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気が付くと……

分割しました。

 その日は、朝から何かおかしかった。


 信吾は毎朝の日課であるコーヒーを飲みながらテレビを見ていた。すると突然、テレビの内容が変わった。そのコーナーが終了したわけでもないのに、だ。放送事故かとも思ったが、訂正もなく番組は続いていく。テレビもいい加減な物だなと思っていると、半分以上あったと思っていたコーヒーがなくなっている。寝ぼけていたのだろうと思い、特に気にもせず会社に向かった。

 

 電車で会社に向かうと何人かの人間が俺を見て不思議そうな顔をする。そのとき同期の鈴木が声をかけてきた。


「おす! 佐藤。今日は自転車じゃないんだな」

「いつの話だよ? もうそんな体力ねーよ」

「お? そうか? 昨日は自転車だったと思ったけどな?」

「なに言ってんだ? 電車だよ」

「ま、いいや。じゃ後でな」

「ん? 後でなんかあったっけ?」


 鈴木は返事も聞かずに行ってしまった。仕方なく仕事場へ向うと一人の男性社員とすれ違いになる。


(あれ? 誰だっけ? なんか見たことあるけど?)


そんなことを思いながら自分のデスクに向かう。するとここでも周りが奇異の目でシンゴを見てくる。


(何だ? 変な格好でもしてるかな?)


 椅子に座り仕事を始めようとすると、急な眩暈に襲われる。眩暈は治まらず、酷くなって行く一方で、仕方なく医務室に向かうことにした。医務室は救急箱の中に市販の薬が何点かあるのと、ベッドが一つあるだけの簡単な物だが、横になれば楽になるだろうと壁に手をつきながらも何とか医務室の前までたどり着く。ところが、視界が歪み立っていられなくなる。信吾はそこで意識を失ってしまった。



◇◇◇◇◇◇



 シンゴが目を覚ますと、知らない場所にいた。


(……ここは?)


 古い木造の建物だ。体を起こし周りを見てみると、いくつかのベッドがある。かなり古いが病院のようだ。


「おっ。目が覚めたのか?」


 声をかけてきたのは、背中に何かの模様の入った、薄いグレーのマントを身に着けた男だった。


「……はい。あの、ここは?」

「ここは、ランセルの治療院だ。お前、街のど真ん中で倒れてたんだ。覚えてるか?」


 どうやら信吾は、街中で意識を失い。ここまで運ばれてきたらしい。しかし、信吾の記憶は会社で倒れたところでぷっつりと途絶えていた。


(……ランセル? 聞いたことがない。日本じゃないのか? その割には言葉が通じる)


 考えながらも質問に答える。


「……いえ、覚えてません」

「そうか。とりあえず目が覚めたなら、今日はいいが、なるべく早いとこ出てってくれ。金のない奴をいつまでも泊めてられんからな」

「金? 金なら持ってますよ」


 お金はスーツのポケットに入っている財布の中にいくらか入っていたはずだった。


「ふん。お前が担ぎこまれてきたときには。ほぼ裸の状態だったが。あの兵士共め、服ごと盗んでいきやがったな」


 慌てて自分の体を見ると、小汚い布切れを一枚身につけているだけだ。気を失っている間に身包みはがされてしまったようだ。(やられたっ!)と憤っていると、視界の端に何かが見える。

 ○のマークが浮かんでいた。


「ん? なんだこれ?」


 目で追おうとするがいつまでたっても端にあるままだ。気になったのでその部分に触れてみる。すると

----------------------------------------------------

NAME:シンゴ

RANK:-

TITLE:-

JOB:会社員

LV:1

HP :38

MP:78

STR:28

DEF:24

MND:39

INT:414(↑350)

AGL:21

LUK:150


BP:10


SKILL:[異なる知識] [ドレイン] [BP振り分け]

[次元魔法LV0]


MONEY:0GIL

----------------------------------------------------


「うわっ! なんだこれ!?」


 視界に広がった半透明の白い文字に慌てるが、見覚えのあるそれをなんとなく理解する。


「ステータス……」

(まるでゲームみたいだな?)


