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引っ越し感覚の侵略戦争

 なんというか、これじゃない感がすごい。

 プリメーラの隠れ里を探すのは別に良い。昔魔王のジジイの地下領土を作ってやった時もなんとなくだったし。知り合いの家のリフォームやら引越しみたいなもんだと思えばありだろう。しかし俺の今回の目的は、かつて撒いた種の収穫であり、観光が目的だったというのにこんな泥沼の仁義なき戦いに参加する可能性は、けし粒ほども考えていなかった。

 目の前のシパ村の村長の息子、サムの語った内容は俺ですら戦慄を覚えるものであった。


「最初は農耕馬が食い散らかされているのが見つかったんだ。ゴブリンなんか、すっかり見かけなくなっていたんだ、みんな何もわかんねえのに調子に乗って、村の力自慢でこらしめてやるって出ていったんだよ!!そしたら行った奴等全員食われちまったんだ、そいで、そいでよ、慌てて冒険者ギルドに依頼して、人食いの怪物倒してくれって頼んだらよ、貴族様にも滅多にいないような綺麗なにいちゃんがきてあっという間にやっつけてくれたんだわ。でもそのあとさ、代金は年貢の一割ってギルドに言ってあったし、それで良いって言ってくれたのに、金以外認めないって、その場にいた女子供と、抵抗した男みんな斬りやがったんだ!!」


 サーガが更に失墜した冒険者ギルドの裏の顔に苦しそうな表情を浮かべるが、ギルドのSランク冒険者相手に半殺しにされた後では勢いのある台詞も出ないようだ。しかし冒険者ギルドはマジでやばい組織だな。ろくにお使いもできない犯罪者がエリートとか、陰謀体質の上司まみれとかブラック企業過ぎて鳥肌たつぞ。


「恥ずかしいけど怖くて腰抜けて何も動けなかったんだ。そいで、そのあとになってから。ギルドの奴を見かけたら一人でも道ずれに死んでやるって決めていたのに、それすら出来ねえなんて」


 まあ、平和な農民が普通そんな変われるはずないな。山賊擬きになった方でもまだ頑張れた方だろう。むしろ冒険者ギルドの奴等がリアル山賊そのものだしな。

 

「ねえ、こんなに広いのに、村の人はもうこれしかいないの?」


 今まで静観していたプリメーラの自信満々の眼差しを見て、すさまじい悪寒が俺の背を駆け抜ける。おい、さすがにそれはやばいぞプリメーラ、自重しろ。俺は視線で訴えるが目の前の金髪緑眼耳長少女は気づかない。


「ああ、国は何もしてくれなかったし、冒険者ギルドにずたぼろにされちまったからな。生き残りは100人もいねえよ、もうこんなんじゃ人食いがいなくても滅ぶのは時間の問題だ」


 悲惨な話をしてるサムの境遇を聞いて同情するどころか、私に良い考えがある!とかろくでもないパワープレイを提案する司令官みたいな態度が恐ろしい。


「ねえ、私達が冒険者ギルドを潰してあげるわ?そのかわり、空いてるところに100人くらい引越ししちゃだめかな?」


 わー、わー、言っちゃったよこの娘は。サーガ達のすがるような視線といい、村人達のこの鴨絶対逃がさねえという血走った視線。これで俺らは溺れる物が掴んだ藁のごとしだ。握力の限界まで離してくれなくなっちゃうぞ。

 

『プリメーラよ、武力行使による領土獲得を何と言うか知ってるか?』


 かわいらしく小首を傾げて的はずれな答えを言う。 


「引越し?」


『侵略戦争というのだ!!』


 観光が戦争になっちまった。どうなってやがるんだ。


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