表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/20

会長の日常

 私はこの街の裏社会を牛耳っている、こてつ会という組織の会長だ。


 この街には昔から「こてつ組」「華風組」「真柴組」という三つの組があり、時折、新興勢力的な組織が発生したりもするが、主にこの三つの組織を中心に、裏の世界を担って来た。


 その三つの組が最近連合した組織となり、最も勢力を誇っていた「こてつ組」の組長をしていた私が会長に就任したのだ。


 先日、こてつ組の新しい組長も決まり、ようやく会長職に専念できる環境を整える事が出来た。


 かなりまだ危なっかしい組長だが、物事を始めた時などそんなものだろう。私だってやむを得ず親の後を継いで組長になった時は、右も左も分からずに、すり寄る奴等を見極めながら孤軍奮闘。それなりに苦労をしたものだ。


 私は好きでこの世界に入った訳ではない。親の死によって、抗争の激化を避けるために、仕方なく組を継いだだけだ。だからただの社会人として由美を娶ったのだ。


 だが、親がこの街を愛して守り続けてきたことは理解しているし、私も街と組のために全力を注いできた。こてつ組連合の会長として、一番最初の話から登場しているし、今でもこの話に私の存在は必要なはず。そこまではきちんと(?)設定は出来ているようだ。



 それなのに、名前はまだ無い。まるで「吾輩は〇である」の冒頭部分のようだ。


 私なしでは「ドレミ三婆」は成り立たない。話の上の重鎮であるはずなのに、作者のネーミングセンスが無いせいで、迷い猫並みの扱いだ。


 登場人物がやたらに多いのも問題だと思うが、それでも悪役にだって「田中」や「関口」、一回っきりの使い捨て役にも「西岡」の名がついた。「田中」には「田沢」の偽名までついていた。私はそれ以下か。



 これだけ愚痴ればさすがに作者に同情されて、名前がついたようだ。どんな名だ?


「小手津 継男」


 ……馬鹿にされているとしか思えない。


 しかも、作中では「会長」で用が済むので、名前が出ることはまず無い? だからっていい加減すぎるだろう!


 作者にとって、私への関心はかなり薄い方らしい。結構いいようにこき使われている気がするんだが。

 作者には後で弾丸入りの封筒を送りつけておこう。そうしよう。



 存在感がピンチにあるのは作者にだけではない。最近、由美やこてつにも軽く扱われている気がする。


 由美の出かけ好きは相変わらずだが、今や私への遠慮もなくなってきているような。


 組に着いてすぐ、由美から電話が来たので出てみると、


「あ、あなた? これから私、ちょっとツイッターの犬友達に会いに行くの。遅くなるんで、夕飯はタエさんが用意したものを一人で食べてね」


「おい。昨夜爆破されたデパートに閉じ込められてひどい目に会ったばかりじゃないか。少しは家でおとなしくしていられないのか?」


「あら、それで私やこてつのお友達にとっても心配をかけたから、元気なこてつの姿を見せに行くのよ。大丈夫。会うのはドッグランだから閉じ込められたりしないし、高速に乗ればすぐ帰れるから」


「高速? 近くじゃないのか? 一体どこまで……」


 ワンワン、ワンワン。電話口の向こうにこてつの催促鳴きが聞こえる。由美の気がそれるのが手に取るように分かった。


「〇〇市よ。じゃあね、行ってきます」


 通話が一方的に切れてしまう。


 友達の心配を気にかけるより先に、私の心配を気にかけようとは考えないのか!


 いや、怒っている場合じゃない。誰かに後を追わせないと。礼似は……ああ、もうこういう時には使えないか。こうなったら香にでも頼むか。


 電話をかけようと持ち変えた先から、また着信音が鳴る。由美の奴、考え直したか?


 携帯の表示は通話ではなく、メールだった。由美独特の派手な絵文字のデコレーションで、


『私の裁縫部屋の物に触っちゃだめよ。こてつのお正月の晴れ着を作ってるんですからね!』

と、打ってあった。



 正月? 今は、まだ、夏なんだぞ! どれだけこてつ中心に世界が回っているんだ、あいつは!


 私の裏社会での地位は上っているが、家庭内の地位は落ちていく一方のようだ……。






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