チート発覚! その二
「で、何でこんなことになったんだ? シンゴが何かしたんだろ?」
「あぁ。隠しステータスの項目をいじった」
「隠しステータス?」
シンゴは、[鑑定]を使う代わりにギルドカードのステータスを表示させ、フィーナとタマに説明した。すると、フィーナは何か思うところがあるようで、黙り込んでしまった。
「タマたちにも使ったにゃ?」
「いや! 使ってねーよ! 今始めて使ったんだって」
「じゃ、じゃあ! タマはなんで昨日会ったばかりなのに……」
「なんだ?」
(まさか俺に惚れたとか? ……ないなーそんなきっかけどこにもなかったもんなー)
ちなみに、シンゴの隠しステータスの魅力は91だ。これは、少しの間行動を共にするだけで異性、同姓にかかわらず惚れられてしまう数値だ。追加で補足するとMAXになると一目見られただけで魅了してしまう、超プレイボーイになる。
「……」
フィーナが何故か疑いの目を向けてくるが、やっていないものはやっていない。
シンゴ達はこれからの予定を話し合うため部屋に戻ることにした。お姉さんも一緒だ。
ちなみに彼女のステータスはこうだ。
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NAME:ディー
RANK:C
TITLE:-
JOB:諜報員
LV:28
HP:201
MP:105
STR:112
DEF:32
MND:56
INT:53
AGL:201
LUK:50
BP:50
SKILL:[素早さ大増] [潜伏LV5] [弓LV1] [治癒魔術LV2]
EQUIP:魅惑の指輪
MONEY:0GIL
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魅惑の指輪は一番使いがいがありそうな彼女に渡した。
「さて、俺のチートな能力が分かったところで、これからどうしたらいいと思う?」
「チート?」
「気にするな」
「明日はひとまずマンイーターの討伐でいいと思うにゃ」
「そうだな。それが終わり次第、皇都へ向かおう」
「なんでだ?」
「それは、私が説明します。恐らくお気づきだと思いますが。私はエルフの国ティターンから送り込まれたスパイです。フィーナ・R・ティターニアを暗殺するためにやってきました」
「何ですって!?」
「……フィーナ口調が……」
「……なんだって!?」
「言い直すのかよ!」
「なぜ私を殺す必要がある!?」
「それは「それはフィーナが王家の血を引いてるからだろう?」……その通りです」
「……シンゴ。いつから知っていた?」
「お前を買った後。本で読んだのを思い出したんだ。ティターン国の王家ティターニアって名前を。ほら、俺、他人のステータスが見れるからな」
「……それで分かったのか。そうか、一応ギルドカードでは隠蔽してたんだがな」
「で? それと皇都へ行くことどう関係してるんだ?」
「はい。ティターン国、国王ティターニア三世が亡くなられたのはご存知ですね?」
「あぁ、本で読んだ」
「そして、現在の国王は産まれて一年も経っていないティターニア四世です。が、もちろんそんな赤ん坊が王の勤めを果たすことなどできるはずがありません。」
「そりゃ当然だな」
「そして今、その代理を務めているのが、大臣であるシュナリエ。私はこの者の直属の諜報部隊 アルファベット に所属していました」
「なるほど、もしかしたらフィーナが帰ってきて女王になられたら、自分の思い通りにできなくなると」
「恐らく。そのため次の刺客が来る前にこの街を出たほうがよろしいかと。皇都はティターン国と敵対関係にあるので、簡単には刺客が入れないとはずです。そのため、皇都で身を隠すのが安全かと」
