強敵との戦い
ジャックの店に着いたシンゴ達は、早速ジャックに会い装備を見繕ってもらうことにした。
「こっちの姉ちゃんは槍だな? これなんかどうだ?」
「うん! 長さも重さもちょうど良いです!」
「よし! じゃーそっちの姉ちゃんは杖と剣だな? 杖はこの短杖がいいな、剣はどんなのを使う?」
「手元に重心が来る細剣か、軽めの片手剣を」
「おっ、わかりやすくて良いねぇ。これなんかどうだい?」
「……まぁ、こんな物だろう」
「おい!」
「いいさいいさ! 確かに大した物は置いてないからな。全部で35,000GILだ」
「はい。何かすんません」
言いながらシンゴはギルドカードを渡し、支払いを済ませる。
「おう。確認してくれ」
----------------------------------------------------
NAME:シンゴ
RANK:E
TITLE:-
JOB:冒険者
LV:1
HP:38
MP:78
STR:127
DEF:34
MND:39
INT:414(↑350)
AGL:98
LUK:150
BP:10
SKILL:[異なる知識] [ドレイン] [BP振り分け]
[鑑定] [剣LV3] [火魔術LV3] [次元魔法LV0]
MONEY:6,738,383GIL
----------------------------------------------------
(ちょっと減ってきたな。奴隷を買ったんだからしょうがないか)
「じゃー、また来ます。」
シンゴは夜になる前に宿屋へ行き部屋を確保することにした。
「おや、またお泊りかい? 後ろの二人はパーティーでも組んだのかい?」
「はい、これから一緒に冒険する仲間です」
「そうかい。部屋はどうする? 一部屋で言いのかい?」
「えっと、どうしようか?」
悩んでいるとタマが答えた。
「あたしたちは一緒で良いにゃ……」
(にゃって言ったな。確かに猫耳だけど)
「あ、……一緒でいいです」
(言い直した……)
「タマ、喋りやすい話し方でいいよ」
「でも、ちゃんとした言葉で喋るように言われました」
どうやら獣人は、『にゃあ』や『わん』など、その元になった動物の鳴き声が口から自然と出てしまうそうだ。
「うーん、それは商人たちに言われたんだろ? 今は俺が主人なんだから俺の言うことを聞けばいい」
「……うん! 分かったにゃ」
「うん、よろしい」
シンゴ達の話が終わるのを待っていた女将さんが「決まったかい?」と聞いてきた。
「じゃあ、一部屋でいいね?」
「うん!」
「しかたない。そんなにお金を持ってはいないだろうからな」
(うん! こいつ、いい加減失礼な奴だな!)
「一部屋でお願いします」
「はいよ、一泊でいいかい?」
「ええと、一週間で」
「一週間で3名一部屋だね。7,000GILだよ」
「はい」
「部屋は二階の一番手前だよ」
支払いを済ませ、鍵を貰い部屋へ向かう。人心地ついたところで改めて自己紹介をしていく。
「それじゃ改めて。俺の名前は佐藤信吾。こことは違う世界からやってきた」
「んな! どういうこと!?」
フィーナが驚いている。してやったりだ。
「どういうことも何も。そのままの意味だ。俺は異世界人だ」
いいながらスキルまで表示させたギルドカードを見せた。
「見たことのないスキル……。まさか、言い伝えは本当なの?」
「ん? 言い伝えってなんだ?」
「……エルフである父から聞いた話だ。昔からエルフに伝わる予言にこうある。世界が闇に飲まれしとき、異世界より創造主現れ。世界を光で照らすだろう。と、偉大なエルフの預言者が残した言葉だ。実際、今世界中で混乱が広がっている」
「混乱というと?」
「人族の王は、自らの親を毒殺し、その王位を奪い。エルフ族の王は暗殺され、現在の王はまだ生まれたばかりの赤子だという。獣人族の王は若くして病死し、王家の血は途絶え、今も王の不在が続いているという」
「えっ? なんかいろいろやばいじゃん」
「人事のように言うな!! 貴様もこの世界にいるのだから当事者の一人なんだぞ!!」
「うっ! ……確かに。でも、俺、創造主なんかじゃないぜ? こんな世界想像してねーもん」
「そうなのか? ……では伝承に誤りがあるというの?」
「タマ、獣人のところはどんなだっ、た?」
振り向くと、タマはすやすやと眠りについていた。
「……寝てるし。とりあえず昼寝だな」
「……分かった。では、夜から行動だな?」
「あぁ、そうしよう」
少しの間仮眠をとることにして三人別々のベッドに入り眠りに付く。
◇◇◇◇◇◇
「起きて! シンゴ! 起きてにゃ!」
「ん……? タマかどうした?」
「おなか減ったにゃ」
「あぁ、もうそんな時間か?」
外を見るとまだ太陽が見える、大体三時ぐらいだろうか。
「ちょっと早いけど、フィーナを起こして飯食いに行くか!」
「うん!」
「フィーナ。おい、フィーナ!」
寝ぼけたフィーナは目もあけずに言った。
「うぅん、なぁにパパ?」
「パパじゃねーよ!」
「ぅん……。っ!?」
目を開け、慌てて飛び起きるフィーナ。
