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プロローグ

 憧れの異世界転生を果たしたものの色々不便だったのでこっそり暗躍してたら神話級のシナリオに巻き込まれてました。



 俺の名前はガイ・アディ・ラガ・ン。長いからガイと略してくれ。地球生まれ日本育ちの元日本人。今はドラゴンやっている。

 転生するとき選択肢にあったから選んでしまったが、ドラゴンライフは割りと苛酷だった。なんというか孤高の生き方になってしまった。何をしても他の全てがとてつもなく脆く感じるのだ。ちょっとくしゃみしたら山が消し飛んだり、貧乏揺すりしたら地震が起きたり。あんまり力加減とか面倒くさいから少し落ち着いてから、ここ最近(3千年くらい前から)の俺のマイホームは標高百万mほどの高さの世界樹の最上部だった。鳥は愚か、他のドラゴンやグリフォンとかワイバーンも寄り付かないレベルの秘境だ。たまに現れるモノと言えば、宇宙空間から飛来するよくわからん邪神(笑)とか、空間をこじ開けて来る異次元のいきもの?とかろくでもないやつぐらいだ。こいつらは気持ち悪いから遠慮せずにぶっ殺している。

 景色は良いから結構長く住んでいたのだが、先に述べたようにあんまり愉快な環境ではない。というか食い物がそいつらくらいしかなくて辛い。いや、別になに食ってもエネルギーにできるよ?生まれて最初の食料って自分の生まれた卵の殻で、アダマンチウムのカタマリだったし?その後寝ぼけて付近の魔石の鉱脈を歯がためがたらに食いつくしたり、大陸まるごと煎餅のようにかじり倒したりしてたしね?

 転生したばかりの頃の俺は自分の力が世界に対して非常識なサイズかつ、生まれたてとあっては状況もよくわからないし他の生物としのぎを削る戦いを繰り広げていたが、何匹かいた他の俺と同じようなドラゴンとケンカしたり、俺とほとんど同サイズのクソデカイ蝿を追っ払ったり、尻尾がたくさんあるキツネにストーカーされたり、大陸がわりに亀を沈めたり、マイホームを紹介してくれた気の良い巨人のおっさんと死に別れたり、意気投合した不健康そうな顔色のジジイの寝床を地下に作ってやったりしていたら気がついたら人間と関われていないことに気づいた。

 そもそも異世界に転生、しかも強力なドラゴンを選択した理由は異世界のファンタジックな文明を制限されることなく本能のままに自由に満喫したいという理由だったのだが、自由すぎるドラゴンの本能に支配されてここまで人間との関わり皆無(笑)我ながらひどすぎて笑える。

 真面目に思い返すと地球で食ってた飯が懐かしい。この世界の文明って本当にごく最初の頃に類人猿じゃねえか、進化するまで待つかー。とか言って永らく忘れていたのだが、あれから何年たったか知らんが相当な時間を経ている。砂糖とか香辛料とか流通してるのだろうか?そもそも類人猿から人類に進化できたのか?


 俺は決心した。そうだ、人里行こう。新幹線とかないから適当に体を小さく、ちょっとした魔獣くらいに縮めると成層圏から一番丈夫そうな大陸めがけて突撃した。

 狙いは良かった。割りと被害は少ない。荒れ地?みたいだし。クレーターができようと付近の魔獣が軒並み死んでようと問題ない。

 竜神として崇められるかもしれないし?そこそこいい体型で行ってみようと思っていたが、この分だとうっかりで国を滅亡させてしまいそうだ。俺は人間の男の体型をイメージして肉体を形成していく。何となくこんなところか?すでに前世の己の姿とかゲシュタルト崩壊して思い出せなかったので、なんとなくファンタジーにいそうな人の雰囲気でヨーロッパの白人男性風のアバターを作り上げた。そして俺は思いきってドラゴンの体と俺の人としての意識を分けた。驚くなかれ、転生した俺にはドラゴンとしての魂と人間としての魂の二つがあるのだ。眠そうな俺の本体には別の大陸を見てきてもらうとしよう。


 しかし俺の思惑はドラゴンの俺にいきなり否定される。


「断わる。眠い。寝る」


「ええ・・・・・・って、そもそも人間としての感覚が全部こっちに来てるから肉体的には興味ないのか」


 完全にドラゴンの本能に従っていたからこそ理解できてしまった。人間に興味関心がない。正確には力の無い存在に関わる気がない。

 ドラゴンの俺はマイホームに帰ってしまった。まあ、退屈してないなら良いか。こうして俺は密やかに人間の世界に向かって歩き始めた。

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