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16.もう一人の被害者

「んっー!」


「おやおや、静かに。まだ近くに敵がいますよ。レディー」


「……」


「良い子です。そのまま静かにできるなら拘束を解きます。約束できますか?」


 不服だが同意する。首だけを縦に動かし、約束できると意思表示した。


 背後から抱きかかえられるように拘束されていたが、ゆっくりとその締め付けが解かれていく。


 お腹に回されていた腕を離し、口をふさいでいた手を離す。緩んだ瞬間かみついてやろうかとも思ったがやめておこう。一応彼は私を助けてくれたのだ。


 彼が敵といった警備員の姿が見えなくなり、持っていたランタンのオレンジ色の明かりも見えなくなったのを確認し、私は彼へと話しかけた。

 

 まずは状況整理だ。

 

 

 

 夜目が効くというマルクスに先導され、暗闇の中をひた進む。転ばないようにと、手を引いてくれているのだが、なんだか落ち着かずそわそわする。


 そういえば今も昔も、男の人と手をつないで歩くなんて経験したことがなかった。


 ダンスでは手を繋いだが、それとはまた違った感覚だ。


「それで……どうしてマルクス様がここに?」


「助けに来たんですよ。当り前じゃないですか」


「マルクス様が……?」


 怪訝な表情をしているのがばれたのか、「心外な」と小さい声でつぶやいたのが聞こえた。


「みな心配していますよ、警備員……本物の警備員や警備兵が捜索をしていますが、一向に見つからず……。私もこうして学校の周りぐらいはと探してみたら、あなたを見つけたわけです」


「そう……。ところで本物の……ってことは偽物がいるってことよね」


「ええ、犯人は警備員に変装をして学校へ忍び込んだようです。そして催眠効果のある煙を使って皆を眠らせ、目的の人物たちを誘拐、今に至るというわけです。ちなみに犯人は複数人いる模様ですが私が確認できたのは二人ですね」


「……詳しいわね」


「はい、一部始終見てましたから」


 ……見てましたからと言いやがった? やっぱりあの時マルクスは動けてたんじゃない! どうして未然に防いでくれなかったのよ!


 誘導するために繋がれた手を思いっきり握る。少しだけ爪も立ててみた。


「いって。いいじゃないですか、こうして結果的に無事助けたんですから」


「バカ! 結果論じゃない!」


 つまり犯人は複数いて、私たちを何らかの目的をもって誘拐……って。


「ちょっと待って、達って言ったわよね。ほかに誰が誘拐されたの?」


「おや、気が付かれましたか。意外に目ざといですね」


「意外って失礼ね、それより他に誰が?」


 嫌な予感がした。確かこんなシチュエーションがあった気がする。イーリスルートの好感度イベントの一つでもある、イーリス誘拐イベント。タウマス家の失脚を望む、とある貴族が画策した誘拐事件は成功すれば好感度アップ、失敗すればバッドエンド。


 あのイベントはカフェからの帰り道に馬車を襲われ、イーリスが誘拐されるというものだったので完全に別口だと思っていた。まさか、こんな形でイベントが発生するなんて……。


 しかも事前のフラグをすべて吹っ飛ばしている。そもそもリューとイーリスが二人で一緒にカフェを行くという状況下ではないと発生しないイベントだったはずだ。


「イーリス・タウマス嬢だ。レイア・レタ・ペリフェリア嬢は異変に気が付き駆け付けた警備員により、連れ去られる前に助け出せたが、君とイーリス嬢はまんまと連れ去られてしまったよ」


 言いたい文句は山ほどあったが、今はそんなことよりもイーリスのことだ。


「それでイーリスはまだ保護できていないの?」


「その情報は入ってきてませんね。ただ、この近辺に居るとは思うのでこれから捜索の足を広げてみようとは思ってますよ」


 確か誘拐イベントでは学校近くの納屋に監禁されているはずだ。


 時間までに見つけ出せれば、好感度アップ。見つけられなかったら……。


「池……」


「池?」


「池の近くにある納屋へ連れて行って! 急いで!!」


 リミットまであとどれぐらいあるんだろうか。イベントでは正確な時間表記はなかった。ただ月が綺麗な夜とだけ説明があった。


 もし間に合わなければイーリスの命が危ない……!


「池……となると、こっちか。このまま森を突っ切りますよ。危ないけど、その方が近い」


 私が頷くのを確認し、マルクスは歩みを速めた。


 早歩きというよりも小走りといった歩みで森を突き進む。私には進む先に何があるのかも見えない状況だが、マルクスは迷いなく進んでいる。障害物があることを事前に知らせてくれるので、足を取られることなくスムーズに進める。


「どうして、場所がわかったのですか?」


「はぁはぁ、え? ……小屋で誰かがそんなことを話しているのを聞いた気がするのよ」


 実は前世でプレイした世界がここなんです。なんて言えるわけもなく、私は適当な話をでっちあげる。


「ふーん……。ところで君たちを誘拐した犯人に心当たりがあるんですけれど」


「は?!」


「君も知っているはずです。いや……調べているはずですよ」


 知っている。調べている……一体どういう事だろうか。


「ん、見えてきたよ。池と……納屋もありますね」


 私にはまだ暗くて良く見えないが、マルクスが言うのだから、もうすぐそこに目的地があるのだろう。


 学校の裏手にある池は湖と言っていいほどの面積がある。天気のいい日にはボートに乗ってデートをしている生徒もいるぐらいだ。


 深さはまちまちで足が付くぐらいの場所から、一気に深くなる場所まであり、溺れて亡くなる人もいたという。


 イベントではリューの助けが間に合わず、この池に突き落とされたイーリスはそのまま行方不明となりバッドエンドを迎える。


 リューに助けてもらわなければならない訳ではないので、救出するのは私でもマルクスでも構わない。


 ともかく一刻も早くイーリスを助けなければ。

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