第1話 寝て起きたら異世界だった
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ちなみに、とある厨ではないです。
「は?」
目の前におっさんの顔がドアップで映し出され、そんな声が漏れる。
そして、周りを見わたすと、そこには薄暗い中世ヨーロッパ風の路地が目に入る。
(いやいやいやいや、絶対おかしいだろ。ついさっきまで、俺は自分のベットで寝てたはずだ。てか、このおっさん誰?)
少年__桐谷悠人は暇さえあれば寝ていて、面倒なことが嫌いであった。
そんな悠人にとって、いかつい顔をしたおっさんが絡んでくるというのは台風レベルの大災害だった。
「ああ?てめえどこから出てきやがった」
(それ聞きたいのは俺のほうだよ・・・まったく)
そう愚痴ると同時に俺は触らぬ神に祟りなしとばかりに逃げた。
(いったいなんだったんだよ・・・)
心の中で愚痴を吐きながら歩いていると、否が応でも現実を認識させられる。
「ここ・・・どこだよ・・・」
現実世界での俺は何のとりえもない平凡な中3だという自覚がある。
成績も運動も平凡で、学校に行ってゲームをして寝ることを繰り返しているだけの生活の中のどこにこんな非日常的な体験をする要素があったのかは分からないが・・・。
鎧を着たいかついおっさん、足早に歩くローブを着た男、見たこともない果物を値切っているおばあさん。
そして・・・魔法を使っている人。
(どうやら、ここが異世界だというのは確定らしいな)
魔法と聞いたら、大抵の人はワクワクするだろう。
だが、悠人にとってはそんなことよりも日々の安寧のほうが大事であった。
「てか、寝て起きたら異世界だったとか笑えなさすぎるだろ・・・」
テンプレだと、転生直後にヒロインがいてチート使ってがんばるとか、奴隷になってから成り上がりとかがある。
(けど、一番自由なこの環境がゆったり暮らしたい俺には一番合っている。ラッキーだ)
そもそも、異世界に来た時点でアンラッキーだという事実に悠人は気づいていないが、言わぬが花というものだろう。
「どうせ異世界に来たのならのんびり過ごしてやる」
(とりあえず、のんびりするためにやることをまとめないと・・・)
地球ではのんびりした暮らしが好きだったとはいえ、しないといけないことはきちんとしていた。
どちらかというと、勉強を必要最低限だけして後の時間はのんびりしている・・・といったところか。
この世界に来たからにはのんびりする生活は得られないといっていいだろうが。
(短期的目標は、金の確保、食べ物の確保、寝る場所の確保、のんびりする時間の確保で、長期的目標は、仕事を見つける、家を買ってのんびりする・・・くらいかな?)
そんなことを考えながらあてもなく歩いていると、いろいろな情報が手に入った。
例えば、この世界の平均年齢はかなり低い。
理由としては、太陽の位置から推測すると、ちょうど正午の時間帯なのに、50歳以上の人が全く見当たらないからだ。
もちろん、今が食事時だというのもあるがそれを差し引いてもいなさすぎる。(若く見えているわけでも無いだろう)
おそらくだが、この世界では中世ヨーロッパと同じく、大半の人が若いうちに死んでしまうのだろう。
そう考えて見ると日本は寿命では本当に恵まれている国だということが実感できる。
(大事なものは無くなった時にその尊さを実感するというのは本当だったんだな)
そんな考察をしてはいたものの、いつまでも適当に歩いていると日が暮れてしまうので、情報収集をすることにした。
(でも、無一文だから某アニメみたいに店主に追っ払われたりしないかな・・・そういう意味では、たまに見かける衛兵さんに聞いてみるか?
