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夢見
夢を見ていた。
長い、長い夢。
いろんな夢を見た。
真っ黒な夢と、真っ白な夢。
真っ黒な夢には人がたくさん出てきて、たくさん戦ってた。
血もたくさん流れた。
仲間も次々と死んでいった。
ーー嫌。
それでも戦いは止まない。
ドクンッ。
心臓が高鳴る。
戦いを、楽しんでた。
ーー嫌。
剣に突き刺さる肉の感触。
そこから噴き出る血の香り。
まだほんのちょっと前まで人間だった、自我があった者の動かなくなった死体。
眼球が滑り落ち、舌を切られた者もいる。
四肢がなくなってる者さえいた。
「まだまだぁっ!!!」
少女は走る。
その手に長剣を携えて。
ーー嫌。
迷いはない。
否。
迷いがあってはならないのだ。
この世界の為にーー
真っ白な夢は至って平和だった。
いい年頃の男女が、毎日穏やかに暮らしていた。
何の変哲もない日々。
笑顔が絶えない、幸せな男女。
「約束な?」
「ええ、約束よ」
そう言って、二人は互いの小指を絡めて契りを交わす。
だが、その二人の間には何か不自然なものが立ち込めていた。
何かはわからない。
ただそれが不気味であることに、誰も気付いてはいなかったーー