第6話 猿の悪魔
退院してから数日が経った。
日常生活にも変わりは無い…と言えば嘘になるな。
あれから頻繁に刑事さん達がやって来ては事情聴取をされていた。
あの事件から悪魔は姿を見せないが、町は警戒態勢を解けない状況となっているのだ。
だからこそ、些細な情報。主に彼についての話を聞かれる事が多い。
ちなみに、彼というのは俺が変身した姿であり、明瀬さん達の目撃情報等からモンタージュされた画像を見せられて驚愕した。
蒼い鎧に角の様な突起が王冠の様に描かれ、背中に大きなマントが有るものの、その姿はまるで悪魔の様だ。
腕にあるのは小さな棘か?
こんなのあったっけ?
金の腕輪もあるが、此処は俺も見えていたから何となく忠実に描かれているのは分かるけど…。
頭ってか、顔ってこんな爬虫類見たいな仮面なのかぁぁぁぁぁぁぁ…。
何度見ても人らしくは無いかな…。
仮面ラ〇ダーとかに近いのか?
トモダチ言ってそうではあるけど…
しかし、未だにあの変化は起きていないし。
あんな激痛とかに襲われるなら変身したくないなぁ。
それこそ仕事にならんし。
俺の仕事は『日向園』という施設の管理事務なのだが、幼い子が多い為、結構体力使うんだよ。
施設の点検や補修とか、子供達の相手とかも主にやっているからあんまり長く入院とかしていられない。
休日は警察との話とかで潰れてしまってるし、今日みたいに早目に上がれた日は気分転換にゲームでも見に行こうかな。
ふとスマホを取り出してニュース一覧を見る。
意外と習慣付いてしまい、手軽にニュースを見れる事もあって重宝している機能だ。
ん…?
緊急速報?
『現在、イオンモール石巻蛇田店にて正体不明の怪物が人を襲撃中。警察の指示に従い避難と地域封鎖を行います。』
「――――くそっ!!」
異常に胸がざわつく。
無意識に車では無く、バイクの鍵を手に持ち家を飛び出す。
バイクに跨り鍵を回しヘルメットを素早く装着して一種だけ我に返った。
俺が行って何になる――?
あの力がまた使えるとも限らないし、下手に向かって警察の足手纏いになれば本末転倒。
しかし、それでもこの気持ちを抑える事は出来るハズが無い。
俺はアクセルを回し、ペダルを半場怒り混じりに蹴りバイクを走らす。
家から蛇田まで15分も掛からないで着く距離だ。
バイクを飛ばして数分で着いたのは止まっている車に対して、バイクですり抜けて来たからである。
イオンモールの付近にはパトカーが押し寄せられていて、やじ馬が邪魔をするん形になっていた事に驚愕した。
知らないから仕方が無いとは言え、怪物が暴れているのにスマホで必死に録画しようとしたり。
警察を生放送で晒して煽っている奴まで居るぞ。
ソイツ等を見ると、微かに黒い靄の様なモノが出ている気がする…。
気の性だと思いたいな今のは。
そんな事を考えていると、大きな窓ガラスの割れる音と共に怪物が二階付近から飛び出して現れる。
「キキッ!! うめぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「さ、猿ぅ?!」
「デカい猿だ!!デカい猿の怪物だ!!」
なんだあの怪物?!
前に見た悪魔とは違い、今回のはヤケに野性味溢れているっつーか。
何処からどうみても猿だよな?
「キッキッキッ…此処はマイナスエネルギーが多いなァ」
ニチャニチャと口を下品に鳴らし、猿型の悪魔は何かを食べる動作を繰り返していた。
「アイツ、人から何か吸い取ってんのか?!」
よく見ると、先程から人混みに現れていた黒い靄がアイツの口に吸いこまれて消えて行っていた。
もしかして、コイツがマイナスエネルギー?
悪魔は人間の負の感情が作り出した怪物。
その為、人を陥れ不幸にさせるのが大好きであると本に書かれていた。
俺の謎の知識にも似た事があったし、これは本当にそのマイナスのエネルギーを喰っていると見て間違いは無いだろう。
それに伴い、心なしかあの猿の身体も大きくなっている様な気もするけど…。
「キキッ、そうだったそうだった。
おい、貴様等人間にゲームを提案しようと思っていたんだ」
「ゲームだと?」
一人の若い警官が盾を構えて伺う。
猿は嬉しそうにニヤつくと、イオンモールの屋上を指さす。
「これから夕刻が過ぎ、深淵が覗くまでの間。
貴様等の誰かが屋上までこれたら人質は解放してやる」
「何だと?」
「ただしィ、その途中で誰か1人死ぬ度に…人質を屋上から突き落とす。
あぁ、助けるのは無しな? それが発覚した場合、人質はその場で処刑する!!」
「誰がそんなゲーム――!!」
「待ちなさいッッッ!!!」
警官が顔真っ赤にして食い下がると、今し方到着たパトカーから貫禄のある強面の警官が現れた。
彼は若い警官を宥めると、軽く睨み付けて猿へ告げる。
「それが本当であるなら、俺達はソレを呑むしかない」
「ですが!?」
「キキッ。何だ、話の分かる利口な人間も居たか」
ダンッ!!と地面を蹴り上げ猿は跳躍し高く飛ぶ。
「横の通路は塞いである!! 中の入口だけは開けといてやるからそこから来い!!」
壁を蹴り上げ上った猿は奥へと消えて行った。
他の警察官も混乱していたが、取り敢えず言われた通り警戒しながら入口へと向かって行く。