Extra 僕がもっと書きたいいろいろな事(一部キャラプロフ付き)
作品についてのあれこれを徒然なるままに書いた…要するに、長いあとがきのようなものです(ネタバレについては全く配慮していないのでご注意ください)。
まずは、皆様ここまで読んでいただき有難うございました。まだ全部読んでないという方、よろしければ本編の所まで戻って読んでくださると嬉しいです。
この、「人気の異世界転移ものに自分が(一応)経験した吹奏楽を組み合わせてみたらウケるかもしれない」という安直な思いつきで始めた作品を、(当初の思惑通りにウケたかはともかく)三年越しに完結までこぎ着けられたのも、ひとえに読んで下さったみなさんのおかげです。改めて心から感謝します。
それにしても、三年の間に世の中もすっかり変わってしまいました。まさか、書き始めた当初はリアルに人々が怪物を恐れて外に出るのを躊躇うような世の中になるとは思いませんでしたが…
さて、この作品を書くにあたってこれだけは自分の中で守ろうと思っていた事、それは所謂「俺TUEEE!!」な展開だけはしないでおこうと言う事でした。
多少ご都合主義な事はあっても、あくまで「普通の吹奏楽部の高校生」から大きく逸脱する範囲のことはさせないようにしようと(能登川先輩はちょっと別かもしれませんが…)。なぜそんななろう界の趨勢に反するマネをしたのかというと、私自身が、肉体的に決して強くはない者が知恵と勇気とガッツで危機を乗り越えていくような話が好きだからです。
そして、はからずも吹奏楽部員はそういう物語を展開するのにうってつけの存在でした。運動部員よりも肉体的に弱い(いや、個人差はあるでしょうがあくまで一般論として)、ものすごく実用的なスキルを教えられてるわけでもない、もちろん戦闘のエキスパートでもない、もとよりただの人間なのでほとんどの魔物に対抗できるわけもない…。
さらに言えば、メインキャラ四人をはじめ登場人物の多くも人間的な弱さを抱えています(コモやパルスラは言うに及ばず、アクルムやアゼルファルスまでも…)。
でも、弱いヤツもいつまでも弱いままではないんだ、反撃できるんだというのは、書いてるうちにこの作品の大きなテーマのひとつとなっていきました。
「ブラック」を強調したのは、所謂「ブラック部活」の代表例として吹奏楽部が出されることが多かったからです。私自身まったく真面目な部員ではなかったし、それを良しとしない人にまで部活動を押し付けるつもりは全くないのですが、そう言う部活でも楽しんでやってる子たちは、自分の部の活動が批判されてるのをどう思ってるんだろう。そう思って、あえてそう言う子たちの視点で書きたいなと思ったのでした。
【キャラについて】
須賀哲太
Birthday:9/7
好:チョコ、枕
好(音楽):ブリットポップ(ブリットポップという言葉は知らない)、ゲーム音楽
嫌:バス
1話を見れば分かるとおり、最初の予定では主人公にするつもりではありませんでした。しかし、自分に近いキャラの視点で書いた方が書きやすいのではと考えて2話以降(基本)彼の視点で書くことになりました(別の理由として、メインの四人の中で唯一ゲーム関係に明るい奴なので、彼の視点の方が作中のファンタジー的なガジェットを説明しやすいだろうと言うのもあります)。
性格的には、他の三人がそれぞれの方向に我が道を行く人たちなので、彼に関しては極力「普通の男子高校生」を意識したつもりです。
前述の通り不真面目な部員だった作者自身が少なからず投影されたキャラですが、ストーリーが進むにつれ(当然ながら)どんどん作者とはかけ離れて行きました(ちなみに、哲太、香織、瑠衣の三人は元々別作品に使うつもりだったキャラが原型になっています)。
展開の都合上、彼には何度も死にそうな目に合わせて申し訳なかったな…と思っています。
進藤香織
Birthday:2/27
好:カレー
好(音楽):J-POP、スウィングジャズ
嫌:どんな物でもその気になればいい所が見つかると思ってるので実質的になし
どんな時でもポジティブさを失わない明るい少女…のつもりだったのですが、ストーリーの都合上弱い面が多く前面に出てしまいました。まあ、彼女がいなければ彼らが旅に出る事もなかったと思いますが。
