表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/68

渓谷のリザードマンと白き竜神様と

『人里に行くまでに徒歩で行くのは少々時間がかかる。寄り道もするからその間に稀少な鉱物や植物は収拾していこう』


『あ、プリメーラそういうのは得意よ!』


 言うや早いが草むらに飛び込んだ耳長、白磁の肌のエルフ少女の手には人形のようなものが握られている。


「マンドラゴルァァァ!」


 ちなみに今の台詞は俺達ではなくその人形のような植物からである。マンドラゴラって鳴き声から付けられたのか。正直大根やら人参の仲間を想像していた。目の前のマンドラゴラからは呪いとか放射されている。これ野菜とか薬草っていうよりなんかもっと禍々しい何かだった。


『これとか薬の材料にすると効果すごい上がるんだよ!』


 うるさいのでマンドラゴラをデコピンで〆る。


『うん、わかった。とりあえず次はもう少し綺麗なものが良いかな?』


 収納魔法であけた亜空間に下手物コーナーを設けてマンドラゴラを放り込む。

 

 プリメーラの発見率は本人得意の弁の通りで森を抜けるまでにありとあらゆる珍草、奇草の類いが揃いそうな勢いだった。


『うーん、変なのばかりだね?』


 そう、綺麗な花とかまるで出てこなかった。世界樹生えてるし栄養とか魔力の変質とか偏りが出てこんなやつらが生えまくってるのでは?マンドラゴラはダース単位で収納されている他、植獣植物、ラ○ム樹とか、明らかに生えてたらいけない草とか、幻覚見えるキノコとかそんなのが色々取れた。

 

『辛うじて毒草の類いが見かけだけ綺麗かな?キノコ類は見た目マ○オの食べるあれだが、一口でジャイアントボアが泡吹いて倒れるような猛毒だったしな』


 普通に危ない。

 そんなこんなで色々やってるうちに世界樹直下の森は一週間もしないうちに途切れ、荒野が見える。俺はともかくプリメーラが持たないのでゆっくり目のペースでキャンプしながらの歩みだったがたまにはこういうのも悪くない気がする。問題は飯だ。プリメーラはこの世界の住人クオリティの料理しか知らなかった。魔王の孫なのに美味しいもの食べれてないとかかわいそうになってきた。夜は夜でイカゲソエルフを夢で見たとかで夜泣きするし不憫すぎる。そもそも旅の相方が俺とか、安全面以外は一切保証しかねるしな。早いところ魔王のジジイ達と住みやすい場所を探してやろう。


 森の終わる辺りは少し高台になっているというか、噂のクレーターの原因が急降下する際に掠めたようで、森のはじっこから荒野まで縦に巨大な渓谷が発生していた。我ながら割とひどい環境破壊をしたようだ。

 そこで俺はとんでもない事実を目にした。


『おお!渓谷にリザードマンが住んでいる!?』


『え?あの人達のこと?』


 ドラゴントゥースウォリアーの肩に座っていたプリメーラは、その場で立ち上がって遠視の魔法で視力をあげて確認する。


『なんか、リザードっていうか、ワニ男?』


 言われてみればとかげというよりワニっぽい。ゴツゴツ具合が。


 エルフが魔族の1種だったり、マンドラゴラが魔物でなく、野菜寄りの植物らしいこととか、この世界には何か地味にちょっと違う意外性がある。あいつらもリザードマンと見せかけたワニ型亜人とかいう落ちが読めてきた。


『百聞は一見にしかず、とりあえず見に行ってみようぜ?』


『それもそうだね!いこいこ』



 近づいて話かけたところ彼等は由緒正しいリザードマンだった。チクショウ!!

