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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

No.-

No.4 ちょっきん

作者: 夜行 千尋

出されたお題を元に、一週間で書き上げてみよう企画第四弾!

今回のお題は「雨」「牛」「里帰り」


6/13 お題発表

6/16 早々にプロットを造り油断する

6/17 軽く体調を崩すが余裕の構え

6/18 さすがに焦り軽く書くが途中で休む

6/19 急激な予定の建込みで執筆が23:00スタートとかいう阿呆な事態に

6/20 遅刻の投稿 更に投稿後修正 白上族とかいう誤字を発見、修正


すみません。まさかの遅刻という……ウボァ……

 その日、僕は久々の里帰りをする予定だった。

 電車に揺られ、人気のないホームで電車を待ちの約6時間。田舎も田舎に僕の実家はある。わざわざ帰るのは、家族の不幸、とかじゃない。いうなれば気まぐれだ。ゲーム作成の仕事は、一度大山を当てるとクールタイムも大きい。もちろん、この後続編だの番外編だので、一日会社に箱詰めの“いつも”が始まる。勘違いしないでほしいのは、僕はこの仕事が好きだ。この仕事に就くために、田舎を飛び出したのだから……


 で、こんな前置きを置くのには理由がある。僕がなんとか田舎に帰ろうとしていたのだと、自分で再確認しているからだ。では、そう確認せざるを得ない環境になっている今とはどんな状態なのか……。


 一度しか言わないので、心してほしい。というか、我ながらこれが幻覚や夢なら最低だ。いや、最高にぶっ飛んだ夢だ。


 かなり可愛い幼女がさっきまでかぶってた牛の被り物を脱いで僕の上に跨ってきて自分と僕の服を脱がしている。




……きっとこれ、頭打ったんじゃないか? でなきゃ死ぬ五秒前とか




 ちなみに、僕は幼女趣味じゃない。だが、こういう経験がない男性なら、このシュチュエーションを断れないのは言わずもがな。僕は……どうすればいいんだろう?



 振り返ってみると、事は里帰りの最中の電車の中でおきた。電車に揺られ続けて半分以上が過ぎたころだったと思う。窓際の席で外を眺めながら頬杖をついていた。窓の外はかすかな小雨、暗くなって窓に見飽きた顔が映り込む。その顔をみて何の気なしにため息をついた。その時。


「もし……?」


 向かいの席から声をかけられた。


「うわっ!」


 声の方向を見るなり僕は驚いた。なにせ、そこには牛の頭がいつの間にか有ったからだ。何時からそこに有ったのか分からない。そもそもこんな大きなものが置かれたら、置かれる瞬間に気づけるはずだ。


「なんですか、その反応は。失礼ですね」


 牛の置物……いや、よく見ると、デカい牛の頭の下から微かに小さな体が見える。人だ。しかも幼女だ。そしてそのくせ……布の面積が極端に少ない!


「え?」


 僕は何処から出ているか分からない声が喉から出た。その声を目の前の牛の被り物がくすくすと笑う。


「おかしな人ですね。何を考えておいでなのです?」


 上品な喋り方で喋るその牛の頭に、僕は話しかけた。


「き、君、何時からそこに? というか、その被り物って……?」

「ああ、よかった。ちゃんと私の声が聞こえているのですね」


 牛の被り物は続けて喋る。


「自己紹介が遅れました。私は『牛頭』と申します。地獄の獄卒をしております」

「じ、地獄?」


 なにやら不穏な言葉に僕はぞくりとした。


「この度はあなた様に会いに来たのです」

「僕に? な、なんでだい?」

「……あなたが地獄への電車に乗られておられるからです」

「は?」


 僕は咄嗟に立ち上がってあたりを見回した。電車の中には客はいなかった。正しくは、人間のお客は一人もいなかった。一つ目の背の低い者、河童の外見をしている者、犬の頭をした者、体が半透明に透けている者、そもそも人の形すらしていない者……。

 皆一様に宴会風景であり、前の車両からは車内販売のカートを押して墨の様な肌をした者が駅弁らしきものを販売している。酒も飲んでいるのか、非常に陽気な光景だ。ただ、そこに人間らしさを感じないだけで……


