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クラフト

 うっかりミスで弟子を殺しそう、もといほぼ殺してしまった俺は、お詫びも込めて装備品を作ってやることにした。幸い素材は沢山取れた!死体から装備品剥ぎ取ることを提案したらプリメーラが嫌がったが、村人は割と前向きにやってくれた。うん、奪って速攻着替えてるあたりこいつら逞しいわ。


 さて、今回作るものは二つ、サーガの折れた剣の代わりと壊れた胸当ての代わりだ。


『プリメーラ、村でもなるべく大きい炉を借りたから、風の魔法で火の強化を頼みたい』


「任せて、他にも魔法いるなら言ってね。同時にいくつもやれるから」


『なら、冷却魔法も同時に使えるように頼むよ』


「ほいほーい」


 手際よく準備が進んだので、オダの死体から奪ったフルプレートと、俺の鱗を炉の中に入れ、魔力で操作していく。火力調整をプリメーラにお願いしたのは、造型に集中したかったためだ。魔法合金ドラゴンメタルってところか?これをインゴットにして、サーガの使っていた胸当て、肩アーマーやら関節以外の装甲を作る。動きやすく、重要な急所の防御力をあげるイメージで作り上げた鎧を一気に冷却してもらう。


『俺とプリメーラの初めての合同作品だな。これは良いものができた』


 クラフト系の作業は実はほとんどしてこなかった。人間体をとるときに装備品を作ったくらいだからうまくいくか不安はあったが、思いの外うまくいった。


「う、うん、嬉しいかも」


 プリメーラも喜んでくれたようだ。


『よし、次は剣だな。魔法剣士なんだし少し扱いが難しくても使いこなせるだろうから複雑なの作るぜ!』


「えー、操作ミスでまた死んじゃったら困るから簡単にしてあげれば?」


 ぐ、痛いところを付かれた。


『間をとってそこそこにしようか』


「そうしよう?」


 再び炉の中に俺の鱗とオダの両手剣、サーガのロングソードを入れ、ドラゴンメタルを作り出す。闘気を込めることで刃の回りに更に闘気の刃をコーティングできるようにしたり、闘気の弾丸を射出できる構造にしたほか、魔力と闘気を螺旋状に循環させるスパイラルソード形態を持たせることに成功した。


『これで、膠着状態になったとき、相手はくだけ散る宿命よ!』


「あははは、そういうの好きだよねー」


 プリメーラが笑いながら言うがこれは男のロマンよ。


『うーん?じゃあプリメーラが好きなものって何だ?』


 ドラゴンメタル少し余ったしなんか作ってやろう。俺は余ったドラゴンメタル(レンガ一個分)をプリメーラに渡して考えさせる。比重はアルミより軽く、スポンジ感覚で持てるくらい軽いが、これは鱗が重力をある程度弾いているからだったりする。その性質から、逆に上に上げるときに加速がつく。


「え?好きなもの?うーん?お爺ちゃんとか、竜神様とか・・・・・・」


 え、ジジイとかニーズヘッグの置物とか作るの嫌だな!?


『いや、そいつら以外』


「えっと・・・・・・言わなきゃ、だめ?」


 言わなきゃなに作るか決まらないだろうに。って顔が真っ赤になっている。また風邪か!?そういえばこの村ゴーストタウンになりつつあるせいですきま風とか入ってるからな、炉の前は熱かろうと思い、入り口側に居させたが、冷えたのかもしれない。


『なあ、顔赤いぞ?こっちきてみ?』


 変なところで遠慮がちだからこういうのは少し強引に良さげな位置に呼んでやるに限るな。


「そ、そんなことないよ?」


 また遠慮するし。そっと額に手を当てると・・・・・・いかん!?また急な発熱だ!?


『く、お前まさか不治の病とかにかかってないよな?安心しろ、俺がちゃんと見てやるからな』


 瞳孔の開きを確認するために顔を近づける。だいぶ潤んでいるのは辛いからだろうか、心臓の鼓動はここからでも聞こえるほどやばい、呼吸もやや粗い。そうだ、扁桃腺だ、口の中の乾き具合と、喉の腫れを確認することで様々な症状が判断できるはずだ。顎先を人差し指で上に上げ、桜色の唇を親指でそっとあけると小さな舌が顔を出す。そのまま親指を口腔内部に差し入れ、唾液の分泌状況を確認。いや、苦しいのはわかるが舌は指に絡ませるんじゃなくて外に出してくれ、扁桃腺が見えない。しばらく親指と舌の格闘が続くが、唇から細く唾液が顎に伝う。切なげな吐息に艶のようなものが含まれてきたが、悪いのは俺ではなく病だ。マンドラゴラとかで治れば良いが・・・・・・。


「師匠!僕の武器と防具を作ってくれてるって本当ですか!?」


 サーガが走り込んできてドアを開け放つ。


「サーガ、まだ安静にしてないとダメよ?貴方死にかけたんだから・・・・・・て、ごめんなさいお邪魔しました!」


 後からついてきたレインが慌ててサーガをつかんで引っ張っていく。結構力持ちなんだなと思い見ていると、プリメーラが半泣きで俺を見つめていた。俺の指と小さな顎先が唾液でぬれそぼっている。


『うあ、すげえびちゃびちゃだな、お前これ涎まみれじゃねえか・・・・・・ぶほぉあ!?』


 ドラゴンメタルを下から高速で振り抜いたプリメーラのアッパーカットが俺の顎を直撃した。良いものもってるじゃねえか。




 



  

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