「そうか。……もしかして、ディーで刺客は4人目か?」
「そのはずです。なぜお分かりに?」
「今までの刺客はエー、ビー、シーだな」
「その通りです! 全てお見通しなのですね! さすが我が主!」
(……はぁ。何か可哀想な名前に思えてきた)
「で? 次の刺客が来るまでどれ位時間があるんだ?」
「はい、少なくとも三日は大丈夫かと」
「じゃあ、明日は4人で討伐。出発は明後日でいいな!」
「いいわけないでしょ!! なぜ私を殺しに来た奴と一緒にパーティーを組まねばならんのよ!」
「フィーナ口ちょ「私は、我が主と共にいられるのであれば貴様のことなどどうでもいい。貴様がパーティーを抜ければいいではないか」」
「それじゃ元も子もないじゃない!」
「しかし、貴様がいなければ少なくとも我が主は危険にさらされなくて済む」
「それは……」
フィーナは図星だったのか返す言葉をなくす。
「……あー、もういいか? ディー、俺はフィーナを手放すつもりはない。フィーナは俺のものだ」
「シンゴ……」
「……はい。出すぎたことでした」
「いいよ。フィーナもディーはすでに味方だ。これだけの情報をくれたのだから信じてやろう。それに、俺がスキルで味方を作れることが分かったから、皇都へ行くんだろう? 俺のスキルを信じてくれよ」
「……そうだったわ。少し混乱していたようね」
「フィーナ口調が」
「もういいわ。普通に喋ってやるわ! むしろディーとキャラかぶってんのよ! どっちがどっちか分からないじゃない!」
「うん。お前ちょっと黙ろうか」
二人を何とかなだめることに成功し、明日の討伐時の作戦を話し合う。
「じゃあ俺とフィーナは魔法、ディーは弓を使ってもらって遠距離攻撃、タマは足を使った撹乱ってことでいいな?」
「いいわ」
「かしこまりました」
「よし! タマもそれでいいな? ……って寝てるし」
「「……」」
ディーは隣の部屋を取っているらしく自分の部屋へと戻っていった。さすがに疲れていたため、皆すぐに寝てしまった。
翌日、食事をとるために宿をでて簡単な食事を取れるところをディーに教えてもらい、共に向かった。
食事を取りながら、改めてディーの忠誠心を確認すると。「死ねといわれれば死にます」などという。
(恐ろしい能力だ、自分に使われたらと思うと、ぞっとする)
食事も終わり、シンゴ達はマンイーターの討伐に向かうことにしたのだが。
「ところで荷物が見当たりませんが、回復薬などはどこに?」
と、ディーが聞いてくる。
「回復薬? なんだそれ?」
「しまった。私としたことが大事なものを忘れていたわ」
「回復薬は冒険者にとって必須です。まずは道具屋に行きましょう」
「くっ! 治癒魔術があるからつい忘れてたわ!」
「なんだ。頼りになると思ってたけど、抜けてるとこもあるんだな」
「悪かったわね!」
「いや! 安心したよ」
「えっ?」
「だって。そのほうが可愛く見えるじゃん」
「ばっ! ばかね……もぅ」
(やベー俺、超イケメン)
◇◇◇◇◇◇
道具屋につくと店の中はやけに暗い、窓はあるのだが明かりは入ってきておらず、魔石を使ったランプが何とか品物を照らしている。その奥のカウンタあー越しに疲れきった顔のお姉さんが出迎えてくれた。
「……いらしゃい……」
「……暗いな」
「暗いわね」
「暗いにゃ」
「……ですが、腕は確かです」
「そうなんだ」
なんとこの人はメディさんといって皇国からスカウトが掛かるほどの薬師だそうだ。[鑑定]でステータスを見ると確かに、調合のスキルがレベルMAXになっていた。
(すげー! スキルMAXだ!)