「目ぇ覚めたか? タマが腹減ったって言うから飯食いに行くぞ」
「わっ、わかった。すぐ準備する」
(くくっ。あいつ父親のことパパって呼んでたんだな)
フィーナの準備も終わり、三人揃って宿屋を出る。宿屋の食堂は夜しかやっていないようだ。商店街の方へ向かうと何処からか良い匂いが漂ってくる。
「いい匂いにゃー」
「よし! ここに入ってみるか」
中に入るとカウンターとテーブル席に分かれていた。店員に案内されテーブル席へ座る。そのままお勧めを三人分頼むと、あまり待つこともなく食事や飲み物が運ばれてきた。
「おいしそーだにゃ」
「そうだな。よし、いただこう」
食べようとするとフィーナに止められた。
「行儀が悪いぞ! お祈りを捧げてからだ」
「そんなのあんのか」
「タマも知らにゃい」
「……分かった。私の真似をしろ」
フィーナがなんたらかんたら感謝します。とかいっていたがよくわからなかった。とりあえずフィーナが満足したようなので食事を食べ始めた。メインは何かの肉を煮込んだものだったがとても柔らかく食べやすかった。皆が食べ終わり、支払いをしようと店員を呼んだ。
「ありがとうございます。12,000GILです」
「はい」
「ちょ! ちょっと待つにゃ!」
タマが慌てた様子で話しかけてきた。
「高いにゃ! 高すぎるにゃ! 普通は一食500GILしないのにゃ!!」
「そういえば高い気もするな。どうなんだ?」
シンゴはフィーナに尋ねた。
「確かに高いな。食事に内容、店のサービスその他いろいろ鑑みてもこの値段は高過ぎだ」
「やっぱそうなのか。ま、次からは別の店で食おう。後、俺、金銭感覚が全然ないから。その辺のこと頼むよ」
「分かった。そこは私とタマに任せておけ」
それからフィーナの提案で皆のレベルを上げたほうがいいだろうということになり、ギルドで依頼を受けることにした。
ギルドに着き、初心者用のファイルを見ようとするとフィーナが言った。
「私とタマもいるんだ、Dランク程度ならいけるだろう」
「そうか? じゃそうしよう」
そうして、Dランクの依頼が貼られている掲示板を見る。依頼書をいくつか見て行くうち、一つの依頼に目が留まった。
(これって、多分この前の奴だよな。)
====================================================
ホワイトマウスの尻尾の収集
カイトの森にいるホワイトマウスの尻尾を50本集めてください。
報酬 30,000GIL
依頼者 道具屋 メディ
====================================================
「よし! このホワイトマウスのでいこう」
カウンターに依頼書を持って行き受付の女性に渡す。
「こちらの依頼ですね。そちらのお二方とパーティーを組まれますか?」
「はい」
「かしこまりました。では、皆様のギルドカードをお願いします」
三人はそれぞれ自分のカードを渡す。
「はい、パーティー登録完了しました。リーダーはシンゴ様になっております」
「分かりました」
「では、行ってらっしゃいませ」
シンゴ達は、ホワイトマウスの尻尾を集めるために、カイトの森へ向かった。
森に入り少し進むと、大きな白い鼠がこちらに背を向けていた。
「あれだよな?」
「そうだ」
「捕まえるのにゃ!」
タマが一人、いち早く駆け出し槍で一突きにする。
「ヂヂィ!」
鼠が叫ぶがタマが鼠の刺さったままの槍持ってこちらに戻ってきた。どうするべきか考えているとフィーナが剣を抜き鼠の首を切り落とした。
「……尻尾、切ります」
情けないことに、シンゴの作業は二人が鼠を処理した後、尻尾を回収する。という流れになってしまった。その後も鼠は次々に見つかり、40匹を越えたところでぴたっとその姿を消した。
「……いねーなー。もう全部狩っちまったのかなー?」
「そんなはずはないにゃ! あいつらはどんどん湧いてくるにゃ!」
「ああ、奴らは尽きることはない。一度に大量の子を生み短期間で成長するからな」
「じゃあなんでいねーの?」
「……まさか!?」
フィーナが何かに気づいたそのときだった。茂みがガサガサ揺れ、シンゴはそこから鼠が現れると思ったが、それは間違いだった。
「グァー!!」
大きな声で鳴くそいつの姿はまさに熊だった。ただし、その体長は優に5mを超えていた。
「でかっ!!」
「ウッド、ベア……」
「こいつが!?」
それは、あの兵士達が倒したと言っていたのと同じ、ウッドベアだった。その体は幾つかの傷があり、何かとの戦闘の後を残す。怪我を負っているせいで、かなり興奮しているようだ。シンゴは小声でフィーナに問いかける。
「なぁ。こいつ、やばいんじゃねーのか?」
フィーナも小声ながら語気を強めて返す。
「やばいなんてもんじゃない! こいつは訓練された部隊でもてこずるような奴だ! たった3人で勝てる相手じゃない」
「よし! 逃げるぞ!」
「だめだ! 動くな! 奴は見た目に反してかなり素早い! 逃げても追いつかれる!」
「マジかよ!」
([鑑定]!)