すこし観察しているとわかったが、衛兵さんは日本での警察に相当するようだ。
警備任務には、治安維持だけではなく、迷子や困っている人を助けるということも含まれているらしい。
実際に、子供に積極的に声をかける場面に何度も遭遇している。
字面だけ見ると、危ない人だが実際はそんなことない・・・よな?。
そんなどうでもいいことを考えていると、目の前を衛兵さんが通った。
「あ、すみません。ついさっき、田舎の村から来たんですが、道中で財布を落としてしまったみたいで、お金を稼ぐ手段とかあったら教えてもらえませんか?」
振り返った人は超絶美少女・・・なんていうことはなく、普通のおっさんだった。
「あー、田舎から一攫千金狙ってきたのか・・・。手っ取り早いのなら、冒険者になることだな。身分証明にもなるが危ない事もある。あとは、俺みたいに兵士になるのも一つの選択肢だな。おすすめはしないが、貴族に雇ってもらうとかかな・・・」
(この世界には奴隷があるのか。っていうか、今更だけど日本語通じるんだな。元々日本語をしゃべっているのか、転生特典みたいなので翻訳されてるのか。どっちなんだろ)
そんなことを頭の隅で考えながら答える。
「冒険者ってやっぱり剣を使えないとだめかな?」
「そんなことも知らないなんてよっぽど田舎から来たんだな。冒険者ってのはモンスターの討伐もするけど、ギルド内での雑用も仕事のうちさ」
(冒険者ギルドがあるってことはやっぱりモンスターもいるんだな)
「冒険者ギルドに入るにはどこに行けば良いんだ?」
「ああ、その道をずっと行けばいいよ。死なないように頑張れよハハハ」
「頑張るよ、じゃあ」
そう言い、衛兵と別れる。
言われた方向にしばらく歩くと、冒険者ギルドと看板に書いてある建物が目に入る。
(やっぱり、冒険者ギルドって異世界にはあるもんなんだな。やっぱり金稼ぎには冒険者ギルドがテンプレだよな。この世界での身分証明書みたいなのが要らないといいなー)
とりあえず、悠人がドアを開けると、そこには田舎の市役所とどこか似ている光景があった。
受付が奥にあり、右手には待つときに座るための椅子がある。
左手には、依頼の書かれた紙が掲示板にたくさん張り付けられていて、おそらくそれを受付に持っていくシステムなのだろう。
冒険者ギルド特有の荒っぽい感じは全くなく、 むしろホテルのロビーに雰囲気が近い。
おそらくだが、モンスターを退治するだけでなく雑用もするから、気性の荒い人が少ないのだろう。
行動しないと始まらないので、とりあえず受付に行くと、お約束のお姉さんがいた。
やはりお昼時は冒険者の数も少ないようで、5つ窓口があるうちの2つしか受付をしていない。
(やっぱりどこの世界でも受け付けの人はお姉さんだよな)
色気たっぷりの服装・・・というわけではなく、ギルド職員の制服と思われる質素な赤色のローブを着ていた。
「すみません。冒険者登録をしたいのですが、どうすればいいですか?」
そう言うと、受付嬢は登録用紙を机の下から出して、説明を始める。
(よかった日本語で書かれている。登録料とか必要だったらまずいな。最近、考えなしに行動しすぎだろ、俺)
「はい。お名前と生年月日と性別をここに記入してください。代筆が必要ですか?」
「いえ、大丈夫です」
(やばい名前考えてない・・・まあユウリスでいいか)
「では、記入している間に説明をさせてもらいますね」
受付嬢からの話をまとめると、
1、ギルドのランクはFからSまである
2、犯罪等をするとギルド会員の権利が剥奪される
3、掲示板から依頼を受け付けに持ってくることで依頼を受注したことになる
4、いくつでも依頼は受けられるが期限を過ぎた場合は違約金を支払わないといけない
5、モンスターの中にある魔石や特定のものを取ってきた場合、ギルドが買い取りをする
6、ギルド長はギルド会員全員に強制依頼をすることができ、依頼失敗してもペナルティはないが、もし強制依頼を受けない場合はランクが一つ下がる
らしい。
「これが、冒険者証明書です。なくした場合は再発行に手数料が必要なのでなくさないでください」
(登録にお金が必要じゃなくてよかった)
内心でほっとため息をつきながら礼を言う。
「ありがとう」
掲示板を見るとまさに雑用の依頼がたくさん貼られていた。
モンスターの討伐依頼が見当たらないのは、おそらく朝のうちにすでに取られてしまったのだろう。
掃除、ゴキブリの退治、ごみ拾い、迷子の猫を探す、農作業の手伝い、不倫調査、建築の手伝い、話し相手・・・etc.
(前のほうはともかく建築の手伝いとか本職のほうが絶対いいだろ...)
そして、お金の単位はgoらしい。
報酬の欄に10000goや300goとか書かれている。
1goにどれくらいの価値があるのかはわからないが、とりあえず、掃除(報酬:5000go)を受けることにした。
次回、鍛冶屋(仮題)
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