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初めての依頼 その二

 シンゴはギルドを出て、街の外へと続く門へとやって来た。


「お、お前はっ!」


 そこには、さっき兵士隊長を置いて逃げ出した、取り巻き兵士の内の一人がこちらを見て驚いていた。


「ふーん。あんた、門番とかやってんだ」


 信吾がそういうと兵士は申し訳なさそうにこういった。


「さっきは、いや、昨日の件はすまなかった」

「あ。謝っちゃうんだ」

「あぁ。あれは、隊長に逆らえずに仕方なくやったことだからな」

「その割には他の奴はノリノリだったけど」

「それは隊長の取り巻き連中だ。俺はたまたま一緒に行動してて巻き込まれただけだ」


 そう言って男は、少し嫌そうな顔をする。


(そういえば、あの隊長が俺の財布持ってるって教えてくれたのは、こいつだったな)


「俺はまだ二級兵だからな、上のやることに口出しできないんだ。それがたとえ悪事だとしてもな」


(うん、こいつは何か信念を持って上に上がろうとしている奴と見た)


 ハジメは勝手な想像を膨らます。


「そんなわけで、服を売った金は少し使われちまってるだろうが、勘弁してくれ」

「あぁ、服のことか。あれ幾らで売れたんだ?」

「あれか? 確か30万GILだったはずだ」

「げっ! じゃあ、あの袋の中身全部俺の金ってことか!?」

「ん? 隊長は普段現金は持たんぞ。今回は取り巻き連中が金を分配するって現金で受け取ってたけど」


(しまった。あの時もっと殴っておけばよかった!)


 そんなこんなで、この兵士とはなんとなく仲良くなってしまった。名前はダンといい、田舎から出てきて、兵士になってまだ二年目だそうだ。シンゴが倒れているのを最初に見つけたのは取り巻き連中で、たまたま隊長と一緒にいたところを巻き込まれてしまったらしい。


 ダンによると、カイトの森はここから少し南に行ったところにあるらしい。町を出て30分ほど歩くと森が見えてきた。


「うへー、結構でかそうな森だなー」


 森のは木が生い茂り、鬱蒼としていて暗い。かなり範囲が広いようで森というよりは樹海といった感じだ。


(これで初心者でも来れるってのか? 上級者が行けるのってどんなところだよ?)


 そうは言っても、依頼を受けてしまったからには行くしかない。依頼を破棄することもできるが、信頼度が落ちてしまうらしく、帰る方法が見つかるまではここで生活していかなければならないので、そんなことはできない。仕方なく、近くにある木に、見て分かる程度の傷を付けながら少しずつ進む。


(確かこうしとけば迷わず出れるんだよな?)


 少し歩くと草むらから音がする。警戒していると、体長50㎝以上ある白い大きな鼠が出てきた。


「鼠? にしちゃでかいな」


 鼠はこちらに気づくと牙を出し威嚇してくる。


「おいおい。別に何もしねーよ」


 しかし、シンゴの言葉が分かるわけもなく、鼠はいきなりその牙で襲い掛かってきた。


「うぉ! 何だよおい!」


 シンゴは、難なくそれを躱し、剣を抜き構える。鼠はまたしても噛み付こうと駆け寄ってくる。それに対し、シンゴは剣の腹で横から叩きつけた。すると鼠は気を失ったようでその場で動かなくなる。


「ふー。何だよ。これが魔物か? この程度なら何とか大丈夫そうだな」


 その後、再び歩き出し、しばらく進んで行くと奥から歌声が聞こえてきた。かなり耳障りな歌声だ。


「なんだ? こんな森の中でへったくそな歌うたいやがって」


 木の陰から覗いてみるとそこには怪我をした男が木にもたれかかって座り込んでいた。


「おい! 大丈夫か!?」

「おわっ! なんだ人間か、助かった。すまんが、ランセルの治療院まで連れてってくれねーか?」

「分かった! 肩につかまれ!」

「すまんな」


 男は一言礼を言うと黙り込み、歩くのに専念している。事情を聞こうと思ったが、これでは無理そうだ。


 木の傷を目印に難なく森を向け街に戻るとダンが駆け寄ってきた。


「どうした! ……あんた、ジャンさんじゃないか! すぐに治療院に運ぼう!」


 もう一人の門番の兵士が、詰め所から担架を持ってきた。一人残らなければならないとの事で、信吾とダンの二人で治療院までジャンさんを運んだ。治療院に着くとネロを呼びそのまま病室に運び入れる。[鑑定]で怪我の具合を見たネロは一息ついた。


