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シーカイザー ヤマト  作者: 石巻 瞬太郎
目覚め編
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第9話 身体への変化 1


久々に夢を見た。

震災の時の夢。壊れた町に1人で立ち尽くす自分。


どうして自分は何にも出来ないのだろうか。

どうして人はこんなにも無力なのだろうか。


そんな事を考えて居ると、後ろから騒ぎ立てる声が響く。


「神は我々を見捨てない!」


「この津波は神の裁きだ!! 神を信じないお前らは罪だ!だから神は罰を与えた!!」


何だそれ?

それであんなに大勢の人が死んだのか?


何人かのプラカードを持った大人が騒ぎ、拡声器を使って訴え掛けている。


「当然の報いだ! 分かったのなら神を崇めろ!!」


何が神だ。

居るなら助けろよ。

何で人を見殺しにしてんだ。


人を見捨てる神が信じたら救う?

とんだ因果応報だ。

罪の無い人も沢山死んだんだぞ。


それで神を信じろ?

ふざけるな。

神が本当に居るのなら──



「俺が神を殺してやる」


…最悪な目覚め方だ。

アレは高校生の時の思い出だ。


すっかり忘れていたのに、何故今頃になって思い出したんだろうか。


夏祭りに宗教団体の人が騒いで、その時に思ったのは事実だが。

正直、子供ながらに何かにぶつけたかったのだろう。


自分の不甲斐なさや無力差による憤りを。


「見殺しにしたのは俺だろう」


ポツリと普段から隠していた気持ちが漏れた。



「家族を返して!!」



今でも鮮明に思い出せる。

彼女が必死になって絞り出した気持ち。

そして俺に対する答え。


泣きながら叫んだ彼女のアレは本心だった。

忘れてはいけない。忘れられるハズの無い言葉。

それは今でも重くべっとりと俺の心に染み付いている。

どんなに贖罪の言葉を並べても。俺は彼女へ罪を滅ぼせる訳では無い。

永遠と背負って行かなければいけないんだ。

この罪を罰を。


人を幸せにする事も。

自分が幸せになる事も許されない罰。


それで良い。

俺はそれ相応の事をしたのだから。


神に対しての怒りではない。

何なら神に祈りたい程、俺はちっぽけな存在なのだから。

見殺しにしたのは俺だ。神じゃない。


本当に殺されるべきは───


「俺でしかないんだ」


洗面台に立ち、鏡に映った自らに吐き気がする程。

何故俺は生きているのだろうか。

彼女を苦しめているのは自分だ。


自分が居なくなれば、彼女は幸せになれる。


だから俺はお金を貯めている。

この土地から離れる為に。死に場所を探しに旅に出るのも良い。


お金を貯めて、少しでもこの町に恩返しをしてから自分は消えるんだ。


俺は歯を磨いて顔を洗うと、いつも通りに服を着替えて車に乗る。


(そういや、アイツさっさと帰って来て来んねぇかな…)


貰ったバイク代も貯まったから返さないといけない。

やる事は沢山あるので、今は1つずつ達成させていこう。




一昨日の騒ぎの後、俺は異常な筋肉痛に襲われていた。

昨日なんか休みじゃなかったら死んでたレベルで辛かった。


まともに動ける様になって本当に良かったと心から喜ぶ。


(でも、前よりは大分楽になったよな。完全に動けなくなったりしてないし)


折れて頑丈になった?

まさか、あの負荷がそう簡単に慣れる訳が無い。


考えたくないけど、自分が更に人間から離れた存在になっているという事だろうな。


「勇人くん、悪いけんど子供達頼むねぇ」


「はーい!」


お婆さんに言われて俺は小型バスに乗り込む。

此処は日向園。身寄りの無い子供達を引き取り、面倒を見てくれる場所だ。


俺も小さい頃に此処に捨てられ、高校を出るまでは此処で世話になっていた。

震災後は改築して綺麗になったが、中身はあんまり変わった気はしない。


俺は高校を出た後、此処で働かせて貰っているのだが、何せ震災後から子供達も多く入ったので部屋が足りず。

俺は一人暮らしをしながら此処に通う事にした。


子供達は昔から知っている俺に対して親しく。

園長でもあるお婆さんにも懐いている。


中々ハードな為、職員のパートさんの入れ替わりは多いけど。

とても良い場所だ。


「どうもー!『赤龍(せきりゅう)』でーす」


中庭から手を振って1人の男性が入って来た。

ラーメン屋『赤龍』の店主、和田(わだ) 圭一(けいいち)さんだ。


「あー!ワダだー!」


「おぉっ、今日も元気だなぁ!!」


何年か前に出前で頼んでから、ここの園長が偉く気に入ってしまい、今では週2〜3回は赤龍でお昼を頼んでいる。

勿論、俺も好きなので頼んで居たら、今では社員だけの特別昼食として振る舞われたりしている。


「今日も餃子最高でした」


「おっ、ありがとう! 身体の方は大丈夫かい?」


「えぇ何とか、そう言えばそろそろ…」


──ドクンッ!!


「───っ?!」


まただ。またあの胸騒ぎが…


「どうしたんだい?」


「あ、いや…そうだ、祭りの日の出店で迷ってまして」



「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


「「!?」」


外から聞こえた叫び声に、2人は園から飛び出して駆け出す。


「こっちだ!」


「はい!」


和田は声が聞こえた方角を頼りに、裏路地から表通りに近道して抜けて行く。

勇人もそれに着いて行き、共に交差点に出た所で異様な光景を目撃する。


黒い格好の…まるで人型の悪魔の様な奴等が暴れていた。

人を掴んで引き摺って走り回ったり、走ってる車に飛び乗ったりと、様々な行動で人を襲っている。


「コイツ等…悪魔か?!」


「最近ニュースになっていた奴等か!!」


「キキッーー!」


何体かコチラに気付き、手に持っていた禍々しい剣で切り付けようと飛び掛って来た。

二人は右と左に転がり回避。その性で少し距離が出来しまい、和田は心配そうにコチラに駆け寄ろうとするが──


「くっ!」


「キキィッ!!」


隙を見せると容赦無く悪魔が迫って来る。


「和田さん! 俺は大丈夫なので、他の人を非難させましょう!」


「──っ、分かった! ハァ〜…ハイッ!!」


和田は剣を受け流し、見事に肘鉄を鳩尾に決めた。

そしてそのまま怯んだ所へ蹴りを入れる。悪魔は何体かの仲間を巻き込んで吹き飛ぶ。


(凄いな和田さん…確か武術を色々習ってたんだっけ…)


「キキ…キキーーッ!!」


「っ…ぐぉぉぉぉ!!」


意識が他に向いていたせいで、顔に1発貰ってしまう。

だが、お返しに腕を掴んで首を掴みそのまま全体重を利用して倒れ込む。


そうする事により、上半身の重量が一気に変わり悪魔も耐え切れずに一緒に体制を崩してしまうのだ。


直ぐに起き上がり、悪魔の腹部を踏み付けそのまま他の悪魔へ蹴りを与える。


「ギャヴ──ギ…」


「ギギァ!!」


上手く行かなくてイライラし始めたのか。

悪魔達は車を力を合わせて持ち上げ…それを和田の方へと放り投げた。


「和田さん避けて!!」


「えっ──」


和田が気付いて逃げようとした瞬間──


倒れていた悪魔が足を掴み阻止する。




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