第八話:無感動
「こ、ここまで、遠かった……!」
あれからは大変だった。まず、千段の階段を降りた時点で私は息切れを起こしていた。それから、枯れ井戸に行くまでにちょっとした雑木林を一つ抜けなければならなかった。
「ふう、ここが枯れ井戸ね。……へえ、井戸なのに階段があるんだ。思ってたより大きな井戸なのかな?」
そう思い階段を降りていく。薄暗い筈の井戸の中は光る苔で覆われていて、思ったよりも明るかった。
「……さて、スライムは何処に居るんだろう?」
井戸と言うだけ有って足元は水浸し、余り長時間居たくはないな~。そう思いながらも私はスライム探す。
「ブヨーン、ブヨヨーン!」
すると、水の中から何かブヨブヨしたモノが現れた! ……もしかして、これがスライム?
「良く分からないけど、黙ってやられるわけにはいかない!」
私はダガーナイフを構えて応戦した。実戦は初めてだけどやるしかない! 私は飛びかかってきたスライムにナイフを振るう。
「ブヨッ、ブヨヨーン!?」
シュッ、シュパーン! スライムはナイフに当たると呆気なく真っ二つになって水の中に落ちた。もう動く気配はない。
「え、思ったより弱い!? これなら、このクエストは楽勝だねっ!」
自信の付いた私は水の中から飛び出してきたスライム達をザクザクと倒していく。
「プルンッ、プルルンッ!」
「よし、これで二十体ね。アンナ・スラッシュ!!」
そして、私はとうとう二十体目のスライムを倒した。余りにも簡単だったので初めてのクエストなのに何の感動も感じなかったくらいだ。
「ふう、これでクエストは達成したし、あとは冒険者ギルドに向かうだけ。……ああ、また千段の階段を上らないといけないのか」
どうして、冒険者ギルドはあんな所に有るのだろうか。そんな事を思いながら歩く、帰りの林道だった。