私
昔から、夢だった…
一番最初に料理をしたのは大好きな絵本に出てきたオムレツ。野菜がたくさん入った大きなオムレツ。とっても美味しそうで、どうしても自分で作って食べたくなったのだ。
母に手伝ってもらいながらも、自分で作っていく行程が楽しかった…
成長してもそれは変わらなかった。だから、この道を選んだ。
わざわざ、良い人ばかりの会社を辞めてまで。
それなのに…
料理の世界は一見華やかそうに思えるが、実際は地味で体力を使う仕事だ。
元々力もあまりなく、運動も苦手な晴香は、ゴミ捨てさえもまともにできない。
家で腹筋とかしてるんだけどなぁ…
加えて、すごくのんびりした性格で、考えるのも動くのも遅すぎると、よく指摘されるのだ。
やっぱりあたし…
この仕事…
向いてない?
そう考えながら、晴香は携帯電話の適職診断サイトを開いていた。
もしかしたら、あたしに向いている仕事は他にあるのかもしれない。
しかし、ふと頭に前の職場の人達の顔がよぎる。
嫌な顔一つせず「応援してるからね」と言ってくれた人。
ただでさえギリギリの人数だったのに「活躍を期待している」と言ってくれた課長。
思い出すと、手が止まった。
あんなに、応援してもらって送り出してもらったのに…
辛い。
罪悪感でいっぱいだ。
でも、本当の自分も知りたい。
自分に向いている、職業…
晴香は、再びスマートフォンの画面に指を伸ばした。