 そんなことを思っていると医者が独り言のように呟く。


「あの兵士共から治療代を回収しねーとな」


 そう言うと、医者であろう人物は去っていった。その後、しばらく自分のステータスをいじってみた。とりあえずスキルの説明を見てみた。書いてあったのはこうだ。


 [異なる知識]

 違う理の知識 INT大幅UP


 [ドレイン]

 対象に触れてランダムに吸収


 [BP振り分け]

 獲得したBPを振り分けることができる


 [次元魔法LV0]

 時間と空間を操る


 何のことか、いまいち要領を得ない。横になり考えているとそのまま眠ってしまった。


◇◇◇◇◇◇


 翌日、目が覚めると看護の人だろうか、医者と同じ、背中に模様のはいった薄いグレー色のナース服を着た女性が朝食を持ってきてくれた。


「おはようございます。お加減はいかがですか?」

「おはようございます。問題ないようです。」

「そうですか。じゃあ、これ。朝食です。ゆっくり食べてくださいね」

「はい、いただきます」


 少し硬いパンと何かのスープのようだ。仕方ないが、あまりおいしい物ではない。食べ終わり食器はどこに持って行くのだろうと部屋から顔をだすと、でかい叫び声が聞こえてきた。


「知らねーって言ってんだろーが!!」


 気になり様子を伺うと、ドアの隙間から見えたのは昨日の医者と中世の鎧のような物を身にまとった厳つい男と、それを取り巻く四人の男達だった。


「しかし、本人が金を持っていたと言ってるんだぞ? 服まで盗まれて。おかしいとは思わないのか?」

「その本人が嘘ついてんじゃねーのか!? 俺たちが見たときには裸だった!」

「じゃあ、お前の腕についてる魔道具はなんだ? あいつの腕に何かを付けていたあとがあったぞ」


 それを聞いて男の腕を見ると、腕時計が巻かれている。もちろん信吾の物だ。


(魔道具? 変な言い方をするな?)

「こっ、これは。この前あった討伐の報酬で新しく買ったもんだ!」


 男がおろおろしながらも言い訳を言う。


「ほぉ? この前の討伐とはウッドベアのことか? 部隊で討伐したんだったな。一人の報酬はそこまで出ないはずだが? その魔道具は簡単に見積もっても300万はするぞ?」

「うぇっ!? そんなに!?」


(300万!? あれは安物の腕時計だぞ? 単位はなんだ? 円じゃないよな?)


 信吾は自分の持っていた安物の腕時計にとんでもない金額を付けられ驚いていると。


「ほら見ろ。自分で買ったんじゃないって証明されたじゃないか」


 どうやら医者の誘導尋問だったようだ。


「しまっ! ……わかったよ! 返せばいいんだろ! 他のもんは知らねーぞ!」

「ほぉ。他にもあるのか」

「っ! 行くぞっ!!」


 そう言って数人の男を引き連れ信吾のいる方へ向かってきた。信吾は慌てて身を隠し、ふたたびその男達を視界に納める。外に出た男達は小さな声で話をしていた。


「クソっ! ふざけやがって! 誰のおかげでこの街が護られていると思ってんだ!」

「ホントですよ、隊長がいなかったらこんな街すぐに潰れちまうっていうのに」

「おい、魔道具取り上げられたんだ。あの服売った金は寄よこせよ」

「えぇー!? ……分かりましたよ、俺たちにも少しはくださいよ!」

「わーってるよ! 今からその金で一杯やるぞ!」


 かなり離れていたが信吾には丸聞こえだ。やはりあいつらが盗んで行ったのに間違いないようだ。


(クソっ! 服は売られてしまったようだが金は必ず取り返してやる! こうなりゃ訴えてやるのが一番だな!)


 そう考え医者のもとへ向かい、取り返してくれた腕時計について礼を告げる。


「さっきは、ありがとうございました」

「あん? あぁ、聞いてたのか。ま、あんだけでかい声出されたら当然か」

「それで、お金なんですけどちょっと待ってもらっていいですか?」

「ああ、いいよ。この魔道具売ってくれば相当な金額になるだろう」

「えっ? これはそんなに高いものじゃないんですが……」

「そんなことはない。俺の目が確かなら、かなりの価値があるものだよ。売れば300万は軽くいくだろ」

「えぇ!? そんなにしませんよ!?」

「いや、間違いないね。300万は堅い」


 どうやらさっきの会話で言っていたのは男達を脅かすためではなく本心からだったようだ。


(そんな金額で売れるというなら、すぐに売ってこよう)


「何処に行ったら売れますか?」

「うん? その辺の店なら何処でも買い取ってくれるだろうよ」

「分かりました。ちょっと行ってきます」


 信吾は渡された腕時計を手に、振り返り部屋を出ようとする。


「ちょっと待ってくれ。すまんが、一応念のためだこの腕輪を付けてくれ」


 呼び止めた医者は、何かの文字が刻まれた腕輪を渡してきた。


「これは?」

「これは、契約の腕輪だ。お前がちゃんと戻って来て金お払うように契約を結ぶ」

「こんな腕輪で?」

「あぁ」


 そう言われては仕方がない。腕輪をはめると腕輪が、すっと消えてしまった。


「あれっ!? 消えた!?」

「これで完了だ。もし約束を違えれば腕から先が無くなるから注意しろよ」

「えぇ!? マジですか!?」

「あぁ。じゃーもう行っていいよ」

「……じゃー行ってきます」


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