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智の日常

この辺からの品のなさが、R15にする原因なんですよねー。笑って許してね。

「いやあ、アツシさん、カンカンでした。大丈夫なんスか? あんな事して」


 俺はちょっとした事でアツシさんにひと泡吹かせたので、胸の奥をスッとさせながら組長に聞いた。


「まあ、大丈夫でしょう。アツシさんも意外と過保護なところがあるから、ほっとくとあんたに突っ込んだ仕事させないし、私も彼にはちょっと仕返ししたい気分もあったしね」


 俺に協力した組長も、悪びれることなくそう言ってのける。俺もそれに乗っかったんだが。


「意外と組長も、人が悪いんスね。俺も気をつけないと、油断できないな」

 半分本音でそう言うと、


「あら、あんたはその前に私の間合いに入れる様にならないと。油断どころか、私になぶりものにされるわよ」


「……怖い事、さらっと言わないでくださいよ。これでも必死で向かってるんスから」



 俺は正式に組に入れてもらってからというもの、早速組長からシゴキを受けるようになった。


 組長が言うには、俺は組長が思っていたよりは身を守るすべと、タイミングの計り方を分かってはいるそーだ。それなりに長くナイフを使っていたので、身体が危機に反応しやすくなっているそーだ。


 ただし、それがあだとなって悪い癖もついてしまっていて、特に相手に仕掛けようとする時に隙ができやすい上、ナイフを素早く振り回せる分、大振りになったり、身体の動きが雑になったりしているんだそーだ。


 それを直すのが先だと言う事で、俺はナイフや刃物はおろか、木刀さえ最初は持たせてはもらえなかった。どの道ここでは相応に腕が上がらなければ、刃物を持たせない事になっているらしいが。


 それが昨日、ようやく一通りの型は憶えただろうと言う事で、木刀を握らせてもらえた。


 すると組長が、さっそく俺の相手になると言う。俺は最低限の身を守るすべがあるから、多少スパルタでも大丈夫とのことだったんだが……。



 いや、まいった。組長が強いのは分かっていたが、こんなに手ひどく打ちこまれ続けるとは。


 遠慮もクソもあったもんじゃねーや。こっちは頭や胴体を守るだけで精いっぱい。手も足も打撲だらけになってしまった。


 思わず身体が引いて守りに入ってしまうと、今度は言葉の「口撃」が始まる。


 トロい、鈍い、守りが甘い、型が崩れると戻せない、度胸がない、気合いが足りない、これじゃハルオの相手になれない。好き放題言ってくれる。


 ムカつくから勢いに任せて前に出てしまうと、いいように打たれ続けてしまう。どうしろって言うんだ。


「どうも、こうも、早く私との間をつかんで、確実に打ちに行ける所に潜り込めるようにならないと、いくらでも打ちのめされるわ。カッカしてないで、ちゃんと見極めるようになりなさい」


 そうは言っても痛みと悔しさだけでもイラつくのに、さらに好き放題言われていちゃ、カッカとだってする。全く女って奴は口が減らない。



「じゃあ、始めるわよ。今日はいつまで持つかしらね?」

 組長が木刀を構えて言う。


 へーへー。確かに昨日は十分と持ちゃしなかったッス。でも、今度はこっちも考えた。少なくとも「口撃」まで喰らいっぱなしになることはない。こっちも言葉で仕掛けりゃいいんだ。


「ヘン。組長だって、所詮ババアッス。ホントは息が切れるんじゃないッスか? 俺が逃げ回って持久戦に持ち込まれたくないから、くだらない挑発、するんッスよね? 女の浅知恵ってやつッス」


 そう言いながら俺は組長から距離を離れていく。これでとりあえず打たれっぱなしはさけられる。


「あら、昨日よりは智恵を使うようになったのね。でも残念。私の持久力は半端じゃないの。大体あんたを逃がすほど、私、のろまじゃないわよ」


 そう言いながら組長は俺を追いかけてガンガン打ちこんで来た。は、早ええー!


「オラ、オラ、オラアー! 私を並みの女と一緒に見ないで! これでも元は、男だったんだから」


「お、男おー?」



 打たれるのを承知で、俺は手を前に出し、待ったのしぐさをする。組長の手がようやく止まる。


「あら? あんた知らなかったの? この身体は手術と薬で維持してるのよ」


「それじゃ、その胸もニセもんッスか? 俺、そういうのマジ駄目なんッス! ほら! ジンマシンが!」


 俺はオ〇マが死ぬほど嫌いだ。おネエ系ブームも理解できない。身体が拒絶してジンマシンが出るくらいだ。


「ふーん。ジンマシンが出ても冷静でいられるなら、間違いなく型は身につきそうねえ」


 そう言って組長がニヤリと笑う。い、嫌な予感が……。


 組長は突然着物の襟を開き、ニセの胸を強調して裾までまくってしまう。(おそらく)シリコン入りのふくよかな胸と、鍛え抜かれた男の足があらわになって、俺は思いっきり怖気が走った。


「あんたが慣れるまで、これでシゴイてあげましょうね」


 組長はニッコリして、俺に木刀を振りおろしてくる。


「ギ、ギエー!」


 こ、この組長、オ〇マのドSかよ! 俺、入る組を、絶対間違えた!


 たすけてくれえー!



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