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ブラック吹奏楽部員の異世界サバイバル記  作者: 雷電鉄
第三章 ジェニジャル大陸
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#39.5 瑠衣メモ

瑠衣が旅の途中で書き記したメモという設定の幕間ネタです。大部分は過去のエピソードとリンクしてるので、もし宜しければ探してみてください(すぐ分かると思いますが)。

〇月×日

いよいよ町の外に旅立つことになった。町で手帳を買ったので、これから旅の途中で見聞きしたことや新たに分かったことを書き記していきたい。何かの役に立つかもしれない。

この世界では紙はそれなりに貴重なので、大切に使わなければ…


〇月×日

昨日は寝床にしようと思ったテントを吹き飛ばされてしまった。ジャイアントバットに襲われたせいだ。何とかこの宿駅までたどり着いて、今これを書いている。仲間が全員無事なのがせめてもの救いだ。

あの時須賀が後ろから攻撃しなかったら、仲間にも誰か犠牲が出ていたかもしれない。こういう時、自分の無力さが恨めしくなる。

それにしても、あの魔物の体の構造はどうなっているのだろう。また出会ってしまった時のためにも調べておきたい。どこかに文献などはないだろうか。いっそ、また現れてくれれば…いや、こういう事を考えるのはよそう。


〇月×日

須賀がこの世界に飛ばされていた能登川先輩を見付けて来た。その流れで、先輩の所属していたパーティーと合流することになった。とても心強い。

だが、何より特筆すべきなのは魔術師のアデスさんの出した魔法をこの目で見た事だ。

もう一度書く。僕は魔法を見た!!(以下殴り書きが続くため判読不能)


〇月×日

アデスさんに昨日見せてもらった魔法を教えてくれないかと頼んだけど、魔法といっても結局重要なのは体力だからお前はやめておけと言われた。暗に僕の体力の無さを指摘されて悲しかったが、アデスさんはそのうち何かお前に合ったアイテムをやると言ってくれた。一体何をくれるのだろう。とても楽しみだ。

なお魔法を覚えようと思ったのは、もし覚えれば体力のない僕でも戦力になれるかもしれないと思ったからだ。決して「ヴルカニク・ブレイズ!!」に憧れたからではない…はずだ。


〇月×日

僕ももしもの時に備えて少しは体を鍛えようと、腕立てや腹筋をやってみた。腕立ては案の定全然出来なかったが、腹筋は思っていたよりも出来たので驚いた。吹奏楽部の腹筋や走り込みに意味なんてないだろうと思っていたが、結果的にはこうして役に立っているわけだ。肉体労働をしなければなくなった事といい、僕も現実を受け入れなければならないという事だろうか…


〇月×日

どうした事か、昨日ギルドでビールに口をつけてからの記憶が無い。

今朝目が覚めると、隣で須賀が毛布にくるまりながら「せんぱい…せんぱい…」とうわ言のように繰り返していた。能登川先輩と二人になった時、何があったのか聞いてみたが、虚ろな目で「お前には知らない方がいい事もある」と言われただけだった。あの物怖じしない先輩がそこまで言うなんて、どんな恐ろしい事があったのだろう。やはりこの世界は危険に満ちているようだ。


〇月×日

文献によると、この世界では数百年も人間同士の戦争が起こっていないらしくて驚いていたが、大魔戦役が300年も続いていたと聞いて理由が分かった気がした。単に戦争などやっている余裕がなかったからだろう。

魔物と戦うための武器や防具を人間同士の争いで失うわけにはいかないだろうし、戦争になれば人も資源も失われるからそこを魔物に襲われたらひとたまりもない。やはり、どこの世界でも恒久的な平和を得るのは困難なのだろうか…


〇月×日

須賀がお前もたまにはジョギングに付き合えよと言ってきたので一緒に走ったが、あいつが早すぎて取り残されてしまった。全く、ジョギングの本来の意味は「ゆっくりと走る」なんだぞ。

何となく、中学の時のマラソン大会を思い出す。あの時、周りの男子で歩いている者はいなかったが、苦しい者は歩いてもいいと言われていたので僕は最後歩いてゴールした。後で他の男子に「お前恥ずかしくないの?」と言われたが僕は間違ったことをしたとは思えなかった。最後まで走ってゴールしようとしたばかりに途中でリタイアした男子もいたのだから。…須賀も、あの時の僕を見ていたら「恥ずかしくないの?」と言っていたのだろうか?


〇月×日

今日は劇場で進藤さんと須賀が劇に伴奏をつけた。須賀の演奏はまだまだ拙く、正直客に聴かせるレベルではないのではと思ったが、客は大歓声で迎えていた。僕は今まで、演奏を自分の中の理想に近づけるのを目標としていたけど、もしかしたらそれだけが正しい音楽では無いのかもしれない…

それにしても、本人が気付いているかは分からないけど演奏する進藤さんはとても楽しそうな表情をしていた。彼女が部活であんな表情をしていた事はあっただろうか?


〇月×日

有栖川先生に特訓をしろと言われた時はどうなるかと思ったけど、何とか一週間やり切った。先生がいいと言うまでずっと正座をしていた事を須賀は驚いていたようだったが、何の事はない。ずっと音楽の事を考えていたらいいのだから。その前の基礎トレーニングの方が僕にとってはよほど苦しかった。

そして、特訓後の態度を見るにどうやら月山さんは須賀に好意を抱き始めたらしい…。これは面白…いや、困った事になりそうだ…


〇月×日

僕達がバディロディアの町の大学を目指しているのは、須賀が生物を研究している所なら月山さんの持っていた角笛が何で出来ているか分かるのではないかと言い出したからだけど、考えたらソガ―ブの町で最初に「魔法」と名のつくアイテムを探そうと言い出したのもあいつだったな。全く、ここ一番と言う時のあいつの発想力には驚かされる。正直、少し羨ましい…

それはそうと、喧嘩ショウに出た日から須賀が手鏡とかは無いかとうるさい。合わせ鏡にして自分の背中でも見るつもりなのだろうか?全く、この世界では鏡は元の世界よりずっと貴重な物なんだぞ。


〇月×日

エスランさんと話し合って、須賀と進藤さんが二人で焚火の番をするようにした。これで、あの二人の仲も少しは進展してくれればいいのだが…。須賀の大きな物に立ち向かう力だけは、皆認めてるのだから。

この事を月山さんに感づかれてはいないだろうか?あと、早坂さんが自分も進藤さんと一緒に行きたそうな表情で見ていたがどういう事だろうか…?


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