希望と過去②
それから晴香の社会人生活が始まった。
高校を卒業してすぐ、家庭の事情で入った会社。
本当は、専門学校に行くつもりだった。
しかし、卒業寸前に父親が他界し、知人の紹介で働くことになったのだ。
高卒でも出来る仕事…唯一持っていた資格は漢字検定2級だけ。
職業安定所に行って探しても、新卒の採用が終わった3月にこの田舎町で高卒の求人募集は皆無に等しかった。
仕方がなかった。
「晴香ちゃん、何回同じこと言わせるの?」
「すいません」
「怒るのも体力いるんだから、もうちょっと考えて仕事してくれないかしら」
「…はい。すいません」
入社して2年経過しても、3年目に入っても、晴香は毎日のように先輩達に怒られていた。
それは怒られてもしょうがないことがほとんどで、晴香も素直に受け入れたし、部長や課長、パートのおばちゃん達は優しく励ましてくれたので、たいした苦痛ではなかった。
もともとの明るく楽観的な性格もあったのかもしれない。
しかし、晴香の心に響いた決定的な言葉があった。
「晴香ちゃん、仕事、本気でやる気ある?」
そう言われて、即答できなかった。
(覚えてる…つもり…だけど…)
その日から、一度は諦めた専門学校のことをもう一度考えるようになった。