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香の日常

「ハルオー。悪いけど車貸してくれる?」


 私はどもり癖のある、(ちょっとさえない)彼氏のハルオに頼んだ。


「い、いいけど。ど、どうしたんだ? きゅ、急に」


「会長の言いつけでね、奥様がこてつを連れて犬友達に会いに、〇〇市に行くから後を付けてほしいって。日帰りだけど高速乗るって言うし、あの奥様の事だから何があるか分かんないでしょ? バイクより車の方がいいかと思って」


「お、奥様、で、出かけるのか? ゆ、昨夜あんな目に、あ、会ったばかりなのに」


「みたいよ。本当にじっとしてられない人なのね。前世はハツカネズミだったんじゃない?」


 奥様の前世を占っている間にハルオは車庫から、小さくて古そうな軽自動車を出してきた。


「えー? コレ? 組の車じゃダメなの?」

 私は不満を漏らしたが、


「だ、駄目。こ、公私混同はしない。こ、これが俺の車。お、俺じゃ、こ、このくらいの車しか、い、維持できないよ」


「ふーん。一応仕事なんだけどな。まあ、タダで借りるのに文句も言えないか」


「そ、その代わり、お、俺が運転するよ。き、昨日の今日なんで、み、店も、や、休ませてもらえるんだ」


「え? ホント? ラッキー。一人じゃつまんなかったんだ」これならハルオとデート代わりだ。



 ところが、私はすぐにイライラしてきた。ハルオの運転のクソ真面目さに。


「ちょっと、ハルオ。これじゃ奥様に追いつけないよ。今止まった信号だって黄色になったばかりじゃない。制限速度だってピッタリ過ぎる。交通の流れに乗らないと、かえって迷惑だよ。高速乗る前に私に代わって」


 端に車を止めさせると、ちょっと強引に運転をかわる。そういえばバイクばかりで車の運転って、久しぶりだな。



 おお、ボロ車のくせに一応ターボついてる。どうせ高速だし、飛ばしちゃお。


 いい気分で加速していたらハルオに声をかけられた。


「か、香。な、何やってんだ。お、奥様の車、お、追い越してどうする」


「あれ? そうだった? いつ、抜いちゃったんだろ?」


 そういえば何だか内装がゴテゴテした車を追い越した気がしないでもないような。


「ちゃ、ちゃんと前見て、う、運転してるんだろうな」


「しっつれいね。教習所のセンセと同じ事言わないでよ」


 ハルオの顔色が変わる。そういやあの人もよく、こんな顔色してたっけ。


「い、言われてたのか」


「だって、車ってバイクの運転ほど、面白くないんだもん。車体と一体感みたいなの、あんまりないしさ。緊張感なくて、つい、ぼーっとしちゃうんだよね」


 ハルオを見てそんな話をしていたら、あくびが出て来た。


「わ、分かった! 分かったから、き、緊張して、ま、前見て運転して!」


「うるさいなー。だったらハルオが運転してよ。ほら、代わって」


 そう言って私はハンドル片手にシートベルトをはずし、腰を浮かせてハルオのいる助手席に足を延ばそうとする。


「な! 何やってんだ!」

 ハルオがぎょっとした顔をするけど、私はかまわない。


「そっちに移るんだってば。ほら、ハルオもベルト外してこっち来てよ」


「出来るか! 走行中の高速だぞ!」ハルオのどもりが止まる。


「出来るよ。礼似さんなら高速でバイクから車にだって乗り移れるよ」


 ハルオは一瞬絶句すると、


「あの人と、一緒にしないでくれー!」と、叫んだ。



 それでもハルオは、なんだか凄い顔をしながら運転席に移動した。私がアクセルとハンドル、ほとんど離しかけたからかもしれない。なんだ、やればできるじゃない。嘘つきー。


 そしてハルオは、


「か、香は、に、二度と、く、車の運転、し、しちゃダメだ! く、車も貸さない!」

 と、肩で息をしながら断言した。


 ちぇーっ。つまんないのー。


 前にバイクの後ろに乗せた時も固まっていたしな。度胸のない男だなー。


 アトラクションのスリルなんて、目じゃないのに。あ~あ。



※当たり前ですが、このお話はフィクションです。上記のようなことは絶対にあり得ませんので、死にたくなければ真似しないでください……つーか、死にたくても真似すんなっ! 殺人行為です!





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