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コンゴウ最後の忍術

 広場に出て看板を読んで知ったが、この死病の街、エンゼというらしい。ここ50年の間に一気に人を集めて復興したそうで、それは大いに盛り上がったとか。冒険者ギルドこそ設置されなかったが、ラフィムの大きな商会や貴族の出資も盛んなところで裕福な街になっていたらしい。

 実際に歩いてみてその名残はよく見て取れた。


『地図を見た感じここからラフィムまでは街道も整備されているし、なかなかに賑わっていたようだが、そもそもダンジョンコアってのはこんな街中に発生するものなのか?』


 え?なんで俺がそれをしらないのかって?俺ドラゴンだよ?ダンジョンの中とか狭くて入れないからね?話くらいは聞いたことがあるが、狭いの嫌いだしそんなとこにこもってるモンスターの気持ちもわからない。


「ダンジョンコアは一種の吹きだまりに発生するものらしいです。気が澱むと自然の魔力だまりが力場を生むのだとか、レインの方がその辺はくわしいですね」


 その肝心のレインはこちらに耳を貸している余裕がないらしい。広場の地下を調べてるのだろうか?何本も細い剣のような、むしろ串か?と思われる複雑な紋様の掘られた金属の棒を地面に打ち込んでいる。そのレインを囲むように俺達は立っているのだが、ことの始まりは【銀狼】の四人が来てすぐのことだ。作業に入ろうとすると、配達の馬車を走らせる死人にひかれそうになるのだ。

ついさっきもやたらスピードをあげて馬車が突っ込んできた。一応生前の行動を惰性で繰り返してるとのことなので、まだ攻撃はしていないが俺が合流してから早くも三回目だ。いい加減生きてる人間でも邪魔なだけに次は切るつもりだ。

 どかどかと半分白骨化した二頭立ての馬車が突っ込んでくる。サーガに邪魔はさせない。


「邪魔ばっかりしないでよ、意地悪ー!」

 

 俺が切るより早くプリメーラが風の弾丸をマシンガンの如く馬車に浴びせていた。

 一瞬で腐肉と金属のスクラップが出来上がる。ジジイが怒ってファイアボールとかの話があったが、プリメーラにもしっかり遺伝しているようだ。こいつは怒らせてはいけない。

 馬車が消し飛んだあと、唐突に全ての音が止んだ。付近の死人の顔がみんなこっちを見ている。いや、こっち見るな。こええから。


『アアアアアアアアアアアアキャアアアアアキィエエエエエエエ!!』


 付近の全死人が絶叫を上げ始めた。


『おい、嫌な予感がする!一度逃げるぞ』


「はい、僕も嫌な予感がしていたので死人に攻撃するのは避けていたのですが、やってしまったものは仕方ないので逃げましょう!世の中逃げたもの勝ちです!!」


 こいつはなんでこう極端なんだろうか。


「うう、プリメーラのせいでごめんなさい」


 涙目で事態の悪化に反省しているプリメーラをドラゴントゥースウォーリアが担ぐと一目散に近場の建物の屋根に登ってしまう。ちなみに来るまでに便利だった砂のラクダは街の外に放置されているのだが、素材が良すぎたせいかプリメーラの乗り物としてはこいつの方が遥かに優秀らしい。と言うのもこのドラゴントゥースウォーリア、今俺が命令する前に自発的にプリメーラを担いだのだ。どうなってんの。優秀過ぎとかそういう次元の存在ではない。


『俺らもとりあえず上にいこう』


「私はあんなところまで上がれないわよ!」


 レインが狼狽えるので抱き上げて屋根に飛び乗る。


「あ、ありがとうございます」

 

 急なことに驚いたのかあっけにとられているレインをそっと下ろすと、肩をポカポカ叩かれる。振り替えるとプリメーラが涙目でうーうー言っていた。


『いや、誤解するな、そいつが先に飛んでいったのだから仕方ないだろ』


『でもでも!!』


 こんなことをしてる場合ではないのだが。続いてサーガとブラドがのぼってくるが、コンゴウがこない。


「コンゴウ、急ぐんだ!!」


 サーガは何か焦っているようだが、雑魚に囲まれたくらいだし、その気になれば皆殺しでいいような気がしてきた。なんで避難したかって?ほら、追いかけられると逃げたくなるだろ?


 

 しかしコンゴウは全く上れない。ちょ、ニンジャ何してんだよ。死人群れてきたんだけど、早く上来ないとかじられそうな雰囲気だぞ?だがコンゴウはとんでもない発言を繰り出した。



「サーガ殿、このコンゴウここまでのようです。かくなる上は一人でも多くの死人を巻き添えに周囲一帯この爆裂陣にて消し飛ばし道を切り開きましょうぞ、御免!!」


 は?何言ってるんだ?と思う間もなく、特大の火柱が上がる。あれだ。地球でやったドラゴン花火?シュゴオオオオッて燃える奴のでっかいのが吹き上がっている。


「いけない、みんな伏せろ!!」


 俺を除く全員が屋根に伏せると同時に広場の噴水が砕け大穴が空いていた。付近の動く死体どもも粉々だった。


「コンゴウ殿はいつもニンジャの癖に高いところ怖いと仰る方でした・・・・・・なぜ、なぜ屋根に避難してしまったのか。私だけでも下に残ればこんな惨いことには」


 涙を流しながらブラドが呟く。


「いや、コンゴウはこうなることを知っていたのかもしれない。みてください、噴水の下に階段があります!!」


 発破で吹き飛んだ噴水の下には石段が見えた。うん、高所恐怖症が原因で自爆しちゃうって何だ、この茶番。もう少しシナリオ練れなかったのかオイ? 

付近に動く死体は見当たらない。俺達は階段を降りて地下へと進んでいった。

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