第七話:異端職
『冷やかしに来た雑魚扱い』にはイラッときたけど、昼間から飲んだくれているダメな酔っ払いの言うことと思って聞き流すことにした。
「あの、お嬢ちゃんじゃあオークはおろかスライムだって倒せんだろう」
スライム……? 【名を奪われた神滅の英雄】には出てこなかったけど、それが一番弱いモンスターなのかな?
孤立無援で藁にもすがる状態だった私は湧いてきた閃きを信じて依頼書を探した。すると、すぐに【枯れ井戸のスライム二十体討伐:100G】という依頼が見つかった。
「あの~、すいません、この依頼を受けます」
『わかりました、ではこちらにサインをお願いします』
また、サインかあ……全然冒険者になった気がしないよ。
「これでいいですか?」
『はい、結構です。それでは【枯れ井戸のスライム二十体討伐:100G】の依頼を承りました』
無機質な声で依頼内容を確認する受付嬢。……うぅ、恥ずかしいから声に出さないで欲しい。私は不満の念を込めて受付嬢を睨んだが、彼女は何食わぬ顔で話を続ける。
『それと最近、教会から手配中の「しんえんのみこ」という異端職のものがこの辺りに潜伏しているそうなので気をつけてください』
異端職とは教会から異端指定された『職業』の事である。『邪教徒』とか『夢魔』とかなら聞いたことが有るけど、『深淵の巫女』というのは初耳だ。怪しい女性には警戒しよう。珍しく有益な情報をくれた受付嬢にお礼を言って枯れ井戸へ向かった。