 この集落の長のクロードと言う大柄なリザードマンが歓迎してくれた。外から来訪者が来ることはほとんどないのだとか。ある意味人間界からしたら渓谷の最深部とか思いっきり隠れ里も良いところだし当然か。俺とプリメーラは森で取れた珍重される植物や鉱石を土産として差し出すと一気に仲良くなることに成功した。


『二人は移住先を探しているのか。この渓谷は遥か大昔、我らの祖先が魔物に苦しめられていた時代に、白き竜神様が恵んでくださった有難い土地なのだ』



『へー、そうなんだー』

 

 素直に話を聞くプリメーラ。俺はこのとき初めて知った。俺の預かり知らぬところで崇拝されているむず痒さを。ケツから背筋にかけてゾワゾワする。やめてくれ、なんか辛い!!


『その、住みやすいのか?だいぶでかい渓谷になってるが外部との行き来に不便は?』


 囲炉裏で焼いてくれた川魚を俺とプリメーラにくれながらクロードは答える。見た感じカツオくらいのサイズででかいが、食った感じは鮎の塩焼きっぽい。ほくほくして、香ばしい臭いと適度な塩気が美味しい。リザードマンの食文化は案外日本人とは相性が良いのかもしれない。


『うまいか客人、その魚も大いなる恵みの一つよ。この渓谷は我らの体には最適な環境だ。大昔に暴れていたという大地の牛や、古の大トカゲ、あるいは我らの祖とも言われる凶悪なる破滅の大顎等の数々の危険を全て取り除いてくれた白き竜神様には感謝してもしたりぬほどだ。しかし君ら二人が移住してくるぐらいなら問題ないが、一族でとなると、やや手狭になるかもしれない』


 クロードが言うには広いことは広いが住める場所は見た目より少ないとか。まあ確かに引っ越したは良いけど朝起きたら水没してましたとか冗談ではすまない。


『見たところ二人は魔族の若い個体のようだが新婚か?繁殖地が欲しいというなら少し移動するが良い洞窟を教えるが・・・・・・』


『ちが!?そんなんじゃないよ!?』


 顔を真っ赤にしたプリメーラが塩焼き魚をブンブンしながら必死に弁解しているがクロードはマイペースだ。まあ気が向いたら声をかけてくれと言う。プリメーラは意外な話に混乱しているし、ここは頼れる保護者として助け船を出してやろう。


『ああ、彼女は確かに魔族だが俺は魔族ではないから、そもそも子供ができるかどうかもわからない』


 言外に種族違うからそういうことはないと伝えたつもりだった。しかし俺はクロードという漢を見くびっていた。


『そうであったか、すまない。洗練された高い魔力を感じたが故にてっきり魔族の御仁だとばかり思っていた。だが、繁殖できるかどうかわからないというなら尚更試してみた方が良いのではなかろうか?』

 

 クロード侮りがたし!!試してみたほうが良いのではなかろうか?とか言われたらまるでそれが正しいような気がしてしまうではないか。チラと、横をみれば半泣きでプリメーラがあうあう言っている。

 なんかいっそ笑えてきたがそこで外から他のリザードマンが駆け込んできて状況が一変した。


『長、また死人が出た!!』

 

『む、まさか奴の仕業か?』


『ああ、滝の洞窟から出てきた』



 切迫した状況ではあるようだが、何が出現したのか?


『クロード、食事の礼もしたい。俺もプリメーラも戦える故に協力できると思うが事情を話してみないか?』


『有難い申し出だ。しかし相手は巨大な蠍なのだかつてリザードマンの戦士達が必死の包囲戦で滝に沈めたのだが、狡猾な奴は生きていたのだ。それでも洞窟に封印していたのだが、近年ほころびから出てくるようになってな』


 巨大な蠍、そういえば大昔にこの辺ででかいのを倒したような?もともと岩砂漠みたいなところだったし蠍はその辺にいた可能性も高い。たくましいやつだ。


『ガイの言うとおりよ、プリメーラも協力するから蠍退治しましょう!』


 こうして俺達は蠍退治をすることになったのだった。


 


 

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