「な、なんだ? 何が有った? なんで、なんでこんな!?」


 目の前の光景を受け入れられない僕に対し、牛頭は言った。


「あなたはずいぶんと地獄に近い位置に参られてしまったのです。いえ、それだけなら誰でもあり得ること。しかし、此度あなたは地獄への電車に……迷い込んでしまいました」

「ええ!? こ、困るよ、なんで地獄なんか……まだ死にたくないんだけど!」


 そういうと牛頭はハッとしたような動きをして言った。


「それは困りましたわね。まだ死にたくないのに地獄への電車に乗ってしまったなんて……」


 少し牛頭は考えるようにして、その後立ち上がった。立ち上がったが……流石幼女、小さい。大きな頭の被り物を加えてもその大きさは僕の首までほどだった。むしろ、いったいどうやってこんな大きな被り物を被っているのだろうと疑問になるほどだ。


「……では、手っ取り早くあなたを変えてしまいましょう」

「変える? いったいどういう……」


 僕の質問を他所に、牛頭は頭の被り物を座席に置いた。現れた顔は……可愛い! 小さく整った目、高すぎず低すぎない鼻、かすかに膨らんだ唇、サラサラの髪、出るところがほんのりとしか出ていない小さな体、その体に巻かれたかなり面積の少ない布の上に微かに乗るぷにぷにスベスベの柔肌……ちなみに、僕は小児性愛者じゃない、決して違う!


「可愛い……」


 僕は思わず口走っていた。それを聞いて、牛頭が照れくさそうに言う。


「こうなってしまったのは、あなた方人間のせいですよ。あなた方が『妖怪でも萌え幼女化』とかなんとか言って、私の姿をこんなのに想像したせいで、今の私はこんな姿になってしまったんですもの」


 万歳日本のオタク文化! ごめんなさい! 僕もその手の幼女化仕事でやった!

 そんなことを考えている僕を見て微笑む美少女、牛頭は更に身にまとっている布の面積を脱ぎ始めた。僕は何が起きているのか分からず、思わず声を上げた。あたりの客(人外)を見たが、誰一人この状況を気にもせず、見ても目の前を羽虫が通った程度の反応しかしていない。まるで僕だけがおかしいかのような……


「さ、あなたもお脱ぎください」

「え? え? ど、どどどどどどど、どうい、どういうこ、ここと?」


 僕は全然落ち着かない自分が居ることに驚いた。それに対し、牛頭は頬を軽く赤らめて言う。


「どうって、貞操を失えば、手っ取り早くあなたを変えられるじゃないですか」


 そう笑顔でいう牛頭に対し、僕は自分にもそう言い聞かせたが、手が震えて自分の服を脱ぐことすらできない。それどころか足が震え、僕は電車の揺れで足を滑らせて椅子にもたれこんでしまった。その様子を牛頭は笑いながら見て、僕の上にまたがり、僕の服を優しく脱がせてくる。シャツをまくり、チノパンのホックを外して脱がしてくる。


 そして、ここで冒頭に戻る。

 あえて言うまでもないが、僕は……童貞だ。まさかこんな形で卒業するなんて、しかも相手がこんな美形のロリだなんて。いやいや紳士たるもの幼女に手を出すのは……いや、妖怪だし良いのか?

いやいやいや、お、落ち着け、落ち着くんだ、相手の言ってたことを思い出してみよう。

『貞操を失えば、手っ取り早くあなたを変えられるじゃないですか』

 ん? 失う? そら失うよな。僕のチャリ―を失うだけじゃないか…… 失う?


 牛頭は僕の下着に手をかけ脱がしてくる。


「あら、大きい」


牛頭がそういうのが恥ずかしくて僕は目を背けた。目を背けた直後、なにかヒヤリとする感覚……? それを肌で感じ、僕は思わず牛頭の方を見た。



 すると、そこには鬼の形相をした幼女らしき人型のそれが、冷たい鉄の鋏で、僕の“息子”を切ろうとしているところだった。



 僕は思わず叫んだ。叫んでその場から抜け出そうとする。だが牛頭が重い、動けない。冷たい。押しのけようとするが牛頭は動かない。冷たい。殴っても押しても岩のように重くビクともしない。冷たい。痛い。鋏を閉めようとする手を抑えようとするが変化がない。痛い。痛い。先ほどまでの姿と打って変わって、牛頭はひび割れた木材の様な顔をしている。節目がそのまま目になったような形相で、笑いながら僕の血を浴びる。痛い。痛い。切れる! 助けて!



