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ダンジョンコア

 地下へと続く石段をどこまでも降りていく。レインが杖に灯した魔力のランタンが辺りを照らしているため暗いはずの周囲もさほど問題ない。もっとも俺は暗闇でも視力はあるのではなから困りはしないが。

 しばらく歩くとドラゴントゥースウォーリアの肩に座るプリメーラがすすり泣く音が聞こえる。


『ニンジャの人が死んじゃったのってプリメーラのせいだよね?』


 様子を伺うと、深く傷ついた表情で金髪のエルフが俺に思念波を送ってくる。


『いや、俺もあのとき馬車が突っ込んできたら斬るつもりだったし、そもそも自爆したのはあの男の意思だから関係ないぞ』


 実際馬鹿げている。そんな下らないことで人の死を背負っていたらストレスで鱗ハゲ散らかりそうじゃないか。



『うう、ごめんなさい。責められた方がまだいいかも』


 フォローしたのは事実だが、バカの行動を気にやむ必要もない。本当にふざけてやがる。


「コンゴウ、君の分まで僕は戦うよ。絶対に君の繋いでくれた希望を無駄にはしない!」


 プリメーラのすすり泣きが次のバカを呼んでしまったようだ。サーガのテンションは上げ上げらしい。いや、マジでやめてくんないかなこういうの。うちのプリメーラは超素直だから本気にしちゃうからね?



「気にしちゃダメよ、バカなコンゴウのせいだから、ね?」


 レインはプリメーラに気を使ってくれているようだが、サーガとブラドは勝手にヒロイックな展開に酔っている。いや、なんであれで酔えるの君ら。


『あー、そろそろ目的地じゃないか?』


 流れをぶち切る。大体1000段といったところだろうか。石段を降りてきただけだが、まとわりつくような魔力が気持ち悪い。


「魔力計がこの先の空間から膨大な魔力反応をとらえてるわ。ほぼダンジョンコアで間違いないわ、守護者に気を付けて」


『守護者とは?』


「ん、ダンジョンコアの守護者ですよ、そいつを倒せればダンジョンコアは丸腰になり、全ての能力は封印されます。実際に見たことは数回しかないので全てのダンジョンが同じかはわかりません」


 最後の石段を降りるとそこは円形のホールになっており、その中央には骨の山のような物がこんもりと積もっていた。


「コアはあの中みたいだけど、守護者はいないのかしら?」


「ほほう、これはついてますな」


 レインの警戒をよそにブラドが不用意に骨の山に接近したそのとき、全ての骨が鳴動を始め巨大な骸骨剣士が3体組上がる。


「なんと、冒涜的な!?くらえ天誅!!」


 なんと狼狽えるどころかブラドは腰のメイス。骸骨剣士の膝に叩き込み、一撃で砕けないのを即座に確認すると、油断なく竪を構えながら無数の連打を加えていく。


「ブラド!僕も加勢しますよ!」


 サーガはロングソードに魔法のエンチャントを加えると両手持ちに構えて果敢に切り込む。1体の骸骨に二人がかりになってしまうが、やられてしまうよりまだよい。

 一方でレインは結界石を用いて、1体を足止めしていた。更に稼いだ時間で何重にも弱体魔法をかけている。魔導具を使いこなす彼女ならではの機転のきかせかただろう。


 レインの押さえつけてるガイコツの前に立ちはだかったのはプリメーラを下ろしたドラゴントゥースウォーリアだ。さすがに身長は3mを越える巨大な骸骨剣士に劣るが、竜の鎧に包まれたその体格は巨大な骸骨剣士と並んでも決して小さいと思わせることはない。その強靭な体躯で振り上げられた拳は骸骨剣士をボキボキへし砕いていく。

 

 そして俺はプリメーラと二人でダンジョンコアらしき宝玉を抱えた王冠つきの骸骨を相手に苦戦していた。


『ダメだ、プリメーラ、こいつはお前では危ない!』


『そんなことないよ、プリメーラだって戦えるから、お願い信じて!』


 必死の声に俺の心は揺れる。だが俺は心を鬼にしてプリメーラを退かせた。


『それでも、ダメなんだ。許せプリメーラ!』


 俺は言うや早いが、レーヴァティンの光の刃でダンジョンコア以外の全ての骨を切り刻んだ。

 うん、プリメーラが攻撃していたら、確実にダンジョンコアをつぶしていた。だってこいつの用意していた魔法は、魔王やってるジジイのオリジナルで、小型の魔力爆弾を相手の体内に空間転移させて粉砕する凶悪呪文だったのだ。百パーセント木っ端微塵になるじゃねえか。


『ガイの意地悪・・・・・・』


 バカニンジャの自爆の件でへこんでいたし、名誉挽回したかったのはわかるが今回はそれとこれとはまた別物だ。俺が王冠骸骨を倒すと他の2体も崩れ落ちた。回収したダンジョンコアをレインに差し出す。ドッジボールくらいのサイズの真珠に見えるな。


『これがそうか?』


「すごい、ダンジョンコアを生け捕りなんて!?」


 横からサーガが驚嘆の声を上げる。


「ええ、今調べるわね・・・・・・これは、そうだったの!?」


 何やら一人で驚き始めるレイン。


『で、どうなんだ?』


 俺が急かすように尋ねると、彼女は首を横にふって、少し間を開けてから言葉を絞り出した。


「最悪ね。これが置かれたのが50年前の復興時、これを置いたのはギルド長のマルダード・アックスよ」


「バカな、ギルド長がなぜこんなものを!?」


 半信半疑とはいえ組織を信じたかったようなサーガは本気で困惑しているようだ。



『大方、ギルド長も邪神の兼族に成り代わられているのだろう。かつてもそうだった。兼族?あいつらの思考は俺にもわからん』


 階段を何者かが降りてくる。カツ、コツ、と踵を鳴らして聞きなれた声をいびつに変えて。


「よくもまあ、無傷で揃いも揃って容易く倒してくれたものでござるな。そのダンジョンコアをおとなしく渡してもらおう」 


 全身を覆う黒装束、先程までと違うのは黒い騎士の鎧に包まれていることと、ネジ曲がった角の兜をかぶっていることか。


『コンゴウ、やはり生きていたか』


 ニンジャではなく黒騎士姿のコンゴウは油断なく俺たちの背後を取った。



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