自動歩兵
「クックックッ。まさかこんなところで会うとはなぁ…」
病室を出てしばらく鳴り続いていたブザーの音だったが、それも看護師が駆けつけてきたと同時に鳴りやんだ。
「何だ、また出たのか」
「は、はい…」
駆けつけた看護師は、申し訳なさそうに返事をした。
「す、すみません…今いる看護師だけでは戦力にならず…」
「ここには最先端技術を駆使した武器が揃ってるんだ。敵わない相手ではないだろう?」
そう言うや否や、すぐ袖の隠しスペースに立て掛けてあった銃器を取り出す。
廊下の先を右に曲がった先ーーそこにそれはいた。
「運が良かったな。ここは入院棟ではないんでな。少々派手にぶっ放しても誰も文句は言うまい」
ーー自動歩兵。
自律型自動歩兵ともいう。
最近それらの自我が崩壊する現象がたびたび街中で起きていた。
ただ事件という事件にはならず、事が大きくなる前にはほとんど処理が出来ていた。
この世界の技術力を以ってすれば、自動歩兵を仕留めるなどいとも容易い事だ。
だがここ数ヶ月は街の中では収まらず、こうして建物の中に進入してくることも珍しくはなくなってきたが、やはり多少なりとも被害はこうむる。
せめて外で収めて欲しいものだ。
「さて、今日は二体か」
構えた銃器砲は、まっすぐに自動歩兵へと向けられていた。
「君はこの後始末の用意と、事後報告の準備を」
「はい…!」
看護師をその場から遠ざけると、彼は含みを持った笑みを浮かべた。
「今日の俺はすこぶる機嫌がいいんでなぁ。一発で仕留めてやるよ!」
言い終わると同時に爆音が響いた。
建物の構造がいいのか、数枚のガラスと壁のひび、天井からの砂埃が落ちてきたくらいで済んだのは、やはりこの世界の技術力の賜物か。
あとに残ったのは自動歩兵ーーだったものの残骸。
黒い煙を上げて、既にただの機械の成れの果てと化していた。
「ふぅ…」
タバコをふかすように息を吐くと、銃器を肩に背負い、彼はその場から立ち去った。