 そしてそれは突然来た。僕の上にまだがるそれが、真横になぎ倒された。そして、僕の手を誰かが引いて走っていく、その周りでさっきまで宴会気分だった人ならざる者たちが一斉に声を荒げて僕らの後を追ってくる。僕の手を引くのは、死人が着るような白装束を着た者だった。そしてその人物に手を引かれるまま、僕は走った。


「なんだ、何が、どうなってる!?」


 ついていけない僕を置いてきぼりに、僕の手を引く人物は追手たちからある程度距離を取った時唐突に立ち止まり、電車横の出入り口をこじ開け、僕の手を引っぱって車外に飛び降りた。僕は咄嗟に手を伸ばして電車に残ろうとしたが、そのまま引っ張られ、電車の外へと投げ出されてしまった。目の前には、あたり一面水面が広がっていた。


 僕は水の中に投げ出され、水面を探した。かなり深い。どこまでも深い青色が遠くまで色づいている。とりあえず、少し明るい方へ泳いでみる。これでも水泳は出来る方だ。そして難なく水面に顔をだし、胸いっぱいに息を吸う。

 あたりは地平線まで水面で、その水面の上に橋が架かっており、遠くに走り去る電車見える。陸はないのだろうか? そもそも、ここは何処なのだろう? まさか……地獄なのだろうか?

 そんなことを考えている僕の元へ、先ほどの白装束らしい人物が泳いでくる。


「無事かい? 苦労してた様じゃないか」


 気さくに話しかけてくるこの人、体系や声からして女性のようだ。この女性にどこか僕は見覚えが有った。でも誰だか思い出せない。その白装束の人物に僕は疲れ気味に答えた。


「ええ、なんとか……あの、岸とか無いんですか?」


 その女性は笑いながら答えた。


「面白いことを言うな、君は。岸はあるはずないだろう? ここは三途の川だ。その……中間もいかないな。地獄への道半ばといったところだ」

「あ、やっぱ……地獄なんですね」


 僕は落ち込みを隠せなかった。


「そう気にするな。君も亡者なのだろう?」


 そういってにんまりとする女性に僕は声のトーンを落としながら言った。


「いえ、どうやら迷い込んだみたいで……」

「迷い込んだ? ……ははぁん、なるほど」


 それだけ言うと、すこし待っていろと良い彼女は何処かへ泳いで行ってしまった。僕は一人、足のつかない三途の川で立ち泳ぎをしている。なんでこんなことになったんだろう。下心が悪かったのか、実家になかなか帰らないことが原因なのか、それとも仕事で疲れているのか……でも夢なんかじゃなく、確かに痛かった……恐ろしかった……。


 そんなことを考えている僕の後頭部に、何か固い物が音を立ててぶつかる。


「あ、船頭さん、それだよそれ。乗せてやってよ」


 僕は後頭部をさすりながら後ろを振り返った。すると目の前には木の船があり、その船の上には、よくある死神のイメージそのものである黒ローブの骸骨が手に櫂を持っている。そして、その横には先ほどの白装束の女性が居る。


