【流浪】の本質
「あ、いましたよ?」
猫かぶりもいいところでまるで信用ならない【勇者】アルス・ファルシオンが目的の人物を指差す。こいつの本性は相当荒れた性格で敬語なんて使わないのだが、一応仲間のようなふりをしてくれていると好意的に受け取る俺は甘いのだろうか。
守護者の間に居なかった【流浪】のグラム・ゼナを捜して早くも二時間。防壁内部は貧民街にもなっており、屋台やらホームレスのオヤジやら、明らかにかたぎじゃない男含めて様々な人が暗い壁の中で思い思いに生きていた。
「またサボってるのネー、守護者のお仕事してほしデース」
「・・・・・・はぇあ?」
おい。ダメだろ。こいつやっぱり【徘徊】じゃねえか。
『鍵を開けてほしいんだが、いやガキじゃなくてカギ!牡蠣でもねえから!?』
完全に小さいサンタクロースというか、七人の小人みたいな髭の背の小さい老人だ。妖精族とかドワーフとかなんだろうか?腰につけているショートソードがロングソードみたいに見える短足だし。酒を飲んで酔っぱらっている。
「小さいお爺ちゃん何飲んでるの?」
プリメーラはお爺ちゃん子属性だし上手く打ち解けてくれないだろうか。
「んあぉ。ういうい」
なんかコップに分けてういうい飲ませようとしているが大丈夫なのか?
「お爺ちゃんありがと、じゃあちょっとだけいただきまーす」
一口飲んだ瞬間プリメーラがふにゃふにゃになってしまう。そんな強い酒なのか?
「あ、あまーーーーい」
どうやらジュースらしい。そんなに甘いのか?
ユイもグラム・ゼナにジュースをたかっている。数秒後ユイもこしくだけである。そんなにすごいのか!?
「【流浪】のグラム・ゼナ、確かエターナルに行ったことがあったと思いますが、それアムリタじゃないのかい?」
【勇者】悪い顔してるわ。口調も地が出てきたな。
「そこの、聖騎士の娘と、そこの魔法使う娘と、そっちのむさいやつ。君らも飲みなさい」
『何が目的だ?』
「死ぬ。だから飲みなさい。【勇者】には無用」
「僕は?」
「お前は死ぬ。だからダメだ」
意味がわからない。どっちも死ぬじゃねえか。みんなふにゃってる。
『鍵はもらえないか?』
「ワシと勝負。勝てたらやる」
なんか最近似たことやったな。まあやはりそうなるか。
「勝負はもちろんギャンブルじゃ」
そういうと男は自らにかけていた幻影を解いた。幅広の鍔がおおきな羽根つき帽子をかぶり、血の色のサーコート、胸甲を身に付けている。黒いブーツと手袋には装飾がじゃらじゃら。サンタのような顔だった小人の幻影とは似ても似つかぬ整った顔立ち。鼻が高く、口ひげはwのように天に向かい立っている。
『全然別人じゃねえか!?』
「ふん、敵が多いものでね。で、やるのかやらねえのかはっきりしやがれ」
傲岸不遜、いつのまにかテーブルセットを置いたあとさっさとすわって長い足を組んでテーブルにのせてやがる。きざったらしいやつだ。
『俺がやろう。何をする?』
「ぬるいこといってんじゃねえ」
そう言った後におもむろに拳銃を取り出したグラム・ゼナは弾をこめると、己のコメカミに当てて六発引いて見せる。
「ふ、お前も死ぬかな?』
一筋縄では行かなそうな相手である。俺は更に一発引いて、弾を寸前で歯で受け止めるとふきだしてやる。
『さあ、次に何を出してくれる』