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師匠と呼ばれる

 ところで俺は白竜ガイ・アディ・ラガ・ンとして、5百年前に一度ラフィムのボブに会ったわけだが、まあ、ボブにしてもその部下の司祭達にしても、特徴的な彫りの深いガイジン顔に洋ゲーNPCのような違和感を覚えたのは懐かしい。

 当時の教会は特定の遺伝子を血が濃いまま残したかったらしく、その形質があのガイジン顔だったのだと俺は予測し、新たに他所からの混血を推奨する教えを残すことと、教会の重要ポジションに寄生することで入り込んでいた深き者共を排除して現在に至るわけだが。

 案外うまく成功したというか、ボブ達の努力があったのだろうと思われる結果が得られている。

 まず、サーガとレインは大体俺が最初にわくわくしながら遭遇したかった異世界ファンタジーの住人の特徴を備えている。整った顔立ちは美男美女と言うほどではないけども良い表情ができ、そんなにくどい特徴はなくて好感が持てる。

 ブラドも若い頃はそれなりか。いい感じのオッサンになる歳の取り方をしている。対して、コンゴウことフラムベルグはがっつりアジアンな顔立ちに化けていた。本来の顔も似てるのかは不明だが。恐らくラフィムの街の教会が積極的に取り込んだ移民の中にはあの手のアジアンもいることで、この平均化が起きているのだろう。

 さて、問題はこの農村だ。生き残りのサム達農民山賊達はがっつりボブ達の人種の直系に見える。太い頬骨!割れたケツアゴ!!光の当たり方で眉骨のひさしで眼窩が落ち窪んでモアイみたいになっている!!!中央はともかく、末端の農村に関しては戒律やら教義も甘いのかもしれない。ほとんど変化してない。


 プリメーラの冒険者ギルド粉砕からの引越しという明らかな侵略戦争の話はそれだけですむ問題ではなく、隣に住んで平和に過ごしていればゆくゆくは彼らと魔族の混血が進むわけで、俺の頭の中でカオスなモンタージュがシミュレーションされる。顔が紫色で、耳がとがっていて、アゴが割れていて、頬骨ゴツゴツ、眼は落ち窪んでいるが魔力の輝きを伴う。

 いや、だめだろそれは。どうみてもゴブリンとか今の魔族より凶悪な面構えに思える。

 と言うか、無いとは思うが、何かの過ちでサムとプリメーラの間でそんな子供が生まれたとして、俺がそのかわいくない赤子を紹介されて抱き上げるとかなんか嫌すぎる。


『うーん、気が進まない。プリメーラ、やはりここは考え直さないか?土地がよくない気がするぞ?』



 実際ここの小麦まずかったしな。


『ええ、みんな幸せになれそうな名案だと思うんだけど、ダメ?』


 上目遣いに俺の様子を伺う可愛らしいエルフ少女を見て、先程の脳内シミュレーションが再度浮かぶ。いや、やはりお父さんは許さないぞ、そんな結婚!みたいな気持ちになってきた。そうだ、いっそのことこんなのはどうだろうか。


『なあ、どうせなら俺の住んでる世界樹とかどうだ?なんか途中大型の神獣が少し住んでるくらいだし総面積的には森より住める場所多いぞ?』


 あんまり上の俺の住んでるとこは外宇宙からなんか飛んでくるからおすすめはできないが、下はニーズヘッグ、中はフレースヴェルグが守っているし、セキュリティは万全だ。ジジイが日光を嫌うが、うろの洞窟もそこかしこにあるから良さげだが。


『それって、ガイと一緒に住むってこと?』


『ああ、嫌じゃなければどうだ?』


 ってなんかプリメーラの顔がみるみる真っ赤になっていく。なんだ?熱でも出したか?

 そっと前髪をかき揚げるようにしてプリメーラの額に手を当てる。熱!?一気に体温が上昇したのかやばい温度を感じる。ちょ、これ病気か!?


『嫌、じゃないけど・・・・・・それって同棲?一緒に住むってそういうことだよね?って、はぅ!何でもないから!何でもないからね!!』


 嫌、同棲の話はしてないんだが、そそくさと俺から離れて何かレインに耳打ちしている。まだ出会ってからそう時間は立っていないはずだが、仲良しなのはよいことだ。

 しかし風邪じゃないとよいが。侵略戦争はともかくとして、少し休みながら進むべきだろうか?とか俺が思索に耽っているとサーガが俺に土下座をかましてくる。なんだこいつ!?なんでいきなり土下座してんだ!? 