「大丈夫か?」


 そういってじょせいは手を伸ばしてくる。僕はその手を取っり黒ローブ骸骨に引き上げてもらいながら船に乗ろうとしたが……


「あ! ま、待って! 待ってください!」


 時すでに遅し……。僕は下半身裸のまま、船の上に引き上げられた。その様を見た女性は無残にも一言。しかも笑いながら。


「小さっ」






 僕は事情を一から十説明して黒ローブ骸骨から予備のローブを分けてもらった。僕の話を黒ローブ骸骨は無言で聞き、女性は相槌を打ちながら聞いてくれた。

 よく見ると、女性の服は世に言う“死に装束”だと気付いた。そうか、この女性は無くなってるのか。


「なるほどな。お前さん、招かれたんだよ」

「招かれた?」

「ああ、迷い込んだんじゃない。招かれたんだ。良い餌としてな」


 よくあることなのだそうだ。地獄の獄卒や妖怪たちは、時折人間を神隠しして、その肉を食らう。死んだつもりもないのに地獄行きの電車に乗っているのがその証拠らしい。

 死者はゆっくりと時間をかけて、この彼岸への川を渡っていく。10年20年、彼女はかれこれ50年以上は川を渡っているらしい。だが、ここはまだ現世に近い場所なんだとか……気の遠くなる話だと思った。

 ちなみに、三途の川に架かっている橋を通る電車は獄卒や妖怪のための物らしい。死者が乗ることはめったになく、有ったならその者はずいぶん“御布施”を積んだのだろうとのことだ。


「あれ? じゃあ、なんで電車の中に居たんです?」


 僕は彼女に聞いてみた。彼女は軽く微笑みながら、優しい目をして僕を見て言った。


「さあ、なんでだろうな……」


 僕は、なんとなく、彼女の顔をどこで見たのか思い出せた。母だ。母の若いころにそっくりだ。もっと言うとアルバムの中で見たことがある顔だ。


「……僕が血縁者だから助けに来れたんですか?」


 彼女は少し黙ってから答えた。


「さあね。年代から言って、姉さんの孫ってとこだろう? 時がたつのは早いもんだね……」


 そういって、彼女はしみじみとしていた。そうだ。母型の祖母、その双子の妹さんだ。若いころに亡くなったと聞いてはいたけれど……。



 僕は何を話しかけていいか分からず、彼女も僕に話しかけては来なかった。僕らは何も会話せず、現世への岸、此岸へとたどり着いた。


「あ、あの……」


 僕は何を言うべきか、まだ分からなかった。分からなかったから、思ったことを口にした。


「祖母は元気です。今年で74になります。いまだ医者いらずで、母より体力が有ります。困った時はいっつも、双子の妹さんならどうするか考えてるって、そういってます」


 黒ローブの骸骨は櫂で岸を押し、また水面へと漕ぎ出していく。


「そうか。それはよかった」


 彼女は、いままで見た中で一番の笑顔のまま、遠くへ船で運ばれていった。僕はそれを見届けてから、川に背を向けて歩いていった。







「……さん、お客さん……」


 僕を誰かがゆすり起こす感覚で目が覚める。どうやら眠っていたらしい。


「お客さん。切符、よろしいですか?」

「え、ああ、はい」


 僕はポケットを探ろうとして、自分が穿いているのがズボンじゃなく黒い布で有ることに気づいた。そして、さっきまで見ていた夢の内容、いや、夢のような出来事の内容を思い出した。なるほど、これじゃ不審者と思われて仕方ない。

 僕はあたりを見回したが、どうやら無いのはズボンだけだと分かった。きっと神隠しには鞄は持っていかれなかったんだろう。運が良かった。僕は鞄の中から財布を取り出し、改めて切符代を払った。


 外は土砂降りになっていた。この雨だと家までかなり濡れるだろうと考えていた、その時。





 左耳のすぐ傍で鋏の空を切る音が聞こえた。


「逃がさない」


ねぇねぇ

エロだと思った? 

ねぇねぇ

エロだと思った?

ねぇねぇねぇねぇ

(´∀` )


残念★パイプカットの危機でした(笑)


一応切れきってはない設定です


はい

最初っからこの予定でした。ちなみにもうちょいボリュームを増やすなら牛頭に主人公が恐怖した結果、

牛頭がゴリゴリマッチョの怪物になって追っかけてくるとか

主人公が「もしかして帰れないんじゃないか」と想像したら此岸の入口が遠のいて、

背後から鋏を持った牛頭がダッシュで追いかけてくる、なんて有りましたが

急にB級ホラー色が強くなるのでやめました。


なぜ牛頭が幼女化しているのかは

妖怪=人のイメージ という考えがワタクシにあるからです

なので別案では牛頭をイメージの力で無力化案も有りました

無論却下しました


ここまでお読みいただきありがとうございました

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