1.そのゲーム、鬱ゲーにつき
「このクソゲーーーー!」
時刻は深夜二時。
私は近所迷惑など考えず叫び、携帯ゲームを持つ手に思わず力が入る。メキメキといった不穏な音を聞きハッとした。
だめだだめだ。こんな夜中に叫んでは、ご近所さんから苦情が入ってしまう。
だが、忙しい合間を縫ってプレイしているこの男性向け恋愛シミュレーションゲームがあまりにもひどい、ひどすぎる。
つい先週発売されたばかりのゲーム『パーフェクトワールド』は四人の女の子と学園生活を送りながら恋愛を楽しむというゲームで、私の大好きな絵師さんが作画しているという事もあり、発売日に購入してから毎晩こうして睡眠時間を削りながらプレイしてきた。
シナリオライターは聞いたことがない人だったけれど、ゲームを出してる会社はこのジャンルではかなりの大手、そりゃ良作を期待するというもの。なのに、なのに!
「女の子三人とのエンディングが全部鬱エンドってどいう事よっ!! 絵師さんの無駄遣い! 期待を返せ!!」
毎日終電で帰ってきて、本来ならご飯食べてお風呂入って寝るところを深夜三時ごろまでプレイして、また朝七時には出社するという生活を続けてきた見返りがコレなのかと、私はがっくりうなだれる。
一人目を攻略し終わった時点で「あれ?」って思ったよ。だって、メインヒロインぶち殺して逃亡エンドとか度肝を抜かれたよ。
それでもまぁ一人目だし、こういうインパクトのあるエンディングもあるよねって。
二人目攻略し終わって「うん?」って現実逃避したくなったよ。死エンドってなんでよ! 分岐間違えたとか、好感度が足りなかったとかで派生したBADエンドじゃなくて、いわゆるハッピーエンドがヒロイン死亡ってなんでよ!
心が折れかけた三人目、メインヒロインのようやく本当のハッピーエンドで涙したよね。シナリオがよかったとかじゃなくて、何のゲームをしていたかわからなくなった私の心に光が戻ったような気がして。まぁついさっきクリアした四人目で光なんて霧散したんだけどね。
「もう……お風呂入って寝よう……。悪い……そう悪い夢なんだ」
のろのろと立ち上がりお風呂場へと向かう。明日は土曜日だけれども休日出勤がすでに決まっている。
明日への活力を得るための趣味――恋愛シミュレーションゲームなのに、がっつり気力を持っていかれた。心に潤いが欲しい……。可愛いおんにゃの子ときゃっきゃうふふしたい。
冷え冷えとしたお風呂場へ一歩踏み出したところで、転がっていた石鹸を踏む。むにゅっとした感触を足裏に感じた瞬間、世界がぐるりと回った。後頭部に衝撃を感じ、痛みと共に目の前がちかちかする。だがすぐにそれも消え、私の視界と意識は闇へと落ちていった。
初めまして市屋です。
読むのは好きな小説ですが、書くのは初心者です。暖かい目で見守っていただければと思います。
少しでも楽しんでいただけたら幸いです。
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