第二章 出会い
本当はもう少し時間を空けて投稿するつもりでしたが、もう第二章を投稿することになりました。
今回は久高とヒロインの出会い、それと物語のきっかけをメインに書いたつもりです。
誤字脱字、誤った表現などの指摘や感想をいただけましたらとても嬉しいです。
是非ともお願いします。
毎日毎日、自宅と学校、それとバイト先のコンビニを行ったり来たりして過ごしている。
勿論今日も、学校を終えたら家のコタツでPCでもいじって一息いれてからバイトに行くつもりだった。
なんて充実した一日なんだろう。
だが、現実は予想通りにはいかない。
学校を終えて家に向かう途中、なんとなく商店街の近くにある大きな公園を通っていた時だった。
ふと、設置された花壇の中に一本の苗木が埋まっているのが目にとまった。
周りの花ばなとは明らかに不釣り合いなその苗木は、植えてあると言うにはあまりにも大雑把な形で花壇の土に埋まっている。
子供の悪戯だろうか。
俺はちょっとした親切心と、ガーデニングを趣味にもつための下心とを秘めて、その苗木を移動させることにした。
アパートでは庭いじりはできないので、木を植える作業などはガーデニング本を読んでの空想でしか経験がないのだ。
とはいえ、苗木を移動させるとなるとスコップなども必要になるし、移動先のことも考えないといけない。
それを踏まえて俺は一度アパートに戻ることにした。
バイトまではしばらく時間が空いているし、苗木を移動させたあとそのままコンビニに向かえば時間には充分間に合うだろう。
僅かに歩調を早めた俺は、アパートから自前のスコップとバイトの準備、念のためにガーデニングの教本を持って再び公園に戻ってきた。
「それじゃ、始めるか」
遠目にはわからない程度の僅かな微笑みを浮かべそう一人呟くと、俺は苗木の移送作業にとりかかった。
元々想定していた通りに、根を傷付けないよう丁寧に苗木の周りを掘り、ある程度の土と一緒にビニール袋に入れる。
アパートに戻って帰ってくる間に、この苗木を植える場所はもう考えてあった。
この公園の端にある一本の道。
道の向こうには土手があり、その下には小さな川が流れている。
その道は並木通りで、この苗木と同じ種類の木が植えられていた。
きっとこいつも仲間と一緒にいられる場所の方が嬉しいだろう。
俺とは違って。
同じ公園の中とはいっても、それなりに大きい敷地をもつ公園なので多少の距離はある。
しばらく歩いて目的の場所につくと、そこで調度よさそうなポイントを探すことにした。
あまり他の木に近いところに植えてしまうと、栄養もとりづらいだろうし日光も当たりにくくなる。
大きくなった時にも問題が出てくるだろう。
適度に周りの木とスペースができていて……そう、調度あんな感じの場所がいい。
並木通りの終わりの土手側、そこにおあつらえむけのスペースが空いていた。
とりあえずはここでいいだろう。
そこで少し土の質などを確認してから、苗木をそこに植えることに決めた。
スコップで土に穴を掘っていく。
なんだ、意外とスムーズにできるじゃないか。
これなら教本を持ってこずとも大丈夫だったな。
こう上手くいくと少し自分の自信にも繋がるというものだ。
いつか自分も庭のあるところにうつり、自分の好きなようにガーデニングができたらと想像とも妄想ともつかないことを考えながら穴を掘っていた時、彼女は突然に現れた。
「なに、してるんですか?」
突然後ろから声をかけられ、驚いて振り返る。
すると、すぐ後ろに一人の女性がしゃがみこんでこちらを見ていた。
あまりにも唐突なことで、その女性のことをまじまじと見てしまう。
歳は同年代くらいだろうか。
彼女はショートブーツとデニムのフレアスカート、黒いニットにファーのベストというカジュアルな服装でありながら、どこか浮世離れした雰囲気をまとっているように感じた。
小さく細い身体や儚げな印象、純粋そうな瞳も一役買ってのことかもしれないが、とにかくどこか浮いている。
彼女の瞳に吸い込まれそうな意識を無理矢理覚醒させて質問に答える。
「木を、植えてる」
その通りなのだけど、そうとしか言いようがない。
さらに言うと、久々に同年代の、しかも女子との会話とあってうまく言葉も浮かばなくなっていた。
それにしても……
すごく綺麗だな、と改めて彼女を見る。
肌は雪原のように白い。
目はぱっちりしていて鼻が高く、育ちが良さそうな整った顔だった。
少しウェーブのかかった髪はやや茶色をしていて、腰の辺りまで伸びている。
突然そんな女性に2、3年の間まともに同世代と会話もしてこなかった俺が話しかけられたのだ。
当然のように、俺は焦りと困惑を覚えていた。
「なんの木なんですか?」
彼女はそんな俺の内心に構わず、首を傾げて再び質問を飛ばしてくる。
「この苗木は、桜の木だよ」
そう、これは桜の苗木だ。
この並木通りに植えられた木々もみな桜だ。
俺の解答が気に入ったのか、彼女が微笑みを浮かべた。
「桜……私とおんなじだ」
おんなじ?
なんのことだ。
さっぱり意味がわからない。
「同じって?」
なので、素直に聞き返してみた。
少し困ったような表情を浮かべていた自覚はあるのだが、彼女は全く気に止めずに答えた。
「私の名前」
彼女は微笑んだまま答える。
「桜って言うの」
これが、俺と彼女の出会い。
俺が変わり始める、そのきっかけとなった出会いだった。
作品を読んでくださりありがとうございます。
私が未熟なことや世界観のためもあり、この作品には久高と桜の二人しか登場人物がいません。
つまりこれで全ての登場人物が出揃ったわけですが……
まだまだ物語としては入口に立ったところですので、これからもしっかりできる限り色々な方が気持ちよく読めるような作品にしていけるよう頑張りたいです。
もしよければ、これからも『桜咲く季節に』をよろしくお願いします。




