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冒険者(珍装団)

 たぶんドロップアイテムを拾っちゃって一点豪華な奴がいるのはよくあることなんだろう。当然お古は格安で売られたり、後輩や弟子に渡るのだろう。それらをどうするかは本人達の自由意思だから俺がとやかく言うのは少し傲慢な気がするし、完全にこの世界の冒険者ギルドが悪い訳ではないのだろうが、現実に目の当たりにして俺はちょっとどうかと思うことがある。


 何が言いたいか伝わりにくいかもしれないが、今回の暴挙についてはそれなりの理由があったと言い訳させてほしい。


 さて、俺は今まで【銀狼】のメンバーと、Sランク冒険者2名しか見てないせいか違和感はさほどなかったのだが、今回攻めてきた冒険者集団を見てかなり痛々しい現実を目の当たりにしてしまったのだ。


 まず、明らかにお前がそれを持つのか!?と思うレベルの武器を持った男がいるのだが、上からチェックしていきたい。ヘッドギアのような頭防具はまあ良い、視界が悪いのはかなり気になるからな。騎馬突撃やそれに近いことを徒歩でする重装歩兵、端から盾の役割をする聖騎士なんかは、がっつりフルフェイスでいいのだろうが。この男の細身の両手剣なら一撃離脱が望ましいから軽い防具のチョイスは悪くはない。で、その割りにはお前がそれを着るのか!?と言わんばかりの胴鎧だ。たぶん、それこそ重装歩兵用か?少なくとも走り回るやつが着るものではない。おまけになんかぶかぶかとサイズがあっていない。更に腰回りだが、ローブ?なんか魔法使いそうな格好で、なおかつワンドではなく、ロッドを腰にさしている。たぶん魔法剣士なんだろうけど、そのチョイスはなんだ!?これが後方で守りを固めつつ魔法を撃ってくるとかなら意味はわかるが、集団の先陣を切って走り込んでくる。もう訳がわからない。

 その後に続く戦士の群れは似たり寄ったりの格好だが、あれは牛の骨か?猪の頭とか、何かしら動物の頭を被らないといけない宗教でもあるのか。武器は厚みのある剣とか斧とか、もう片方の手にも斧とか盾が主流みたいだ。両手斧で乱舞する猪頭の戦士とか、普段街で会いたくない職業筆頭候補じゃねえか?

 で、続く後衛集団がひどい。弓を構えてる奴、詠唱してる魔法使い、たぶんヒールしか使えなくて誰も怪我してないから手持ち無沙汰の僧侶の集団はもう目をつぶるとして、その他の連中だ。先頭の奴にも勝るとも劣らないちぐはぐな格好の何がしたいのか分からない奴等しかいない。

 何がひどいかってね、人に見られることを意識しない奴等が多すぎる。そしてその珍集団の中にフル装備の【黒炎】フラムベルグとか、【音切】ヘルムホルツを混ぜるとだ、まるであいつらの方がおかしく思える恐ろしさ。誤解のないように説明するが、もと日本人の感覚的にSランクのあの二人はキャラはおかしかったが格好は割りと普通のファンタジーの範囲だった。ジャックナイフは半裸だったからなんとも言えないが。

 冒険者ギルドが管理組織なのなら、服装チェックはするべきだ。というか、もう俺が説教しに行ってやる!


『お前らそこで止まれ!!』


 威圧、不動金縛りのバッドステータスを付与した竜の咆哮を浴びせて一人残らずその場で動きを止める。逃げてきた村人よ、お前は止まるな。


 俺は集団の先頭にいた変な奴を捕まえて名前と所属、ここに来た目的を尋ねる。


「俺はオダ・ヒデヤスだ。ラフィム冒険者ギルド、Aランク筆頭にして、伝説の三英雄直系のエリート冒険者よ!知ってるぞ、【銀狼】の連中がダンジョンコアを横領してこの依頼報酬未払い村に潜伏していることは!俺らは正義と、秩序のために

ここに来た!!」


『うるせえ!』


 ビンタしたら空中で高速回転しながら転がっていった。お、戦士達ナイスキャッチ!


『あー、他の諸君も大体同じでよいか?』


 俺の質問に横にいる仲間同士で顔を見合わせてしきりに頷く集団。


『よろしい、諸君も聴きたまえ!しかし秩序と言うが、諸君らの服装はどうだ!?乱れに乱れすぎだろうが!!そこのオダ!お前だ、お前!お前は前衛か?』


 回復魔法で意識を取り戻したオダの胸ぐらつかんで問い詰める。


「お、俺はオールラウンダーだ!」


 すかさずひっぱたく。先程同様にきりもみ回転で転がるオダ。


『ふざけたやつはぶっ飛ばすからな。オダ、お前その剣と鎧ひろいもんだろ!』


 方膝立ちのオダを問い詰める。半べそのオダが叫ぶ。


「聞いて驚け、これがダンジョンクリアの報酬だ!冒険者ギルドにダンジョンコアを捧げることで支給されるソードオブギルド!・・・・・・へぶ」


『その鎧は?』



「これぞ我が先祖より脈々と受け継がれしアーマーオブジャスティス!!」


 もう一度ひっぱたく。


『ヘッドギアは?どこの店で買った?』


「これは拾い物だ」


 はぁ。とため息をつきつつ俺はオダに往復ビンタを連打する。


『ダサいんだよ!!お前ら俺の異世界ファンタジー意識舐めてんのかこの野郎!!俺の関わる話に変な格好で出てくんなよバーカバーカ!!俺がお前らをコーディネートしてやるから装備を整えて出直してきやがれ!』


 ずたぼろになったオダを返すと、俺はスクロールに即席で描いた理想的な冒険者スタイルマニュアルを説明しながら預ける。



『冒険者と言う職業が立派な存在として認知されるかどうかは、お前らの心がけ次第だ!!三日待つから準備したら来い!』


 一斉にはい!と返事してお辞儀をしたあとに帰る集団。


「あははは、帰っちゃった。おっかしいー」


 プリメーラがつぼったらしく笑い転げているが、村人はひと安心、サーガも内心慌てていたそうな。レインだけは物騒な魔法の展開準備をしていたのがしっかりしているというか、危ないというか。



 三日後に、オダをリーダーにした集団がやって来た。装備のグレードがかなり上がっている他、小綺麗かつ派手になっている。更に並び方も陣形になってる上に無駄がない。自力と数で押すスタイルを選んだようだ。この陣形は先頭に一番強い奴を置いて、それを強靭に守りつつ、強い奴に敵陣を切り崩させる。


「見たか、貴様らのアドバイスは小癪だったが、このオダの力でここまでの集団としたわ!!今日こそ滅ぼしてくれる」


 オダの格好は変わっていた。フルプレートに包まれて一切の攻撃を受けきるつもりのようだ。


『サーガ、修行の成果を見せてみろ!!』


「はい、師匠!!」


 そう、見た目も珍集団だったから直したが、やはり、少しでも色々な強敵と戦わないと成長しない。さあ、俺は弟子対冒険者ギルドの集団戦を生で観戦できるぜ!

 

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