表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/68

【冷血】

 俺とプリメーラとドラゴントゥースウォーリア、の人外三人と【銀狼】の人間三人はシパの村を離れ、堕天使ザリガニエル達の大暴れするラフィム冒険者ギルド本部へと向かった。シパの村に残された貴重な馬車を借りているのだが、なかなか良い馬のおかげで進みは早い。残念ながらサムはこの戦いにはついていけないので置いてきた。なお俺の作らせた魔法薬と村中に仕掛けた侵入者捕獲装置で武装したサム達ならうまく立ち回ればAランク冒険者に勝てなくても殺されない程度の自衛はできると思われる。とりあえプリメーラの不法植民計画はうやむやにしておいた。なんかこういうのって生々しい住民間の差別とか生まれそうだし。



「見えてきました!やはり襲われているのがギルド本部です!」


 サーガの馬車捌きがよいのと穀倉地帯からの年貢直送ルートの街道だけあって馬車は軽快に走り抜けるが、道のあちこちに死体が転がっているのが散見される。踏み潰すのもあれなので避けて走っているがそのうち接近できなくなりそうだ。


『ほとんど冒険者だな。まだこんなにいたのか。こいつら脳みそ腐ってたんじゃないのか?』


 オダにしても後ろにいたやつらにしてもアホの集団だったし、戦闘力高めの山賊みたいな印象しかない。騒動が収まったらきちんと組織再編をさせよう、俺のファンタジー世界だけ珍装団が冒険者ギルドやってるとか認められるか。

 

レインが暗い表情で小瓶を取り出す。中には触手のようなものが蠢いていた。


「シパの村に来たパーティの死体を調べましたが、脳の中に小さな魔物が寄生していました」


 俺が全部吹っ飛ばしたやつから回収していたのか。ていうかやばいなこれ。残りの冒険者絶望的じゃないか?


『これさ、住民もろともみんな邪神(笑)の眷族に寄生されてて、頭のおかしくなった奴等が自爆したとかそう言う落ちもあるか?』


 せっかく楽しみにしていた観光はまったく期待できないラストダンジョン化、住民全員モンスター扱いとか俺のワクワクを返せだ!

 と、すでに期待ができない俺の言葉にサーガが意外なことを言う。


「いえ、街の商業地区とギルド本部の間の中門には商業地区専属のSランク冒険者【冷血】ユイ・ムラサメが居るので、いくらギルド本部が魔物の巣窟に成り果てているとしても、全滅だけはないかと。彼女ならきっと僕たちに協力してくれます」


「【冷血】って、人助けとかしなさそうな二つ名だけど、大丈夫なのかな?」


 プリメーラの不安な声も無理もない。【黒炎】と【音切】の人格破綻ぶりを考えると更に一段ろくでもなさそうな二つ名がついている。土壇場で裏切られたりとか俺のストレスがヤバイからやめてくれと言いたいが。おまけにレインが更に話した内容はなかなか判断するには困るものだった。


「彼女の場合、【冷血】というのは誤解ね。ほとんど会話をしないのと、おまけに極度の緊張症で殺気が出ちゃうみたいなの。無表情で仕事するから感情がない殺戮人形とかすごい噂もあったけど、全然良い子だから」


 完全に殺伐としたコミュ障だな、関わると面倒くさそうな奴だ。


「彼女の使うカタナとか言う武器がまたすごい切れ味で、他の地域でも見かけない変わった服装をしているのですよ。セラフなんとかと言う装束らしいですが、おまけに彼女の国の言葉なのか、確か?コワクナイコワクナイマケルナガンバレウチナラヤレルとか呪文わやブツブツ唱えながらひたすらそのカタナを振り回すので、その異質な感じが不気味に思われたのでしょうな?」

 

 チョットマテ、その言葉俺知ってる。

 カタナって刀だろ?セラフなんとかってのがわからないが、名前からして日本人じゃないのか?凄腕の女剣士が転移してきたのか!?それ、俺の求めてる方向のファンタジーだろ。

 俺はいてもたってもいられず、前方でハサミを振り上げた巨大ザリガニにダッシュ飛び蹴りを食らわせたのだった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