封じられた力
「ガイ様、これ、これ絶対楽して強くなれるんですよね!?」
ブラドがごちゃごちゃ言っているが、俺は俺で忙しいので放置した。ブラドには法力を拡張させて収納魔法の変種を使わせるつもりだ。まずはひたすら法力だけでメイスを浮かせる特訓。
「マンドラゴルゥアアア!!ゴルゥアア!!」
「ひいええ!!おっかねえだぁ!!おっかねえだぁ!!」
サムにはひたすらマンドラゴラを石臼で挽いてもらっている。いや、おっかないかあれ?キモいけどさ。
『サーガ、どうだ?』
「はい、師匠!なんとか生きてます!!」
サーガには圧倒的強者との実践経験の不足を懸念して、ドラゴントゥースウォーリア相手に模擬戦をさせていた。
すごい雑な話ではあるが、俺を相手にするよりドラゴントゥースウォーリアの方が邪神の眷族や、Sランク冒険者に近いのだ。効率重視でかなりのところまで育ってきている。ちなみに今日で修行三日目である。今なら【黒炎】は一人で倒せるだろう。元々、才能はあったし、俺以前にサーガを鍛えたと思えるロイドという人間はSランク冒険者の中でも上位の腕の持ち主だったようだ。
『』
「フェイントは見切りました!そこです!」
しかし解せないのはドラゴントゥースウォーリアである。うん。命令してないんだよね・・・・・・。勝手に動いて修行に付き合った上に、教えてもいないフェイントや、俺も知らない剣の奥義っぽいものをサーガに仕込んでいるのを見てしまった。こないだ試しに竜牙兵の魔法を解いたら元の俺の牙に戻るか試したら、反応なしのそのまんまだったよね。
マジでこいつなんなの。そのうち喋ると思うのは俺だけか?
『新たなレッスンだ、武器を失っても闘う方法を教えてやる!』
「はい、拳があります!」
いや、武器ないなら拳とかお前は血の気が多すぎるわ!?
『闘気だ!気を練って魔力と合わせてやれば物質化して剣を作れる。その折れたロングソードに気の刃が作れれば突然発生する見えない刃の攻撃を使えるようになるのだ!無論、丸腰でもこうだ!』
俺は両手に気の刃を形成する。問題はこれは切り札であり、通常の武器より使い勝手が悪いということか。俺なら迷わずレーヴァティンである。
「はあ!!」
サーガのすごいところは、ここだ。こいつ、いきなり気の刃を形成しやがった。そして、才能はあるけど力はない!直後にぐったりして地面に倒れた。おかしな話である。持久力がない要因としては元々のプールが少ないか、回復率が悪いかだが、回復率の話ならそもそもしばらくは使えてもおかしくない。しかし前者ならそもそも成長もしない。細胞内の気の容量ではなく、出力に問題があるのではないか?サーガには何らかの呪いがかけられている可能性がある。残念ながら俺はその手のレジストや自己再生は得意だが、他人向けの回復魔法は使えないのだ。海水が塩辛く、空の雲が不定形なように、俺という現象において回復魔法の術式は使えないのが決まりごとらしい。
「敵だああ!」
村人の誰かの叫びと共に複数の冒険者が村に侵入してきた。