「じゃあ、冒険者バッグを4個とポーションを20個。それと、マジックポーションを5個ください」
「……はい……3,000GIL……です……」
「はい」
シンゴはカードを渡し支払いを済ませる。
「……どうぞ……」
「ありがとうございます。また来ます」
「……申し訳ありませんが……今日で……お店を……閉めることに……」
「なんでですか?」
「……皇国からの……勧誘が……しつこくて……」
「じゃあ、これからどうされるんですか?」
「昔やっていた……行商に戻ろうかと……」
「そうですか。じゃあ、またどこかで会えますかね?」
「……はい……また……何処かで……」
シンゴ達は、店を出て、早速討伐に向かった。
◇◇◇◇◇◇
皇都へと続く道を進んでいくと、小高い丘があった。その丘の上にウネウネ蠢く物が見える。
「あれだな……」
「うっ、予想以上に気持ち悪いな」
「そうか?」
「そうにゃ。女はあの触手が苦手だにゃ」
「とにかく、予定通りだ。タマは撹乱、他は遠距離での攻撃だ。行くぞ!」
シンゴとフィーナは火魔術、ディーは弓で攻撃をしていき。タマはその足を使って敵を撹乱させる。
作戦は思いのほか上手くいき、マンイーターを圧倒する。ところが。
「にゃっ!?」
「タマ!」
突如現れた、もう一匹のマンイーターの触手にタマが捕まってしまう。
「くそ! これじゃ攻撃できない!」
「とにかく数を減らすわ! シンゴはタマが食べられないようになんとか頑張って!」
「なんとかって!?」
始めにいた一匹のマンイーターを、フィーナが火魔術で止めを刺すと。タマを掴んでいるマンイーターは激しく触手を振り回し始めた。
「に゛ゃー!!」
「たま!! くそっ! 近づくこともできない!」
「このままでは埒が明かないわ!」
「くっ、こうなりゃ逆転の発想だ! フィーナ! あいつに水魔術を! 弱い奴でいい! ディーはあいつに治癒魔術を掛けてくれ!」
「そんなことしたら回復しちゃうじゃない!?」
「いいからやってくれ!」
「分かったわ! [ウォータ]!」
「癒しを[ヒール]!」
二人は魔術をマンイーターに向かって使い、シンゴもそれに合わせ光魔術を使う。
「光よ照らせ! [ライト]!!」
するとマンイーターは見る見るうちに大きく肥大化していく。
「なっ!?」
「そのままだ!」
マンイーターはどんどんと大きくなり、やがてその場に根を張り始めた。
「どういうこと!? マンイーターは移動のために根は張らないはずよ!?」
「俺にもわからん!? でもいい傾向なんじゃないか!?」
マンイーターはそのまま大きくなり続け緑色だった表面は茶色く木の色へと変わって行く。先程まで暴れていた触手は枝へと変化し、タマはいつの間にかその枝の上に座る格好になっていた。
「こんなことって……」
「こんなに上手くいくとはな」
「これってまさか……、世界樹?」
「世界樹?」
「ええ。世界樹って言うのは、エルフの生まれたといわれている大地の森の奥深くに生えているといわれている幻の木よ。この木にできるアンブロシアって言う実は死者をも蘇らせると言われているわ」
「幻って?」
「あるのは確かなの。でも木の周りにはたくさんの魔物がいてなかなか近づけないの。特に多いのがマンイーター」
「なるほど。子を産んで、その子供に自分を守らせるというわけか」
「そのようね。たぶんこのことは誰も知らないんじゃないかしら。知っていても口外していない」
「だろうな。じゃなきゃマンイーター討伐なんてするはずないもんな」
「いえ、討伐はされるでしょうね」
「なんでだ?」
「名前の通りよ。人を食べるの、こいつらは」
「なるほど。そうだったな。タマもよく無事だったな」
「ホントね」
木の上を見上げるとかなりの高さがあり、木の上の方からタマが泣きそうな顔でこちらを見ていた。
「おろしてにゃ~!!」
何とかタマをおろすと、タマが何かを持っている。
「折れたにゃ。ざまー見ろにゃ!」
「世界樹の枝か。何かいいことでもあるかな?」
「そうね、もしかすると世界樹の実の効果が少しはあるかもね」
「そういえば傷が消えてるにゃ!」
「まさか! 持ってるだけで回復効果があるのか! すげーな、世界樹!」
シンゴたちは手に入れた世界樹の枝を持って、ギルドへと向かった。
「もう戻ったか! 早かったのう」
ギルドにつくと、ギルドマスターが出迎えてくれた。
「ええ、2匹も出てきて大変でした。タマが食われるところでしたよ」
「2匹もおったのか!? しかし、これで主らはCランクに昇格じゃ!」
「では、カードをこちらに」
かくして、シンゴ達はCランクに昇格した。ギルドからの覚えも好くなるだろう。
シンゴは上がったランクを確かめるためパーティーのステータスを覗いた。
