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願い
声が、聴こえる。
「頼んだぞ、ラディ」
声の主はどっしりとした男性。
髭をたくわえ、眼つきは鋭い。
「ワシらの運命は、お前に掛かってるんだぞ?」
力強く、彼は言う。
「奴を倒せるのはお前しかいない」
声色が変わった。
明らかな動揺と、そしてーー
「まだ成熟しきっとらんお前には酷な事かもしれんが…」
恐怖。
声だけで感情があらわになるのも珍しい。
それほど追い詰められているのか。
「このままでは…このままでは…っ!」
ダンッ、と地に膝を着き、両手も地面に落とす。
「あいつは…奴は、あのーー」
声が、途切れた。
ラディと呼ばれた少女は、背中に剣を携え、そしてニッコリと微笑んだ。
「行ってきます」