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第3話「契約」

はい第3話です

このへんから段々とストーリーが始まる…のか?

とある世界の、とある場所、蓮が地獄に着いて目覚めたあたりの時間。


「…視えた」

薄暗く、人間にはなにも捉えることが出来ないような暗闇の中で、男は呟いた。

「視えた、か。いけ好かないねぇ…昔っからこうだ。」

「言いたいことがあるなら言うといい」

「別に…」

「はぁ…まぁいい、私は先に行くぞ」

彼はため息をついてそう言うと、暗闇の中を歩み出した。

「(なんかうぜぇー)」



―――

「そうそう、君がやり直すことが出来るとは言ったけど、それには私達に協力してもらう必要があるんだよ。」

「協力…?何か僕に出来ることがあるんですか?」

「まぁね…私たちからの要望はたった1つだよ。」

「分かりました。」

「一緒に世界を救ってくれないかな?」

ベルフェゴールは満面の笑みでそう言った。

「…は?」

ちょっとこの人は何を言ってるんだろう。まぁ人ではないが…

「だから、世界を救ってって言った。」

「…言ってないです」

現実を直視しきれず、蓮は思わず無駄なあがきをするが、「いやいや言ったから!」とベルフェゴールも負けじと言い張る。

「え、いや…ちょ、ちょっと待ってください。というかそもそも、なんで天使と悪魔が一緒に行動してるんですか?しかも、世界を救えって…悪魔は普通、滅ぼす側なんじゃ…」

完全に戸惑ってしまっている。

「あーそれはね…というか、もう敬語じゃなくていいよ。私そういうお堅いの嫌いだし。」

「は、はぁ…」

なんだろう。人間が天使や悪魔と会話するのにタメ口OKとは、違和感しかない。

「それじゃあ改めて聞くけど、2人はなんで一緒に行動してるの?」

「それについては僕の方から話しますね。」

そう言って、今度はラファエルが話し始める。

「まず、前提としてですか、天使と悪魔、普段では相入れない関係として語られるこれらの二つの存在ですが、私達は元々神が同種の存在として創造した概念的な存在にすぎません。

故に私達は生物というより肉体を自分で作り出せる精神体というのがただしいでしょうね。」

「は!?!?」

余計に訳が分からない。神話とかでも言われるように、悪魔は神に背く者達であり、天使とは敵対関係にあったはずである。

「そもそも主、あなた達で言うところの神はというのは、私のような天使と彼女のような悪魔を、人間を正しく導くための橋渡し役として生み出しました。」

「導く?それって神が直接するんじゃあ…」

「いえ、主ではその持つ力が強すぎるために世界への影響が大きく不安定な状態になりやすくなるため余程のことがないと御自分からは動かれません。」

「…そういうものなのか」

「はい。主御本人も、世界自体の影響の調整なども日々行っていますので、根本的に世界の特徴を変えるとなるとかなりのリスクも付きます。せっかくここまで導いて発展した世界も全てが無となってしまうかもしれませんので。

…おっと話がそれてしまいましたね。それじゃあ天使と悪魔について軽く説明しましょうか。」

「…お願いします。」

「簡単に言うと、天使と悪魔というのはその役割の違いにより区別されます。

まず天使ですが、私達は人の善意、正義感に干渉して行動を起こさせ、人の努力や親切さに影響する存在です。

次に悪魔、彼女らは、人の疲れやストレスに干渉して妥協の気持ちを生み、人を休息させて次の行動に繋げさせる。というのがそもそも私達に課された使命なのです。」

「はぁ!?なっ、えっ、そ、そうなのか?」

いや正直自分の知識の根本から覆されたのでそれはもうひどい混乱状態である。

「あはは…」

これには流石のラファエルとはいえ苦笑いをしてしまう。

「大体理解出来ましたか?」

「お、大まかには…」

確かに、それで一応天使と悪魔である2人が行動を共にしている理由は、何か目的があるから、ということで説明がつかなくもない。

「ちなみに天使が良いイメージがあって悪魔に悪いイメージがあるのは人間の解釈の問題ですね。

やっぱり人間は自ら行動できる方が強くなりますし。」

まぁ、確かに…

「はぁ…りょーかい。まだ完全に分かったわけじゃないけどだいたいOKかな。

それで?僕に世界を救えってのは?

