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ブラック吹奏楽部員の異世界サバイバル記  作者: 雷電鉄
第三章 ジェニジャル大陸
49/74

#42 真実

「でっかーい!」

 町の前に建てられた大きな門を見た進藤が叫ぶ。

 そう、俺たちはブギーマンの襲撃を受けながらも、ついに大学のあるバディロディアの町までたどり着いたのだった。

「とりあえず、ザグスンがここに来てたら合流したいよな。うまく見付けられるといいんだけど・・・」

 町に入った所にある、初代総長の像を興味深そうに見る一条寺の服を引っ張りながら俺は言った。

 何も勝手が分からない未知の町の中で、何も知らないまま動き回るのは避けたい。ザグスンに案内してもらえるのならこれほど心強いことはないだろう。

 そんな事を考えながら町の中心に向かって歩いていると、俺たちの前に石人形のような物が歩いてきた。

「ミナサマ、ナニカゴヨウケンハオアリデスカ?」

 戸惑いながらも、俺は石人形に返した。

「ええと、もし医術学府にザグスンという男がいれば、その人の所まで案内してほしいんだけど・・・」

 石人形は思考を巡らせているのか、しばらく黙った後に言った。

「ザグスンナラ、イジュツガクフニヒトリオリマス」

 俺たちは「おおっ!」と声を上げた。

「ミナサマ、コチラへドウゾ」

 そう言うと、石人形は鳥のような姿に変わり、ゆっくりと羽ばたいて行った。

「おそらく、魔法具の一種だろう。あんな物は私も初めて見るが・・・」

 呆気に取られる俺たちに向かってエスランさんは言った。

 何であんな便利な物が今までの町に無かったのだろうと思ったけど、まあ便利だからこそ、そうやすやすとは作れないのかもしれない。考えてみたら、元の世界でも地域によって文化は全く違うのだ。

 鳥について歩きながら周囲を見渡してみたけど、町の風景も今までとは明らかに違う。四角に切り出された石で組まれた建物が整然と並んでいて、何かの呪文なのかあちこちの壁や門に見たことのない文字が書かれている。何より、今までの町や村には少なからずあった猥雑な空気がここには感じられなかった。


 やがて、鳥は一つの建物の前で止まった。建物には、俺にも分かる字で「医術学府学生寮」と書かれていた。

 鳥は建物の中に入って行った。しばらくすると、鳥とともに一人の男が建物から出て来た。

「おお、テッタたちか!無事だったんだな」

 髭は剃っていたけど、間違いない。ザグスンだ。

「ああ・・・まあ色々あったけどな。そう言うお前も、元気そうだな」

「ああ、お陰で元気にやってるよ。まあ・・・あまりいい女のいる店がないのが寂しいけどな」

 最後だけ小声でそう言ってきた。変わってねえな、と思う。

「じゃあ、再会を祝って少しこの町を見物しようか。今日は俺も休みだしな」

「いや、悪いけど俺たちは少しでも早くあの道具の謎を解かないといけないんだ」

「ああ、そうだったな。じゃあ、俺について来な。生物学府まで案内するぜ」


 俺たちはザグスンに付いてさらに町を歩いた。やがて、一つの大きな建物が見えて来た。

 俺たちは建物の前まで来た。建物の上部正面には、鳥をかたどった彫物がこさえられている。その下の板に、「バディロード大学 生物学府」と書かれていた。


 俺たち七人は建物の中に入った。ザグスンは入口に立っていた番人に、「ちょっと面会を希望している奴らがいるから、できるだけ偉い奴・・・教士クラスを呼んできてほしい」と頼んだ。

 番人は少し怪訝そうな顔をしながらも建物の奥に入って行った。

 

 番人が建物の奥に入って行ってから数十分は経っただろうか。

 長い。そりゃあ、そんな偉い人にはすぐには会えないだろうなと思ってはいたけど。今の俺たちには時間を潰すためのスマホもゲーム機もない・・・

 と言いたいところだが、部活では合奏に参加しないメンバーは後片付けのために合奏が終わるまでひたすら待たなければならないこともザラにあったし、幸か不幸か、今の俺は娯楽の無い状況で時間を潰す事には慣れていたのだった。

