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シーカイザー ヤマト  作者: 石巻 瞬太郎
目覚め編
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第16話 死神宣戦


勇人は既にあの姿に変身していた。

路地裏で1度変身してしまえば、姿を見られる心配が無い為である。


ビルへとから建物の屋根を器用に飛び越え、辺りを散策。

途端に向かい側のビルへと何かが吹き飛ばされ、衝突した音が鳴り響く。


勇人はいち早くそこへと向かう。

被害を極力出したくない。そうの思いが今、勇人を駆り立てていた。


「これは───!」


半壊したビルの中から現れた死神。

あんなに激しい衝突があったのにも関わらず無傷。

ボロボロになった羽織がより一層不気味さを醸し出していた。


(アレも悪魔? 見た目は死神みたいだけど…)


「あ…づぅ……」


瓦礫の中から呻き声が聞こえ、そこをよく見ると何人かが怪我をして動けなくなってしまっていた。


「危ない───!!」



「───魂を頂く」


勇人の叫びは虚しく。

死神が手を翳し一瞥すると、怪我人は小さく呻き声を上げてから動かなくなってしまい…


バタリと地面にうつ伏す状態になる。


「くっそォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッッ!!」


「───ぬぅ?」


ガキィィィィンッ!!!と金属同士のぶつかり合った音が響く。

殴り掛かった勇人の拳と死神の間に鎌が現れ、攻撃を阻止したのだ。


「───刃こぼれか。 貴様、何者だ?」


「お前こそ何者だ! そして、その人達に何をした!?」


怒りと怒号。

頭に血が上ってしまっているせいか、捲し立てる様に問い質す。

しかし死神はそんな事すら知らぬ顔をし、新たに避難をしている人達に手を翳して何かを吸い取る。


目の前で次々と倒れる人達を見て、勇人は更に怒りに溺れて行く。


「早くシュピーレンを探さねば、奴も力は本調子では無いらしいからな。殺すのならば今しかあるまい」


ぶつぶつと独り言を言う死神の背後に、大きな衝撃が走った。


「───?!」


何が起こったのか分からずに背に手を伸ばす。

獲物は何も無く、微かに濡れた手を見て不思議そうに首を傾げる。


「───水か?」


「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」


辺りを見渡すと、水の塊が周りを包囲する形で浮かんでいた。

そしてその水は勇人の動きに合わせ───死神へと一斉に降り注ぐ。


───しかし、複数現れた鎌が死神を囲う様に展開し、凄まじい回転をして水を次々と弾く。


「──ふむ、少しばかり見誤ったか」


「───っ?!」


水の弾丸を全て薙ぎ払い、死神はいつの間にか勇人の背後へと回っていた。


「愚かな人間よ。先ずは貴様の魂を頂く───!!」


反応が遅れたせいで、死神の伸びた手を回避出来なかった。

胸元に手を当てられ、黒の魔力がうねりを上げ駆け巡る。


バチッ!!!しかし、その魔力がソフトボールより少し大きく膨らんだ刹那、水色の閃光が走り死神の魔力を描き消す。

何が起こったのか分からなかったが、此処ぞとばかりに勇人は死神のローブを掴み──


「ゴブッ!!」


引き寄せた反動を利用した膝蹴りを腹部に浴びせる。

ゴッッッッ!!!!

更に怯んだ所へ水の魔力を帯びた拳を顔面に叩き付け吹き飛ばず。


「───ガハッ、成程…貴様…ただの人間では無いな?」


髑髏の仮面から溢れる血。

流血した血は黒く人間のモノでは無い。


「───神め、我の後釜を創り出したか。

否、貴様は元は人間か? (もと)となる生命力は人間であり、力は『神代(かみしろ)』と変わらぬか」


「俺は人間だ。これからも、これから先も。それは変わらない!」


「フッフッフッ…無理だな。所詮、貴様も我と同じ道化(どうけ)よ。

神の駒となり最後は朽ち果てる運命」


指で勇人を指しながら死神は眼光を光らせ不敵に笑う。



「動くな!!」



唐突な声に2人は声の主へと振り返る。

大きなバイクのブレーキ音が鳴り、白い大型バイクから自分と似た鎧を身に纏う人物が現れ、勇人は一瞬息を飲む。


「は───君は、一体何を?」


そのバイクの横へ着地した天馬が勇人の名前を言い掛けたが、彼の事を考えてか。濁した言い方で知り合いを装う。



天馬さんは知っているけど、もう1人は誰だ?