ちなみに、メインヒロインでありながらキャラ付けには結構苦戦しました。何しろ、作者自身が「明るくポジティブ」とはほど遠…ゲフン。結局、「素直に作者の頭に思い浮かんだ行動をさせよう」と開き直りましたが。
もっとも、彼女には「メインヒロインである」という最強のキャラクター性があるんですけどね。
一条寺瑠衣
Birthday:10/22
好:図書館、わらび餅
好(音楽):後期ロマン派
嫌:運動全般(ただし釣りはそうでもないらしい)
個人的に、肉体的には弱くても強い信念を持ってたり芯が強かったりするキャラが好きで、彼もそんなキャラとして描いたつもりです。
性格的には、ただの堅物では面白くなかったので恋愛面に対する興味は強いという設定にしました。ちなみに、そうなった切っ掛けもちゃんとあります(いずれ書きたい)。
作中で触れた通り姉が一人いて、父・英雄は元吹奏楽部員で音大出身、母、園子は市民楽団に所属、姉、絵理世も吹奏楽部員という音楽一家です。
ルイはルードヴィヒのフランス語読みですが、その事を知ったのは「少年、苦悩を突きぬけて歓喜に至れ」のタイトルを考えた後の事です(本当)。それに合わせて家族の名前の元ネタもベートーベンの楽曲にしました。
早坂桃華
Birthday:6/14
好:センパ…お菓子作り
好(音楽):うるさ過ぎない物なら何でも
嫌:男子の笑い声
最初は正直動かしにくかったです。ふわっと、寡黙な天才肌みたいな感じの子に設定してたのですが、(「寡黙」はまだしも)「天才肌」なんて自分には欠片もない資質なのですから。
で、考えたあげく「センパイ(はあと)」な属性を付与。ようやく動いてくれました…
「力が強い」という設定にしたのは、個人的にキャラには、なにか一つ普段の姿とギャップのある設定があると面白いと思ってるからです(他にもそういう方向性で考えたキャラ設定がいくつかあります)。
そう言えば、結局彼女が吹奏楽部に入った理由書きませんでしたね。まあ、これも機会があれば。
能登川誠矢
Birthday:11/11
好:スリル、危機を乗り越えること
好(音楽):ドラムンベース、シューゲイザー
嫌:仲間に振りかかる危機
破天荒でハチャメチャ、でも根っこは仲間思いで頼りになる…というキャラのつもりでしたが、正直活かしきれなかったという気がしています。まあ、彼に変な事を言わせたりやらせたりするのは作者的に楽しかったですけど(笑)。ちなみに、キャラクターイメージは強いて言えば「新必殺仕置人の」念仏の鉄です。
アデス達と出会う前はどうやっていたんですかね彼(作者にもよく分からない)。ここらへんは、時間が許せば彼が主役のスピンオフでも書いてじっくり詰めて行きたいですね。
月山椿
Birthday:5/13
好:筋トレ、格闘技観戦
好(音楽):昭和歌謡
嫌:ナメクジ
香織とは別のベクトルの「強い女の子」を意識したキャラです。香織が優しい博愛主義者だとしたら、彼女は時に他人を押しのけてでもトップに立とうとする子。
そんな彼女だけに(また、書いてるうちに作者自身この子が大好きになったので)、ただの「負けヒロイン」で終わらせるわけにはいかなかったのです。
で、いろいろ考えた結果、哲太にとっての「一番」にはなれなかったけど彼にとっての「特別な存在」にはしてやれたんじゃないかなと思います。
ちなみに、調べたらツバキの花言葉は「控えめな素晴らしさ」「気取らない優美さ」との事ですが、あまり彼女のイメージには合いませんね。
ゴンド
少年少女の冒険ものには欠かせない、「厳しくも温かく主人公たちを見守る大人」として設定したキャラです。結果的に、四人が割とすぐに町を出たので登場期間もあまり多くなりませんでしたが…
ルザンもですが、冒険者時代はかなりの凄腕で名も知られていたという設定です。そんな人が一宿屋の主人に納まってるのは、やっぱり仕事の中でかっての自分と同じような旅人に出会うのが嬉しいからでしょうね。
エスラン
最初、何となくショートヘアでお姉さんっぽいポジションの女剣士を出したいと思って考えたキャラで、実は元々は、特に同行者にする予定もありませんでした。他にもストーリーの都合上(←多いなこれ)どんどん超人化が進行していったりとか、結構扱いが話の都合に左右されてるキャラだったりします。