 他の仲間達やザグスンと軽いお喋りをしていると、時間の経過はそれほど気にならなかった。 

「それにしても、ますます剣士として身体が出来上がってきたな、お前」

「そ、そうか?」

 ザグスンの言葉に、俺は軽く照れながら答えた。

「だが、少し肩が張ってるみたいだ」

 ザグスンは俺の肩に手を触れながら言った。

「後で俺の部屋まで来い。マッサージしてやる」

 ザグスンの手が背中を伝ってくる。俺は、バランスを崩して壁に寄りかかりそうになる。

「ちょ、人が来るかもしれないから止め・・・」

 そう言ったところで、咳払いの音を聞いて俺たちは我に帰った。

 音のした方を見ると、髪を腰の手前まで伸ばして眼鏡をかけた女性が立っていた。歳は、俺たちより少し上くらいか。

「貴方たちですか?私に面会を希望している方たちというのは」

「あ、すみません。ここに来られてるとも知らずに、恥ずかしい所を見せてしまって・・・」

 俺は体勢を立て直して言った。

「いや、構いませんよ。なかなか堪能し・・・いえ、別に急いでもいませんので」

 女性は、軽く微笑みつつ眼鏡を直した。

 あ、こっちの世界にもいるのね、()()()()()・・・


 俺たちは、女性と一緒に研究室らしき部屋に向かった。

「改めて名乗らせて頂きます。この生物学府教士のアトフィと言うものです。よろしくお願いします」

「あ、こちらこそよろしくお願いします」

 思わず戸惑ってしまいそうになるほど丁寧な挨拶を受けて俺たちも一人づつ名乗って行った。

「それで、一体どういう用件でしょうか?」

 俺たちは、アトフィさんに音の角を見せた。

「ええと・・・この道具が何の動物の角で作られてるのか調べてほしいんですけど」

「ふむふむ・・・分かりました。少し待って下さい」

 アトフィさんは、部屋の奥の書斎(?)に入って行った。

「アトフィさんは、ああ見えてこの国・・・いや、世界でも屈指の生物の研究者なんだ。運がいいぞ、お前ら」

 ザグスンはそう言ったけど、今いち信じられなかった。あんな若い人(しかも腐女・・・いやそれは関係ないか)が本当にそんな凄い研究者なのだろうか?

 しばらくして、アトフィさんは「世界生物大鑑」と書かれた一冊の本を持ってきた。

「ええと、この形ならおそらくウシ族の角ですから・・・」

 そんな事を言いながらしばらく本のページをめくったりしたかと思うと、アトフィさんは落ちついた動作で本を広げた。

「お待たせしました。おそらく、この項目に載っているはずです」

 開かれたページには、音の角に似た形の角を持った動物の絵が並んでいた。

 世界でもトップクラスの研究者というのはどうやら嘘じゃなさそうだ。インターネットもない世界で、あれだけの情報からすぐに答えを導き出すのは並大抵じゃないだろう。


 俺たちはアトフィさんから本を受けとった。これ以上通常の業務の邪魔をしたら悪いというのもあるけど、ずっと追い求めていたアイテムの秘密は、最後は自分たちの手で見つけたかったのだ。

 しばらくページをめくった所で、月山さんが声をあげた。

「あっ、もしかしてこれじゃないかな?」

 その指さした先を見ると、「蒼角牛」と名の付いた動物が描かれていた。

 その名の通り青い色の角をしているが、音の角も(かなり色落ちしているとはいえ)青っぽい色をしている。形もこの絵とそっくりだ。

「これで間違いないだろう」

 そう一条寺が言うと、俺たちは一斉に「やったー!」と声をあげた。ついに・・・ついに、俺たちが持ってる楽器についての重要な手掛かりが掴めたのだ。


「・・・ちょっと待って下さい。それはどういう事ですか?」

 気勢を上げる俺たちに向かって、アトフィさんが割り込んできた。

「蒼角牛は、百年前ひどい干ばつが有った時に絶滅したとされているのですが・・・」

 絶滅!?百年も前に!?という事は、これもやはり大魔戦役時代のアイテムなのか・・・?

「こんな物を持ってるなんて、あなた達一体何者なんです・・・?」

 ヤバい。メッチャ訝しげに見てくる。何とか、何とか正体を明かさずに言い逃れなければ・・・

「ええと、俺たちこういう昔のアイテムを探すのが趣味で、この女戦士さんについて来てもらって旅をしてるんです」

「・・・・・・」

 あまり納得はしてない様子だけど、とりあえず正体を詮索するのは止めてくれたようだった。


「お聞きしたいのですが、この動物はどこに生息してたんですか?」

「この大陸だけですね。他の場所にいたという記録は無いです」

 一条寺の質問にアトフィさんが答えた。ということは、以前あいつが言ってたように音の角はこの大陸で作られたとみて間違いなさそうだ。

 俺たち六人は小声で話し合った。

「音の角がこの辺りで作られた物だということは、やはり他の楽器もここで作られた物なのかな」

「魔法の筒は間違いないだろうが、魔法の鉄の棒はどうだ?イェルドン大陸の遺跡にあった物だからな・・・」

「何にしても、この大陸に楽器についての秘密があるのは間違いないんじゃない?」

 その会話が漏れてしまったのか、アトフィさんが口を挿んできた。

「あのう・・・よく分かりませんが、魔法について知りたいのならもっとうって付けの場所があるじゃないですか」

「どこですか?」

 思わず大きな声で聞き返してしまった俺にアトフィさんは答えた。

「もちろん、魔法学府ですよ」

(つづく)


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