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NAME:タマ
RANK:C
TITLE:-
JOB:奴隷
LV:20
HP:158
MP:22
STR:135(↑×1.5)
DEF:71
MND:11
INT:57
AGL:120
LUK:50
BP:200
SKILL:[素早さ増] [格闘LV2] [槍LV2]
EQUIP:獣人の腕輪 勇気の腕輪
MONEY:0GIL
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NAME:フィーナ
RANK:C
TITLE:-
JOB:奴隷
LV:20
HP:123
MP:124
STR:79
DEF:72
MND:212(↑×2.0)
INT:93(↑40)
AGL:67
LUK:50
BP:200
SKILL:[上級学術] [魅力UP] [剣LV2]
[火魔術LV3] [水魔術LV2] [治癒術LV1]
EQUIP:魔王のピアス
MONEY:-2,500,000GIL
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NAME:ディー
RANK:C
TITLE:-
JOB:諜報員
LV:29
HP:209
MP:78
STR:116
DEF:40
MND:60
INT:55
AGL:208
LUK:50
BP:60
SKILL:[素早さ大増] [潜伏LV5] [弓LV1] [治癒魔術LV2]
EQUIP:魅惑の指輪
MONEY:54,000GIL
----------------------------------------------------
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NAME:シンゴ
RANK:B
TITLE:-
JOB:冒険者
LV:20
HP:260
MP:93
STR:376(↑250)
DEF:90
MND:89
INT:430(↑350)
AGL:201(↑×1.5)
LUK:200
BP:200
SKILL:[異なる知識] [怪力] [ドレイン] [BP振り分け]
[鑑定] [剣LV3] [火魔術LV3] [光魔術LV1] [次元魔術LV0]
EQUIP:光のリング
MONEY:7,842,083GIL
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「あれ? 俺のだけBランクになってるんですけど?」
「そうじゃ。本来、マンイーターは2匹おればBランクのパーティーで当たる依頼じゃ。それに、聞けばお主はほとんど一人でウッドベアを倒したそうじゃな。ウッドベアはAランクですら数人のパーティーで倒すのが普通じゃ。それをお主はほぼ一人で倒したとなれば、すぐにAランクでも良かったくらいじゃ。しかし経験の面でまだ日が浅いということもあり、今回はBランクということにしておいたのじゃ」
「そうですか。ありがとうございます」
「うむ。そうじゃシンゴ。お主、治療院から呼び出しがかかっておるぞ」
「治療院? ネロか、なんだろ?」
「悪い話では無さそうじゃ。行ってみることじゃな」
「わかりました」
シンゴ達はギルドを後にした。
治療院につくとネロが声を掛けてきた。
「よう。元気そうだな」
「ああ。おかげさまで」
「そっちの嬢ちゃんたちは?」
「俺の仲間だ」
「そうか。それでだな、お前を呼んだのはジャンがどうしてもお礼を言いたいって言ってな」
「なんだ、そんなことか。別に気にしなくていいのに」
ジャンの治療室に行くとジャンと知らないいすに座り女性がりんご?の皮を剥いていた。
「どうも」
「おお! あんたか! 良かった、一言礼を言いたかったんだ!」
「じゃ、この方が?」
「ああ。俺を助けてくれたシンゴ、だったよな?」
「ええ、シンゴです」
「そうですか。このたびは本当にありがとうございました」
「いえ、依頼で行ったんですから御礼はジャックさんに」
「まあ、そう言うな。ホントに感謝してるんだ。おかげで結婚が決まったんだしな」
「それはおめでとうございます!」
「ああ、ありがとう。それで俺からの礼なんだが」
「いえ、報酬はもう貰ってますから」
「いや、受け取ってくれ。俺の気がおさまらねー。って言っても俺の師匠への紹介状なんだがな」
「そうですか。では、頂いておきます」
「ああ。俺の師匠は獣人の国ライオネルで鍛治師をやってるダインって人だ。獣人連合軍御用達の腕前だ。ちょっと気難しい人だが是非会ってみてくれ」
「分かりました。ライオネルに行く機会があれば寄ってみます」
シンゴ達は治療院をあとにし、宿屋に戻った。