 呆気に取られる俺をよそに、ブラドとサムまで、土下座しやがった。


「ガイさん、貴方の力を見込んでお願いがあります!僕に、剣の修行をつけてください!!」


「私からもお願いがあります!私に楽して強くなる方法をお授けください!!」


「オラも、オラもみんなの仇討ちするなんかくだせえ!!」


 こ、これは、まさか!?男なら胸が熱くなる受けたいイベントトップ10には入ると言われる、若者に師匠と呼ばれるアレか!?しかも三人同時に弟子入りだと!?

 まあサーガは人間にしてはそこそこ見所がある若者だから鍛えれば一皮むくのは容易そうだが、ブラドは既に姿勢からして最低だな。だが俺の知識を駆使すればなんとかならなくもない。サムは前後不覚というか方向性も定まらないからまずは座学からか? 


『ふん、時間は限られているし俺の修行は厳しいぞ?それでも良いなら俺に付いてこい。あと修行中は師匠と呼んでもらうからな』

 

 意味もなく後ろを振り返り白いマントをバサッと翻す。やべえ、思ったよりこれ楽しいかもしれん。 


「はい!よろしくお願いします、師匠!!」


 3人の声がはもった。なんかろくでもない陰謀に巻き込まれてるドロドロ感は不満だったが、それもこの流れのためだとしたら仕方ない。もういっそのこと十年くらい修行させてやるか???


「大変だあああ!アイツが、アイツがまた来やがったあああ!」


 あちこち擦り傷まみれの男が村に駆け込んでくる。男の後ろには馬に股がりゆっくり歩かせる細身の冒険者が乗っている。


 すげえマイペースに来る。おせえ。師匠やらないといけないんだから早くしろよ。


「ごきげんよう。以前の報酬をもらいに来ました。利息が付いて金貨で1000枚、頂けますよね?」


 サムがそれを聞いて激昂する。


「ふ、ふざけんなよお前!オラ達の村をこんなにしちまって、みんな殺しやがって、ちくしょう!それに報酬は金貨100枚分の小麦で契約したんだ、オラ達をなんだと思ってやがる!!」


 あー、ここまでひでえの?時代劇の悪代官やVシネマのヤクザ、世紀末の暴走族の親戚だな、冒険者ギルド。


「じゃあ皆死んでもらいますね。冒険者ギルドの支払いを渋った者は見せしめに殺してこいと言われてますので」


 藍色の長髪を風に流しながら、男は優雅に馬から下りると、無造作にサムに向かって刀に似た片手剣を抜き打ちで放つ。しかしそこに割って入ったのはサーガだった。

 ロングソードでかちあげて、男の超音速の一撃を防ぐ。これは面白い。


「貴方はSランク冒険者【音切】のヘルムホルツさんでしたね、冒険者として以前に一人の人間として、こんな非道は見逃せない!」


「おやおや、そう言う君は【銀狼】の、リーダーのサーガ君ですね?あの男、本当の【銀狼】がいないのにその看板は重そうですよね?ギルド幹部会でもサーガ君がいたら楽にしてあげてくださいって言われてるんで、もう死んでいいですよ」


 ヘルムホルツと呼ばれるSランク冒険者は【黒炎】フラムベルグより強い。圧倒的な闘気を漏らさず、一点集中で戦うタイプのようだ。派手さはないが、確実に厄介な戦い方をしてくる。


『サーガ、実戦形式で修行をつけてやる。レッスン1だ!相手の嫌がることをやれ!とことん受けきれ!!そして煽れ!!』


「はい、師匠!!」


 ヘルムホルツの嫌がること、それは受けに徹されることで間違いないだろう。絶対的な自信を持つ攻撃を延々弾かれるのはストレスが半端ない。鎧を着けない機動力重視の服装を見てもその高慢なプライドが見てとれる。


「ははは?いつまでも受けられると思ってますか?」


「思ったより遅いんですね?【音切】て」


 実際サーガは命懸けで何かを掴もうとひたすらに防戦に徹しているだけで、そこには埋めがたい差が存在する。でも今はそれでいい。攻撃は次のレッスンからだ!!


 

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