白竜のトラウマ
短いです。
『じゃあ、ワシらはここら辺でエルフしとるからのう』
そういって世界樹直下のニーズヘッグの縄張りで魔王デストルドーはエルフの長老のふりをすることにしたようだ。
『なあ、ニーズヘッグ?エルフってなんなの?魔王がエルフとか意味わかんねえんだけど?』
俺が目の前の黒い地竜に素朴な疑問を告げると奴は恐ろしいことを言い出した。
『長老については欺瞞、かな?そもそもエルフという種族を俺は知らん。デストルドー様は魔族の王だ。その子供達もまた魔族だ。耳がとがっていて魔力の影響で皮膚の色が替わる生き物だと認識している』
『ふーん。てか、お前なんでジジイには敬語なの?』
俺の素朴な疑問は続く。こいつほど好戦的な奴もイカゲソやら邪神(笑)ぐらいしかいないと思うのだが、なぜこんなに大人しいのか!?
『元来俺はこういう性格なんだよ!お前が突っかかってくるからいつも闘っていたんだ!!』
バカな、こいつより俺の方がチンピラだというのか!?
『そうじゃのう、白竜は誰に対しても雑だし、我が道を行くタイプじゃから喧嘩は絶えず起こしそうじゃな』
『あっ、プリメーラもそれわかるかも?』
なんだこの1対3のフルボッコスタイルは!?人間だった頃に預けられた塾で手の空いた講師三人がかりで進路に駄目だしされた時を思い出してしまった。
遠き日の記憶だが。何千、何万年たっても囲んで叩かれるのは辛いと思い出せてしまう。これがトラウマか!?
『まあ、こやつはこやつなりに良いところもあるからのう、悪いところはどうしようもないが』
『クソ、覚えておけよ!今に最高の隠れ里を見つけて吠え面かかせてやるからな!』
『ガイ頼もしい!よろしくね』
バカな話をしていたらプリメーラの表情も少しは明るくなった。さて、ここから先は真面目な話だ。
『昔ボブに文明とはなんぞやと教えを残してきた。ラフィムの街が順調に発展していれば人類もきっと良い成長を遂げているはずだ。まずはラフィムを目指す』
『森を抜けてクレーターのある荒れ地を進めば大体近くに出れるのう』
あのクレーターまだあるのか。
『ふーん、クレーターねえ。きっととんでもない怪物が空から落ちてきたのよ?』
俺だ!
『ろくでもない怪物だな。ただでさえ荒れ地が広がると住みにくいと言うのになんて最低な奴なんだ』
俺だ!!
『意外と知ってるやつがやってそうじゃな』
俺だ!!!
『な、なあ?そろそろ出発するか?』
俺は居たたまれなくなったのでプリメーラより少し早く出発したのだった。