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7.火花散る

「解せないな」


「あらあら」


「……マルクス様と相性が悪い?」


 リューと一曲踊り終わる。あっさり、本当にあっさりと踊れてしまった。


 彼としてゲーム中は生きていたことが彼への理解度を高めているのだろうか。息が合うといった感じで、詰まることなくスムーズに踊れた。


「リュー様は本当にダンスが得意でらっしゃるのね」


 皆の元へ戻った私たちにタオルを差し出すフローラは、リューへ尊敬の眼差しを向けている。


 よしよし、いい感じである。


「ディオネもいい感じだった。本当に苦手なの?」


「うーん……。そのはずだったんだけれど、なんか踊れたわ。きっとリュー様のリードがよかったのね」


 少しだけ悪気を含ませて、リューをほめる。踊りながら殺気むんむんの視線を送り続けてきていたマルクスへせめてもの仕返しだ。


「……まるで私のリードが良くなかったかのような言いようですね?」


「ウフフ。まさか、そんなことは申しておりませんわ」


 マルクスも私もニコニコと笑っているのに、交わされた視線が火花を散らしている状況に皆それぞれ違う反応を見せた。


「お嬢様、イーリス様のお迎えがいらっしゃいました」


 非常にいいタイミングでメイドが声を掛けてくる。本人は水を差したことに心咎めの様子だが、私たちの一触即発の空気を察していたレイアが明らかにほっとしていた。


「あらもうそんな時間?」


「ではそろそろ解散といたしましょうか。フローラ、送っていくわ」


 フローラは私の馬車に同乗して来たため、帰る手段がない。もちろん、送っていくという約束の下で同乗してもらったので、私はフローラを送るべく従者を手配してもらおうとメイドに声を掛ける。


「僕の家が近いようだから、ついでに送っていくよ」


「え?」


 思わず不満の声が出てしまった。


 名乗りを上げたのはリューだ。


 そうだった、リューは学校の近くに家を借りている。そしてその家はフローラの家とほど近く位置している。


 送り道フローラとキャリッジで二人きり、とルンルン気分でいたのが肩透かしを食らい、リューを恨みそうになるが……、これは良い流れなんだと自分に言い聞かせる。


 この調子でどんどん友好度を上げていってほしい、そして当人たち意思で結ばれるのならば、こんな嬉しいことはない。


 どんなに自分を正当化しても決して消えなかった罪悪感も少しは和らぐ気がした。


「でも……」


 言い淀みながらフローラが私を見てくる。おそらく行きしな送るという約束をしたことを気にしてくれているのだろう。


 優しい……優しいよフローラ。でも大丈夫!


「リュー様がせっかく言ってくださっているのだから、私のことは気にしないで。リュー様とマルクス様は紳士でいらしてるから、きちんとエスコートして下さいますわ」


 牽制の意味を込めてにっこりと微笑む。


「もちろん。何事もなく送り届けることを誓うよ」


 神に祈るように、胸に手を当てリューが宣言する。マルクスも人畜無害ですと言わんばかりに薄っぺらい笑顔を張り付けていた。


 それに安心したのかフローラは目を細めると、「ありがとうございます」とドレスをちょんと摘み、浅くお辞儀をする。


 馬車での道中フローラとキャッキャウフフなことができないのは残念だが、楽しそうに馬車に乗り込んでいく姿を見るとこちらまでほっこりしてきた。

 

 ハッピーエンド計画、順調なのではないだろうか。


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