第五話:夢の世界へ
怒りのボルテージMAXの私は、ただひたすら足を上げて降ろすという作業に徹した。
(考えるな、感じろ……ただ体を動かせ!)
そうして何かの悟りの境地に達し、心身共にボロボロの中、ようやく冒険者ギルドへと辿り着いた。
「ハアハア、やっとついた……」
こんな丘の上には不釣り合いなほど大きな建物に、少しビビりながらも息を整えていく。
冒険者ギルド、ここから私の冒険が始まるんだ……。
「……ご、ごめんください!」
『『………』』
中に入った私を待ち受けていたのは、人形のように美しくて無表情な受付嬢さんたち。……その視線が一斉にこちらに刺さった。
「ゴクン、あの冒険者登録がしたいのですが……」
無言の圧力に思わず息を呑みながらも、勇気を出して尋ねてみた。
『……ギルド登録の方ですか。ではこちらの書類に記入をお願いします』
すると、受付嬢さんの透き通るような声に記入を促された。……私は受け取った書類を見てみる。
──職業や戦闘経験なんかは分かるけど、視力や料理経験なんて記入欄も有るんだ……何かスゴイ!
『読み書きが出来ない場合は5Gで代筆も行っております。……また、書類に虚偽申告があった場合は除名処分となるのでご注意下さい』
「あ、はい……」
『それから、ここの空欄は……』
長々と連絡事項を一方的に伝えてくるだけの受付嬢さん、マニュアルでも有るの? ……お陰で私のテンションは盛り下がっていく一方だ。
『書類の確認が終わりました、これにて冒険者登録の手続きは終了です。ギルドカードをどうぞ……』
長大な説明攻撃を耐えきり、受付嬢さんから受け取った白色のカードには【アンナ:しょうにん】と書かれていた。……やっと、私は冒険者になれたんだ!
──これから、私の冒険が始まる……!
お読み戴きありがとうございます。不定期掲載ですが、この作品を切りの悪いところで投げ出すつもりはありません。