あんまり自信はないけど…」

「実はね…私達と一緒に戦ってほしい相手がいるの。」

「たっ、戦う!?」

最高に意味が分からない。人間に天使と一緒に戦うなんて普通に考えて出来るわけないだろう。

「まぁまぁちゃんと最初から最後まで聞いてってば。」

…一体どういうことだろう。つい最近自殺した少年に、世界を救う力なんて無いはず、ましてや天使とか悪魔と一緒になんて常識的に不可能なはずなのに…

ここで、笑っていた彼女の顔が再び真剣な表情になり、語り出す。

「…私達には今、二つの敵がいるんだよね。」

「二つの敵…?(なんだろう、このあるあるだけど面白そうな展開…)」

「いや、あのねぇ〜、私はこれでも結構真面目な話を…というか君ちょっと妄想チック?」

「え!?」

「あ、人間の心くらいなら多少は読めるよ。まぁ君が少し興奮状態ってことくらいだけど。」

「…先に言って欲しかった…」

「あっはは…まぁ読めない場合もあるから…

まぁそこは置いていて、えーっとね、あーだから私達はあなたに協力して欲しいの。でないと君も私達も人間の世界に行けないし。」

「っ、…人間の、世界…か…」

確かに、自分にとっての本題はそこである。

…だけど、このまま彼女達に助けられてばかりでもいられないな…そんな考えが蓮の頭をよぎる。

「まぁ、どれもこれもまずは君の了解を得てからなんだけどね。」

「…大丈夫。やっぱりやるしかない。このまま何も出来ないのはやっぱり悔しいし2人に恩返しもしたい。そのためなら、悪魔に魂を売ったって…っ!」

ここで、蓮は突然口を閉じる、いや、自分の意志に反して勝手に閉じた。それは何か得体の知れない恐怖を感じ取ったからである。

「蓮君……無責任な事は勝手に言わない方がいいよ。」

彼女、ベルフェゴールはそう言う。今までとはまた明らかに違った、人間や天使では有り得ないような禍々しい気のようなものを纏って、多大なる重圧(プレッシャー)を放ちながら。

そう、蓮の感じ取った恐怖はこれである。

「(なんだ、この圧は…こ、これが…神話なんかで謳われる悪魔だっていうのかっ…)」

「おっと、びっくりしちゃったかな。ごめんね。だけど、悪魔や天使にとって約束っていうのはとても大事なことなんだよね。

だから魂なんて発言は軽々しく口に出してはいけないよ。」

「は、はい…」

「まぁでも、それなりに覚悟は感じられたから今回は良しとしようかな。」

この時蓮は心拍は荒れ放題で冷や汗もダラダラと溢れていた。

「さて、改めてだけどデメリットについても話さないとね」

「デメリット…?」

「当然だよ。何せ禁忌に触れるようなものだから。」

確かに、と蓮は納得する。

「…君は自分の目的を果たすために人間をやめることは出来る?」

「え…?」

人間でいられない?それはどういうことだろう。確かに蓮は死んだが、それを暗示しているわけではなさそうだ。

「ただ残念なことにここから先は君の協力の確証がないと話してはいけないんだよね。」

「…どういうこと?」

「簡単だよ。部外者に詳細は話せない。だから答えてもらうよ。

君が私達に協力するなら、話す。だからたとえ段々人間でなくなっていってもやり直したいなら、この手を取って。」

そう言って彼女は手を差し伸べてくる。蓮は一瞬ためらった。何故なら、怖いから。

それは、得体の知れない彼女達への恐怖、自分自身がこれからどうなるのかまるで分からないことへの恐怖。人間分からないことへの恐怖はとても大きい。だが…

「だからもう答えは決まってるよ。」

蓮はベルフェゴールの手を取った。

「本当にいいの?こんな簡単に決めちゃって。」

「…確かに親と仲直りしたいってのもある。他にもあっちにやり残したことがあるかもしれないし、だけど…」

「だけど?」

「さっきも言ったけど、このまま2人に何も返せないまま終わるのは嫌なんだ。」

このときの蓮の表情は、さっきのようなものとは違う真っ直ぐな目をしていた。

「うん。いい顔になったね。それじゃあ、契約に移ろうか。頼むよ、ラファ君。」

「了解です。」

ラファエルがパチンと指を鳴らすと、3人の前に魔法陣が浮かび上がった。

大きな魔法陣に小さな魔法陣が3つくっついてクルクルとゆっくり回っている。その全てに見たことのない摩訶不思議な文字や紋様が並んでいる。

「手をかざしてください。」

ラファエルに促され、3人は小さい方の魔法陣に手をかざす。

すると、小さな魔法陣はその動きを止め、中央の魔法陣が水色に輝き出す。透き通った海の水面のような、暖かい色。

(凄く、綺麗だ…)

蓮が光に見とれていると、ラファエルとベルフェゴールのかざす魔法陣から白い光の筋が伸び始めた。光は魔法陣の中央に集まり、そこから蓮のかざす魔法陣へと進み、蓮の体を包む。

そうしているうちに、ラファエルとベルフェゴールも光の粒子となって魔法陣に取り込まれ、蓮の元へと進んでいって…



その後、蓮は荒野を歩いていた。

「…まさか僕の中に入ってくるなんて。」

『おやおや、何か不服かな?』

「別に…」

結局蓮は2人との契約に成功した訳だが、2人はなんと蓮の中に入っていたのである。

否、どちらかと言えば宿る。という表現が正しいであろう。

『それにしても君の精神世界は黒いねぇ…』

「そりゃあそうでしょ。自殺した人間に綺麗な精神を期待する方が間違ってる。」

『ま、そうだね。だけどこういうストレスを解消するために私達がると考えると、不甲斐ないよ…』

「(そういうものなのか…)」

そんな会話をしつつ、彼らは目的地へと向かう。しかし───


「アハハッ!面白くなってきたね!」

「…面倒事が増えたな」

──荒野を歩く蓮を監視する2人の人物がいた。

彼らは今は特に何をするという訳では無かったが、影で蓮をしっかりと見つめていた。


この暗闇に閉ざされた世界で、物語はすでに始まっていたのである。

読んでいただきありがとうございます!

ストーリーはまだまだ長くなりそうなのでまた暇つぶしにでも見て貰えると嬉しいです。

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