「たいしたことはない。ちょっと足を骨折して、栄養不足なだけだ」

「そうか、すぐ良くなるのか?」

「ま、何があったかは知らんが心配はいらん三日もすればいつも通りの生活に戻れる」

「三日!? 骨折がたったの三日で直るのか!?」

「ん? 骨折なんか今日中にでも治せるさ。これでも治癒術師だからな」


 何でも、怪我なんかは数時間もあれば治癒術で治せるらしい。問題は栄養不足のほうで、栄養を摂らせるのに時間がかかるらしい。


 俺は依頼を達成したことを伝えに武器屋のジャックの下へと向かった。


 武器屋に着きジャンを助けたことを知らせる。


「ホントか!? ありがとう! これは礼だ、取っておいてくれ」


 と、フードつきのマントをくれた。


「これは?」

「お前、冒険者だろ? マントは必須だぞ」

「そうですか。ありがたくいただきます」


 そうして俺はギルドへ向かい依頼の完了報告を済ませる。


「でも、すぐ見つかってよかったですね」

「そうですね、こんなに簡単に見つかるとは思ってなかったですよ」

「でも、歌をうたってたのはさすがですね」

「どうしてですか?」

「あのあたりの魔物は臆病で、大きい音を出していれば近寄ってこないんですよ」

「なるほど、それであんな大きい声で」


 受付の女性が言うには弱い魔物はあまり戦闘を好まず非常に臆病で、強い魔物は好戦的なものが多いそうだ。例外もあるらしい。


 報告を終え、ギルドを出るとあたりは薄暗くなり始めていた。宿を確保していないことを思い出し、慌てて宿屋を探す。ベッドの看板をつけた建物を見つけた頃には当たりは暗くなり星空が広がっていた。 


 慌てて見つけたベッドの絵の描かれた看板の建物に入る。


「すいません! ここって宿屋ですよね? 部屋って、まだ空いてますか?」

「はい、空いてますよ」


 そう笑顔で答えてくれたのはまだ幼さの残る少年だった。


「手伝い? 偉いね」

「はい! 父は今、皆さんにお出しする食事を作っていて。母は、食事を出す係りをしてるので、この時間は僕が受付をしてるんです」

「凄いね! 感心するなー」

「では、一泊お一人様で500GILです。長期の場合ですと一週間で3300GILです。食事をなさるのでしたら食事の際に食堂で300GILお支払いください。」

「うーん。とりあえず一泊で」


 ギルドカードを出し、少年に渡す。少年はカードを受け取りガラス板にかざす。


「はい、確かに。カードの確認をどうぞ」


 言われるままカードを確認する。

----------------------------------------------------

NAME:シンゴ

RANK:E

TITLE:-

JOB:冒険者

LV:1

HP:38

MP:63

STR:127

DEF:34

MND:39

INT:414(↑350)

AGL:98

LUK:150


BP:10


SKILL:[異なる知識] [ドレイン] [BP振り分け]

[鑑定] [剣LV3] [火魔術LV3] [次元魔法LV0]


MONEY:10,273,883GIL

----------------------------------------------------

(そういえばネロさんがジャンさんに鑑定使ってたよな。よし!試しに[鑑定])

----------------------------------------------------

NAME:リン

RANK:E

TITLE:-

JOB:宿屋の娘

LV:1

HP:28

MP:14

STR:16

DEF:17

MND:7

INT:38(↑20)

AGL:23

LUK:50


BP:10


SKILL:[算術] [短剣LV1] [火魔術LV1]


MONEY:530GIL

----------------------------------------------------

(あれ? 娘って。女の子だったんだ)


 後になって知った話だが、この世界では悪徳奴隷商などがいて、女の子は誘拐されやすいらしく、少しでも誘拐されないように子供の頃は男の子の格好をさせることがあるらしい。


「こちらが鍵です。部屋は二階に上がって一番奥になります」

「ありがとう」


 信吾は鍵を受け取ると、そのまま部屋に行き荷物を置いて食堂へ向かう。食堂に着くといい香りが漂っている。恰幅のいい女性がトレーを片手に下げ客であろう男達と談笑していた。信吾はカウンターへ行き直接厨房にいた男性に食事を注文する。


「すみません! お勧めがあったらお願いします!」

「おぅ! 適当に座って待ってな!」

「はい。お願いします」


 少し待つといつの間にか仕事に戻っていた女性が料理を持ってきてくれた。


「おや? 見ない顔だね。宿の客かい?」

「はい、一部屋お借りしてます」

「そうかい、ありがたいねー。じゃ食べ放題300GILだよ。まだ若いね、冒険者かい?」


 ギルドカードを渡し会計を済ませる。


「はい。今日なったばかりですけど」

「一人じゃ大変だろう。早くパーティーを見つけるか、お金貯めて奴隷でも買うんだね」

「奴隷、ですか?」

「あぁ。奴隷なら稼いだ分は、全部自分の稼ぎになるからね。冒険者なら皆知ってるよ」

「そうなんですか。……奴隷って幾らぐらいするものですか?」

「値段かい? 安くても50万GILはするって言うね。まぁ、今日なったばかりのあんたじゃ難しいだろ。いきなり奴隷持って冒険者になるなんて貴族位だからね」


(思ったより安いな。すぐ買えるじゃないか!)


 信吾は食事を済ませ部屋へ戻ると明日は奴隷のことを調べようと心に決め、疲れのためかすぐに眠りついてしまった。

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