アムリタ
埒があかなかった。二人とも折れるつもりがない。
「おい、レートを上げるぜ?次からまた先行を決めるんだ。数字の大きい方の勝ちだ。勝った方はその回数連続攻撃しても良いことにしよう」
冗談じゃないぞ。だが勝てれば一気に有利になる。
「もうひとつ提案だ。痛いと言っても負けにしよう」
『悪いな、俺が二回攻撃だ!!腕に1、腹に1だ!』
回数が増えたが目が弱い。すぐにグラム・ゼナの腹に三回がきて、むしろ負けている。
「次は俺だ。ほう、これは良い。頭6か。おまけがしょぼいな。腕に1」
『う、うがあ!?』
頭にナイフを差し込まれる感覚はかなり不味い。意識がホワイトアウトしかけた。
『おおお!?この勝負俺の勝ちだ!!』
「気が早くないか?」
表示された目は自由、本数は2本。俺はおもむろにグラム・ゼナの両足小指をぶっ刺した。
「痛ってええ!?な、しまった!?」
よっしゃ!!痛点集中箇所はきくなあ。
「クソッタレめ、やってくれたぜ。鍵はくれてやる。なかなか楽しめた。また来いよ」
『もうごめんだ。今までやりあった中で一番苦しい戦いだった。で、俺の仲間にアムリタを飲ませたのは何でだ?貴重品だろ?』
未だに甘い甘いとみんなふにゃってる。
「すぐに仲間にダメージをおっかぶせると思ったからな。まさか一人も盾にしないなんて思わなかった。その子らじゃあ直ぐにぶっ壊れて廃人まったなしだ。そっちの小僧は先走って死ぬと思ったし【勇者】の奴は、まあ同じくらいやれると思ったから飲ませなかった」
さらっととんでもないこと言いやがる。
『礼は言わないぜ』
「へっ、言わせてやるよ。持ってけ化け物」
そう言うとアムリタの瓶を俺に投げて寄越した。
『何に使えと?』
噂に聞く霊薬だが、痛みを無くしこの世のものとも思えぬ素晴らしい世界を見せる甘い味の飲み物。人が飲めば命を継ぎ足せるとも聞いているが。
「わかってないね。そんだけ一人に飲ませれば、不老不死とまではいかないが、次のアムリタがとれるくらいまでは死ななくなるぞ。お前が一緒に長くいたい奴に飲ませればいい」
うん、善意じゃないな。
『大方、それを巡って仲間同士でせいぜい醜く争ってくれ。お前は結果を教えてくれればいいから。とでも言うつもりだろう?』
「ヒュー、冴えてるな。それも面白い。その時また再戦と洒落こもうぜ?」
絶対嫌だね!俺は痛いのは嫌いなんだよ!!