あの姿と良い…普通の人では無いよな?


「───ほぉ、これは上質そうな魂が来たな」


「なっ───!?」


天馬の後ろへ回った死神は、ケタケタと笑いながら鎌を振り上げ襲い掛かる。


「──死への絶望はスパイスとなる!!」


「させるか!」


アーマーを身に纏っている明瀬は素早く腰に装着していた銃を取り出し───


バンッ!!と死神へ容赦無く発砲する。

しかし死神はそれを霧状になって回避。

先程と同様に黒い魔力が天馬を包み込み、大きな球体となった魔力に天馬の魔力が吸われてゆく。


「『擬似三叉槍(トライデント)』!」


一閃の光が走る。

魔力の球が勇人の投げた三叉槍によって、見事に粉々に砕け散ったのだ。


「───ぬぅ?!」


(我の『魂喰い(イーター)』を砕いただと!?)


続いて二撃目。

もう1本の三叉槍を構え、天馬の横を掻い潜る様にして放たれた。


「天馬さん!」


倒れて来た天馬を支え、勇人は一旦下がる。


大分弱っている感じではあるが、意識は有るらしい。

安堵して死神を見ると、今度はもう1人の鎧を来た人に襲われていた。

見た感じはこちら側の味方と捉えても大丈夫だろう。


「────っ?! 小賢しい」


放たれた銃弾を回避し切れなくなって来たのか、死神は1度消えて離れた位置にまた現れた。



「───『断罪の刻印(コンドネイション)』『死別鎌(サクリア)』『闇の焱(ブレイア)』『拡斬(ショット)』」


4つの詠唱。

初めに黒い魔力が重なり、1つの硝子の様な刻印を作り出し。

次に黒い魔力が集まり木の柄の鎌を生成した。


そして鎌は黒い炎を纏い、次の一振で拡散させ周囲へ無差別に攻撃してゆく。


逃げ遅れていた人々や建物内にまで炎が広がり、次々と人々を喰い物の様に飲み込んでゆく。


「くそっ、なんだこれは!?」


「し…べつ…魔法だ…」


「天馬さん──!!」


明瀬と勇人は起き上がり掛けた天馬へ視線を向ける。

少し回復したのか、顔色は先程より良くなっているがそれでも青ざめてはいる。

2人は困惑しながらも、話し掛ける彼に耳を傾け静観し待つ。


「禁忌魔法として…過去に教えられた。『死別』の魔法はとても強力であり、確実に致命傷を与えに来ると云われている程の魔法。

しかし、代償も大きく…自らの魂を喰われるとも…くっ!!」


「「天馬さん!!」」


「此処は一旦引くんだ。君達の力じゃ…まだ…っ!」


必死の力で起き上がった天馬は、勇人と明瀬を見て眉間に(しわ)を寄せて警告する。


「すみません天馬さん。 明瀬さん、この人を他の人と一緒に避難させて下さい」


「えっ───君はどうする気だ?!」


質問を投げ掛ける彼に天馬を託し、勇人は燃え上がる黒炎を見て首を横に振り決意する。


「俺は海王(シーカイザー)です。炎に対しても水は有利になるはず。

俺の力なら少しは時間を稼ぐくらいにはなりますよ」


「シー…カイザー?」


「待つんだ──ぐっ!?」


「俺は──悪魔を滅する者であり、人を護る者です」


そう言って勇人は駆け出す。

腕を振り上げ黒炎を掻い潜り、死神を目指して一直線に走り抜ける。


「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!!!」


その姿を見て、明瀬は自ら覚悟を決めた様に天馬を抱えてバイクの後ろに乗せる。


「お、おい、明瀬くん?!」


「1度離脱します。今通信があって、自衛隊がこちらに向かって来てますから。

僕も直ぐに戻って現場で動きます」


「───わかった。」


バイクを走らせ、明瀬は1度山へと向かう事に。

そこへなら和道の本部である寺もあり、回復に勤しむ事が出来るだろうと考えた結果だ。


「そういえば、どうして彼は僕の名前を?」


「そ、それは…私が呼んだりしていたからでは?」


意外と記憶力がいい事に天馬はドキッとしてしまう。

言ってしまおうかとも思ったが、それは彼の意思で決める事だろう。

今は変に身元がバレない様にして置く方が良いと考えた結果、濁らせた返事になってしまったのは致し方ない。

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