----------------------------------------------------
NAME:ウッドベア
RANK:B
TITLE:-
JOB:魔物
LV:3
HP:321
MP:6
STR:313(↑250)
DEF:35
MND:3
INT:5
AGL:251(↑200)
LUK:50
BP:30
SKILL:[怪力] [森の民]
----------------------------------------------------
(なんだこのステータス!? このスキルのせいか!?)
「だったら!」
シンゴは自分のステータスを信じてウッドベアの背後に回ろうとしたが。逆にこちらに注意を引いてしまう。
「くそ! フィーナ! タマ! 魔法でも投石でもなんでもいい! こいつの気を逸らしてくれ!」
シンゴの声に反応しウッドベアが腕を振り上げ俺に向かってくる!
「くっ! 分かった! 炎よ舞え! [ファイア]!」
「了解にゃ! えい!」
「グァァー!!」
ウッドベアは、タマの投石はものともせず、フィーナの魔法の熱さに一瞬もだえるも、すぐに立ち直りフィーナに向かい襲い掛かろうとする!
その瞬間。
(今だ!!)
シンゴはウッドベアの背にしがみつき素早く唱える!
「[ドレイン]! くっ! [ドレイン]! [ドレイン]! [ドレイン]! [ドレイン]!」
シンゴにしがみ付かれたウッドベアはそれを振りほどこうと暴れまわる。シンゴは何とか[ドレイン]を五度ほど唱えたところで振り落とされてしまった。
「くそっ! どうだ!? [鑑定]!」
----------------------------------------------------
NAME:ウッドベア
RANK:B
TITLE:-
JOB:魔物
LV:3
HP:208
MP:0
STR:63
DEF:5
MND:0
INT:5
AGL:251(↑200)
LUK:0
BP:30
SKILL:[森の民]
----------------------------------------------------
そして確認している間にも力が漲ってくるのが分かる。
「よし! これならいける!」
ウッドベアがこちらに振り向き、腕を振り上げる! しかし、テンションがハイになっているシンゴは、かまわず剣を振る。シンゴの剣はウッドベアの腹を切り裂き内臓をぶちまける! しかしウッドベアの生命力もなかなかの物で、まだ攻撃しようと腕を振ってくる。その一撃を交わしきれずにもろに顔面に受け弾き飛ばされてしまう。
「シンゴ!」
「にゃー!」
今まで、シンゴの活躍に驚いて固まっていた二人が、慌てて動き出す。
「シンゴっ! 炎よ! [ファイア]!」
フィーナは呪文を唱え、タマは槍で突き刺していく。すぐに立ち上がったシンゴは止めを刺すために剣を振りかぶる。シンゴからの攻撃が一番やばいと見たのかウッドベアがシンゴに向かって腕を振ってくる。ウッドベアの攻撃を紙一重でかわしたところ。ウッドベアは、そのまま前のめりに倒れこんできた。その脳天に向け、間髪いれず刃を叩き込む!頭を勝ち割られたウッドベアはピクリとも動かなくなった。
「ふー! 良かった! 皆、怪我はないな?」
「シンゴこそ! 大丈夫なのか!?」
「あ?あぁ。大したことないよ。ちょっと爪が当たっただけだ」
「馬鹿を言わないで! ウッドベアの攻撃よ! 大したことない分けないでしょ!」
「ちょっと見せてみるにゃ!」
「……どうだ?大したことないだろう?」
俺は自慢げにウッドベアにやられたところを見せた。
「……ほんとだにゃ。少し爪で裂けてるだけにゃ」
「な。言ったろ?」
「そんな?嘘よ!森の怪物といわれる魔物なのよ!攻撃力はかなり高いはず!」
「まあ、その辺はまた宿に戻ったら説明するよ。それよりフィーナ、お前そんな喋り方なんだな」
「! ……何がだ」
「……まぁ、いいや。ひとまず鼠狩り、再開しようぜ」
「仕方ない。帰ったらちゃんと説明してもらうからな!」
「わかったわかった」
フィーナに治癒魔術を掛けてもらい、傷が癒えると。再びホワイトマウスを探し始めた。ウッドベアがいなくなったお陰か、鼠の尻尾はすぐに集まり、タマに言われ、ウッドベアを回収する。
ウッドベアの素材はギルドでいいお金になるそうだ。さすがに疲れたため森を後にしギルドに直行した。