地竜と魔王とエルフの関係
ヒロイン登場です。
人外同士の会話は思念波デフォルトのため『』で台詞を送らせていただきます。
世界樹を降りた先には鬱蒼とした森が広がっていた。最初に巨人のおっさんに紹介してもらった時には根っこをかじっている不良ドラゴンがいたくらいで、荒野に一本バカでかい木が生えてるような光景だったのだが、今はその面影はない。気のいいおっさんだったがなんか戦争の古傷が原因でそう長くないうちに逝ってしまった。弱っちいくせに戦争なんかするからよくないのだ。そう言えば不良ドラゴンはどうしたのだろうか?
『おい、ヤンキーどこ行った?』
結構広範囲に思念波を拡げてみたが返事はない。
俺が結構本気でぶん殴っても耐えきるような奴だからそうそう死ぬことはないと思うのだが。
『貴方は誰?ヤンキーって竜神様のこと?』
返事は聞いたことのない思念波だった。というか、あのクソヤンキードラゴンのくせに竜神様って、あいつで竜神様なら俺なんか様×2倍は固いな。
そんな下らない思考をしているうちにひょっこり大木の陰から出てきたのは透き通るように白い肌に耳長の可愛らしい少女だったのだが・・・・・・。
『って、エルフじゃねえか!?』
『私、プリメーラ・ウル・レモーネよ。そう言う貴方は?結局誰でどこから来たの?』
エルフなんかいなかったぞ。結構初期に類人猿を発見した頃に亜人の原形らしき奴等も調べたが、類人猿に他の動物の形質が備わっているのに留まっていたのだ。俺は感慨深く、そして執拗にエルフの少女を観察する。プラチナブロンドの髪はどんな方法でキューテイクルを維持しているのか不明だが、木漏れ日でエンゼルリングが浮かんでいる。青白いほどの肌は一切のくすみがなく、毛穴も見えないほどにきめ細かい。大きな眼はエメラルドのような輝きを放っている。控えめに言っても俺が理想としていたファンタジー世界準拠の住人を初めて目撃したのだ。感慨深い。俺が見蕩れていると、少女は名前を教えろとせっついてきた。
『ああ、俺の名前はガイ・アディ・ラガ・ンだ』
『嘘、私は知ってるわ。竜神様から直接聞いたもの。それは竜神様のライバルの名前よ。貴方はそんなに強くなさそうよ』
結構ズケズケ言われるが確かにほとんどの力を上に置いてきただけにそう言われると否定しにくい。というか、腐れ縁なだけでライバルではない。
『ならば証拠だ。これで証明できる』
俺は最近生え変わって抜け落ちた牙を地面に突き立てる。本物のドラゴントゥースウォリアーだ。人間が使う魔術では少し強いスケルトンの兵士を作るに止まるが、俺の牙を触媒に俺が魔力を流すことによって竜を模した鎧を纏ったスケルトンを作り出すことができる。
『うーん、信じられないけど本当に竜神様のライバル??』
まだ半信半疑のようだった。
『あのヤンキーどこに行ったんだ?まさか死んではいないだろう?』
『失礼なこと言わないで。竜神様はお爺ちゃんに助太刀するって言ってそこの洞窟から地下世界に行っちゃったのよ』
やはりエルフは不健康そうな顔色のジジイの子孫なのか?
『そのお爺ちゃんて顔が紫でやたら魔力の高いでかいジジイか?助太刀って何してるんだ?』
『たぶんそれお爺ちゃんで合ってると思うわ。元々私のお母さん達はお爺ちゃんのお城に住んでたんだけど、いつからかでっかいニュルニュルした怪物が攻めてくるようになって危ないからって竜神様の住んでるこの森に引っ越して来たの』
なるほど、ジジイしか知らないからわからなかったがジジイの種族がどうにかなるとエルフになるのか。しかしでかいニュルニュルってまた邪神(笑)かよ。あいつら空だけでなく地下からも沸いてくるのか。
『それで、その怪物はどうなったんだ?』
『今まではお爺ちゃんが魔法でやっつけてくれてたんたけど最近怪物が増えたみたいで手が回らないからって竜神様に援軍を頼んだみたい。ねえ、貴方強いなら私を一緒に連れていってよ協力して一気にやっつけちゃった方がきっとスッキリすると思うの』
正直少し迷った。ジジイの魔法は直撃すれば俺でも痛い。ヤンキーのタフさは俺も保証できる。その戦力で苦戦するところに今の俺がこのエルフの少女を連れていくのはさすがに危険すぎると思ったのだ。
『大丈夫よ、私お爺ちゃんより魔法は得意だから』
マジか。ジジイより魔法得意とかプリメーラ天才じゃねえか。確かに禍根を残したくないし、こうなれば発展した文明を堪能する前に寄り道してから行くしかねえな。
俺とプリメーラは地下へと続く洞窟へ入っていったのだった。