少女と別れ
どれくらい少女に寄り添っていただろうか。日は沈んでないので2時間ぐらいだろう。
ここで問題が発生した。息が続かなくなり、苦しくなった。
少女から離れたくはなかったが命には代えられないので海に飛び込んだ。
すぐに息苦しさはなくなったので、人魚は水中でしか呼吸出来ずに、2時間ぐらい息を止めることが出来るのだろう。
そんなことよりもこれからどうするかだ。
人間の食事は人魚と違うから用意出来ない。魚を捕まえてくることは出来るが、さすがに生のまま食べさせるわけにもいかない。
食料に不安があるし、俺もずっと付き添うわけにはいかない。この問題をどう解決するかな。
食料は船に積んである可能性があるが、おそらく調理はされてないのでどうするか。まぁ魚を生で食べさせるよりマシだと期待したい。
少女はいつの間にか泣き疲れて眠っているようなので船を漁ることにした。
結果からいうと食料は見つかった。しかし、長期保存出来るものが少量あるだけだった。オカマと少女の分と考えると一日持ちそうにない量だ。
とりあえずすぐに取り出せるようにしておく。
さらに船の中を漁ってみるがたいしたものは出て来なかった。何故ここに来たのかどこへ向かっていたのかもわからない。
これからどうするか。少女を陸地に送り届けたいが陸がどこにあるかわからない。さらに船を動かすことも出来ない。
小型のボートかイカダぐらいなら押せると思うがそんなものない。
誰か他の人魚を頼りたいが俺はサメから逃げるのに夢中だったので、村からどのくらい離れた位置にいるかわからない。村の方向なら漠然とわかるのだが。
まさに八方塞がりだ。二人で海に出るなんて船のタイプ的に考えづらいから仲間がいるかも知れない。でも合流出来るのか?
さらにいえば少女以外の人間に出来るだけ見つかりたくない。人魚が一般的な種族でなかったら捕まる恐れもある。
これ以上考えても無駄そうだな。全てなるようにしかならないさ。
とりあえず現状を維持することにした。
そして日が沈み夜が来た。
少女はあれからずっと眠っている。ときどきうなされるようで、そっと頭を撫でてあげると安心した顔になる。
このままそばにいたいが俺も眠くなってきた。体は子供なので睡魔には抗えない。
でも、ここが安全だとは言いきれないから安心して眠ることも出来ない。外でも息が続けばこんな心配しなくていいのに。
樽があるから水を汲んで寝るか? でも海水入りの樽を船にあげれる気がしない。
仕方がない、危険覚悟でそこら辺で普通に寝るか。
俺は海に飛び込み良さそうな岩場を見つけ眠りに落ちるのだった。
朝が来た。俺は早速少女の元へ向かった。
船の上では少女が食事をとっていた。食事をするぐらいには元気になっているようだ。
少女が俺に気づくとトテトテと近づいてくる。手に持った食べ物をこちらに渡そうとしてくる。気持ちは嬉しいが人魚はそんなもの食べません。
言葉が通じないので身振り手振りで伝えようとするが通じない。困った。
仕方がないので食べることにした。結論からいうと食べることは出来た。しかし、腹の調子がおかしくなった。気持ち悪い。
海に戻り適当に泳ぐとすぐに調子が戻ったので船に戻る。
そしてそのまま少女と気が向くまま遊んだ。子供は言葉が通じなくても遊べるというのは本当だったようだ。
そんな感じで昼ごろになったと思う。遠くに船が見えた。
少女と隠れて様子を見ていたが、船上の人が見えるぐらいで少女が飛び出した。どうやら知り合いらしい。
俺は海に入り様子を見ることにした。少女とオカマの死体は回収され来た船に乗った。
少女が船乗りに何かをいっている。俺のことだろうか?
顔を出す気はないので黙って見ている。そのうち少女は納得したのか、船乗りから離れて船の中に入っていった。
そうして船は遠ざかって行き、俺は船影が見えなくなるまでその場にいるのだった。
さて、村に帰ろうか。