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ブラック吹奏楽部員の異世界サバイバル記  作者: 雷電鉄
第二章 イェルドン大陸
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#16 洞窟へ行こう!

 関所(と言っても、移動魔法もあるからほとんど形式的なもののようだが)を越えて隣の国に出た。地図によれば、ここから三日ほど歩けば件のガルナレアの町に着くらしいが。

「真っ直ぐに行くには洞窟を抜ける必要があるな。洞窟を避けて行く手もあるが、その場合山地を迂回していかないといけないから大幅に遠回りになっちまう。」

 とアデスさんが言った。

 もちろん、俺たちは早く行く方を選択した。洞窟・・・不安とともに少しのワクワク感を感じさせる響きだ。


 洞窟の前まで来て、俺は息を飲んだ。地図によると岩山の下を潜りぬけるように洞窟が広がっているのだけれど、その入り口は垂直に近いような傾斜の竪穴一つだけであり・・要するに、今俺の前に存在するのはただの穴だ。

「もしかして、入口には階段があって中にはタイルが敷き詰められて・・・みたいなのを想像してたのか?そんなの、国の手が入ってる大迷宮くらいのもんだ」

 たじろぐ俺にアデスさんが言った。

 

 魔物が来ないかを確認して、頑丈そうな木にロープを固定する。そして穴の下にロープを垂らした後、一人ずつロープを伝って降りて行くのだ。

「とりあえず、一人ずつ順番に降りてこい。あとお前ら、女を一番後ろにするのはやめてやれよ」

 先に降りたアデスさんが言った。きっと中は順番の入れ替えも出来ないくらい狭いのだろう。

 エスランさんが先に降り、地上に残っているのは俺たち転移組四人だけになった。

「じゃあ、私から降りるね」

 そう言って、進藤がまず降りて行った。

「あっ、これ結構手が滑りそう・・・」

「お、おい、大丈夫か進藤?」

 進藤はロープを大きく左右に揺らしながら闇の中に消えて行った(万が一落ちても、エスランさんが受け止めてくれる・・・と思いたい)。

 次に早坂。彼女は進藤よりも小柄だし心配だったが、意外にもしっかりとした手つきで降りて行った。管楽器の中では重いユーフォを持っている彼女の腕力は女子にしては強いらしかった。

 これで地上に残っているのは俺と一条寺だけになった。

「一条寺、お前先に降りろよ。万が一魔物が来た時のために俺が後ろについとくから」

「・・・いや、僕は最後に降りる」

「えっ、でもお前一番後ろで大丈夫なのか?」

「・・・もし僕が手を滑らせて落ちた場合、女子に受け止めさせるのはマズいと思うんだ」

 アーメン、と心の中で唱えつつ俺は下に降りて行った。

 

 降りてみると、思った通りに狭く当然ながら周囲は真っ暗だった。これでは、魔物が潜んでいるどころか、数メートル離れれば戦闘が起こっていても分からないのではと思うくらいだ。

 アデスさんを先頭に、暗い所でも目が利くらしいヤズゥさんがその後ろに付いて行った。その後にアデスさんのパーティーが、そしてその後に、エスランさんを先頭に俺たちが洞窟に入った順に並んで行った。この狭さでは剣もろくに振り回せないだろう。

 俺たちは、いつ魔物が出てくるかも知れない暗闇の中を、息を潜めて少しずつ進んでいった。地図を見る限り、洞窟の長さは数百メートルほどのようだが、永遠の様に長く感じた。この暗さでは、魔物と戦う以前に本当に前の人に付いて行けてるのかも不安になってくる。

 進藤が俺に囁きかけた。

「ホラ、映画とかでやる右手を壁につけて歩いて行くやつやってみたらいいんじゃない?」

「お前なあ、壁に魔物がいたらどうすんだよ・・・」

 小声で今のような会話をする以外は、かすかに人の足音とたまに水の滴るような音が聞こえるくらいで、ほぼ無音と言ってよかった。

 やっぱ、何も見えなくて聞こえもしない部屋に閉じ込めるというのは最高の拷問だな、と思った。時々、前後の人間に話しかけないと気が変になりそうだ。

 俺は前の早坂に話しかけた。

 「そういや、早坂って魔物の足音が聞き分けられるって言ってたよな?何か変な音が聞こえないか?」

 「それが、先輩たちの足音がいつもと違って聞こえてくるんです」

 早坂は震える声で言った。

 俺たちは顔を見合わせた。いや、何も見えないのでたぶんそうしただろうと思うだけだが。

 「これはもしかして、反響音じゃないか?」

 一条寺が言った。洞窟などの狭いところでは、音が周囲の壁にはね返って特殊な聞こえ方をする・・・場合があるらしい。

 早坂は怯えている。・・・俺はどうしたらいいんだ?

 (つづく)

 



 

 

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