廷のお偉さん方が泊まりに来ますから、みなさんハリキっていきましょ~!!」


「「「おぉ~!!!」」」


(サポートに来てくれたメイドの先輩たちも、突然現れた宮廷楽士の皆さんも…にわかには信じ難いけど伝説の霊鳥獣ミミィちゃんまで何だかすっごく楽しそう…)

無邪気に振る舞うバテ様の周りに不思議な一体感が生まれている。


(それにしても私でも手綱をさばけないこんな奇想天外な男がいたなんて…)


最近バテ様とつき合いはじめたらしいリースに初めて心からの尊敬の念が湧いた。

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