お弁当
「ひだまり童話館」のお題『にょきにょきな話』参加作品です。
私は小学校六年生。私立の小学校に通ってるの。家から遠いから電車で通ってる。毎日満員電車だから大変。みんな大人だから、小さい私はいつも押し潰されてる。
それでも学校は楽しい。だから毎日満員電車でも我慢してるの。
今日もいつもの時間に家を出て駅へ向かった。いつもの時間のいつもの電車。
はあ、今日も満員だなぁ。
私はホームに並んで電車に乗る。乗るときには、後ろから押されて大変。
そして私が降りる駅に着いた。そこでは結構な人が降りる。私はみんなの後ろから慌てて降りた。そして乗ってくる人とすれ違う。が、いつもとは違った。私のお弁当が入った手提げ袋が電車に乗ってくる人のかばんに引っ掛かり、手提げ袋だけが電車の奥へと行ってしまった。
「お弁当……!」
私の口から思わず言葉が漏れた。そのときだった。
にょき
電車の中程から、手が上に突き出てきた。その手には、私のお弁当の入った手提げ袋があった。
にょき
にょき
にょき
電車の中程から入り口まで、人の手が次々と上へ伸びていく。そして私のお弁当の入った手提げ袋が、バケツリレーのように人の手から手へと渡り、私のところまでやって来た。私は嬉しくて叫んでしまった。
「ありがとうございました!!」
プシュー
私がお弁当の入った手提げ袋を受けとると同時に、電車の扉は閉まり発車していく。私は感謝の気持ちとともに、電車を見送った。
イラストはフリー素材のものです。