ちなみに、父であるルザンはこの世界では相当な長身(190cm近い)、彼女も設定では170cm台半ばはあります。
ルザン
エスランとは対照的に、完全にストーリー上の必然から生まれたキャラです。哲太に剣技を覚えさせることはかなり早い段階で決めてましたが、ならば当然師匠的な存在が必要だろうと。
剣の達人、下戸、怪力系の技を使う旧友がいるあたりは「必殺」シリーズの中村主水みたいだったので、じゃあ家庭環境は主水さんと真逆にしようと思って奥さんはああいうキャラになりました。別に、作者が「かわいいお母さん」を書きたかったわけではありません。いやいやマジで。
アデス、ヤズゥ、スナリア
せっかく異世界ものを書いたのだからやはり魔法を出したくて、じゃあ能登川先輩と一緒に行動させるキャラに使わせようと思ってアデスのキャラが固まりました。ヤズゥとスナリアの職業に関しては、パーティーバランスを考えてわりと適当に決めてたりします(汗)。
アデスに関しては、最初はあそこまで目立たせるつもりはなかったのですが、結果的に「大人代表」のようなポジションになってかなり台詞も多くなりました。
他の二人…「寡黙」という設定のスナリアはともかく、ヤズゥについてはもっと台詞を与えてやりたかったなと思っています。
有栖川美蘭
Birthday:8/11
好 :静寂、苺のタルト
好(音楽): ケルト音楽
嫌 :スマホの振動音
椿に付随して必然的に生まれたキャラです。いくら椿でも、いきなり一人でこの世界に飛ばされて生き抜くのは無理だろうと(能登川先輩は能登川先輩だからアリ)。
一見厳しく当たるように見えて、実は隠されていた優しさに気づく…というありがちな展開にはしたくなかったので、最後まで哲太たちの事をどう思っていたかははっきり書かないままにしました。
椿でさえ軽くビビるくらいだから、きっと元の世界では部員たちをかなりシゴいてたんでしょうね。ちなみに、イメージしたのは「セッション」のフレッチャーのイケメン版でした。
アゼルファルス
最初はもっと可哀想な感じの人にするつもりでしたが、「ごく普通の高校生を異世界に飛ばす」という超絶理不尽をやらかした奴を「悲劇のヒーロー」みたいに描くのはいかがなものかという思いが強まってきて、こういうキャラになりました(もうお分かりかと思いますが、作者は割とその場のノリで展開を決めてます)。
アクルムもそうですが、能力的にはものすごくても人間的には子供じみた所もあるというのは、結果的に「最初は弱くても成長していく」主人公たちとの対比になったのではないかと。
ちなみに彼だけ妙に名前が長いのは、この世界では全体的に年代が下がるほど名前が短くなる傾向があるからです(なので、高齢のラギファスも若干長い)。
アクルム
作中トップクラスに扱いの変わっていったキャラです。最初は、アゼルファルスの力を受け継いでいるという設定もなく、ひたすら好奇心のために哲太たちを追いかけるキャラでした。しかし、(一応)ラスボスポジションのキャラがそれではなあ…と思い、紆余曲折の果てに、強大な力を持っているがゆえに周囲と折りあえず、精神的に子供のまま成長したキャラに落ちつきました(別の案として、実は彼も転移者だったというのも考えましたが、話を畳みにくそうだったので没に)。
方向性は少し異なりますが、能力的にはズバ抜けてても精神的には子供じみた大人、というのは「麒麟がくる」の信長を多少意識してなくもありません。
さて、上で「機会があれば○○について書きたい」と何度か書いたように、「異世界に転移した者たちが元の世界に帰る物語」は終わってもまだまだこの世界について書きたいことは沢山あります。
なので、そこら辺はいずれサイドストーリー集みたいなのを立ち上げて書いていきたいと思います(と言っても、この作者のことですし、他に書きたい作品もあるのでいつになるかは全くの未定ですが、もし興味があると言う方は気長に待っていただければ幸いです)。
最後になりましたが、もしこの作品を読まれた皆さんが、作中の登場人物たちと同じように「音楽っていいなぁ」と思って下さったのなら、作者としてこれほど嬉しいことはありません。
もちろん、私も音楽が大好きです。
それでは、またいつかお会いしましょう!