表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
セカンダリィ・ワールド RMT  作者: 鏑木カヅキ
グランドクエスト編
21/105

第十九話 デジャブ?

 店内に入ると、レベッカが出迎えてくれた。


「いらっしゃいませぇ!」

「ども」

「あら、リハツさんじゃないですかぁ。今日はどうしたんですか? 研ぎですか? 出来ればそろそろ商品を買ってくれるとありがたいんですが、それにその服、そろそろ交換してもいいんじゃないですかねぇ」

「入店からのマシンガントークはやめてください」

「あら? うーん……」


 俺を見て、思案顔をするレベッカ。スタイルが良い上に、容姿も端麗だから絵になる。そして胸は大きい。


 なんだろうか、今の状況になんとなく既視感を覚えてしまう。


「なんですか?」

「いえ、あら? お連れの方は?」

「申し遅れた。私はサクヤ・カムクラ。ラーメンが好きだ」

「ということはその名前は!」

「しっ! それ以上言ってはならん。大人の事情があるからな」

「そうですね。私もそれくらいは理解していますよぉ」


 俺は二人の微妙なやり取りを無視して、店内を見回った。前もって幾つか狙っていた装備がある。まだ売れてはいないようだ。


「防具はこっちのリエムル装備一式と、武器はカーディナルナイフを」

「はいはい、ありがとうございます」


 棚に並べられている防具と武器を手に取ると、レベッカは受付へと回った。


「今装備しているものはどうします?」

「ハンティングナイフは一応持っておきます。防具はいりません」

「はいはい、じゃあ買取しますね。えーと、買い取り分を引いて、84000ゼンカですねぇ。おお、結構しますねぇ」


 レベッカに取り合わずに会計を済ませた。

 一週間貯蓄していたし、これくらい安いものだ。


「あら、きっちりお金貯めてたんですね」

「ずっと納品クエストしていたからな。イエロースライムジェルの、な?」

「……ああ」


 やっぱりこいつ根に持ってやがる。


 別に気を許すつもりはない。ただ寝首をかかれることのないようにするだけだ。PKエリアじゃなければいいが、もし『黒魔女の森』ではPK出来るのなら受けて立つだけ。パーティーメンバーを攻撃は出来ないが、自ら離脱した後に殺すことは出来る。


 購入すると同時に、俺は薄着になった。


 うん。下着姿とかじゃなくてよかったな。別に見られても困りはしないけど

 受け取った防具と武器を思考操作で所持品に入れ、早速装備した。

 

 装備  

 ・右手     カーディナルナイフ(耐久度50/50)

 ・左手     なし

 ・頭      リエムルヘルム

 ・体      リエムルメイル

 ・腕      リエムルアーム

 ・脚      リエムルタイツ

 ・足      リエムルブーツ

 ・アクセサリー なし


 ステータス  

 ・HP  493→882

 ・MP  20→28

 

 能力値 

 ・STR 24→30

 ・VIT 18→35

 ・MND 4→6

 ・INT 3

 ・DEX 16→20

 ・AGI 21→25

 

 こんなものか。結構上がったな。


 しかしこの装備。見た感じ細めだったけど、体格に合わせてサイズが変わるようだ。防具はずっと初期装備だったから少しは不安だったけど、問題はないらしい。


 リエムル装備はリエムル鉱という一般的な鉱石を使っている。青鉄とも言われ、鉄を薄ら青くした見た目をしており、結構お洒落だ。


 軽鎧に相当し、かなり軽い。覆っている部分は胸と腹、肘、甲と腕、太ももとふくらはぎから下といった感じだ。悪くない。


 ただ見た目は似合ってはいないだろう。正直、今はどうでもいいと思っているけど。


「似合ってますねぇ」

「お世辞はいいです。それじゃ。行くぞ」

「あ、ああ」


 次は道具屋で回復アイテムを買わないといけない。面倒だが、念のためだ。失敗してまたメリアの村に行くのは勘弁願いたいからな。


「あのぉ」


 店を出ようとした時、レベッカから呼び止められた。


「なんですか?」

「あ、いえ、なんでも」

「……そうですか」


 意味がわからん。

 気のせいか既視感がある。なんだこれ、今日はなんなんだ?


 イヤな予感しかしない。とにかくここからおさらばしよう。


「あ、あのですね」

「だからなんなんですか!」

「いえ、うーん。そうですねぇ。よし! 私も一緒に行っていいです?」

「はぁ? あんたなに言ってるんだ?」


 ん? おかしいな。これはやはり見たことがある光景なような気が。


「ダメですかねぇ? こう見えて、戦闘職はほとんどやってこなかったので、スキル値はほとんど変わらないと思うんですがぁ」

「……おい、なんか見たことがある展開な気がするんだが」

「ふむ。奇遇だな私もだ」

「で、どうですかねぇ?」

「はぁ、好きにしたらいい」

「ありがとうございますぅ! じゃあ、準備して来るのでしばしお待ちを!」


 シュビッと手を上げて、颯爽と奥へと引っ込むレベッカ。

 そして俺は嘆息する。なんなんだ、これは。どうなってるんだ。


「ふむ、察するに女店主とそれなりの付き合いがあるようだな」

「あ? ああ、どうだろうな。一週間くらい? 毎日来てるような」

「そうか。それでは一緒か」

「なにがだ?」

「いやなに、こっちのことだ」


 そうして数分待たされた。


 俺は早急にこのクエストを終わらせたいのに、なんの因果でパーティーを組むことになったんだ。


 しかしサクヤと組んだ手前、レベッカの誘いを断るのは気が進まなかった。言い方は悪いが、仲間外れにしたような感じがある。俺が一人だったら、断っていただろうが。


 発端はサクヤだ。反骨精神というか反発心というか、誘いを受けた時、妙に好戦的になってしまった。あれがいけなかった。


 後悔先に立たずだ。もう後には退けそうにない。


「おっまたせしましたぁ!」


 ガシャガシャと金属音を鳴らしながら現れた鉄の塊に、俺とサクヤは呆気に取られてしまう。


「なんだこれは」

「フルプレートよぉ! いやあ、実は、タンクをしようしようと思っていたんだけどぉ、希望の防具が出来なくてぇ。最近やっと完成したのよぉ、それで試したいとうずうずしてたってわけぇ。でも、タンクの経験はほぼないけどね!」


 レベッカのステータスを見てみた。


 レベッカ・タブリス。ジョブは、重鎧戦士か。

 武器は斧。これは重厚感にロマンを抱いているということなんだろうか。


 いつの間にか口調が変わっているし……俺もか。


「さて行きましょう! MOBをぶっ殺してやりましょうね!」

「あ、うん。行こうか」

「う、うむ。そうだな」


 俺達は店を出た。


「ちょっと待ってねぇ。戸締り戸締りっと」


 無骨な鎧を身に纏い、家の鍵をしっかり締める。


 なんだろうな。後ろから見るとマスコット的に見えなくもない。


 あれだな。多分鎧が角ばっているわけじゃなくて、曲線を描いてずんぐりむっくりしている感じだからだろう。


「ささ、お待たせしたわねぇ。行きましょう!」

「なんかテンション高いな」

「血がたぎるわぁ。実は私、戦闘好きなのよぉ。でも装備が中々完成しなくて、仕方なく毎日毎日鉄を叩き、研ぎ、商売をして、という生活をしていたのよねぇ」

「……深く追求しないでおこう」

「私もそれがいいと思う」


 そうして俺達は次の目的地、道具屋へと向かった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