表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/20

再び、こてつの日常

最後は主役にシメてもらいます。

 今日もボクは、とても平和に暮らしている。でも、お母さんが「お裁縫部屋」って言う所から出てこないので、ちょっとつまらない。


 昨日は車で遠くに連れて行ってくれたし、いっぱい遊んでくれた。公園の芝生でかけっこもしてくれた。「カフェ」とか言うところで、いつもと違うご飯もくれた。ただ、「お友達」って言う、ボクにはうっとおしい奴等がまとわりつこうとしたのにはまいったけど。


 お母さんは「どうしてこてつは他のお友達と遊べないのかしらねえ?」


 なんて言ってるけど、この「お友達」って奴等はボクとおんなじような姿で、お母さんみたいに二本足で歩かないし、優しい声もかけてこないし、何だかお母さん達とは違う匂いを振りまいている。しかも、こいつら無遠慮にも、ボクの匂いを嗅ごうとしてくるんだ。



「さあ、こてつ。ご挨拶をしましょうね」

 なんて、お母さんは言ってるけど、ボクの匂いを思いっきり嗅いでもいいのは、この世で一人、お母さんだけ。お母さんに似てる人なら少しくらいはいいけど、なんでボクがこんな良く分からない匂いを漂わせている連中に、匂いを嗅がせないといけないんだ?


 ボクは簡単には匂いを嗅がせたりなんかはしない。その前に近寄られるのだって気に入らない。


 それにこいつらは、絶対にお母さんを狙っている。そういう訴えるような目をしたり、お母さんの関心を引いたり、お母さんの手からおやつをもらったりするなんて、もってのほかだ。


 お母さんも、お母さんだ。いつもなら、


「こてつが一番かわいい。父さんよりも、他の誰よりも、こてつがこの世で一番かわいいわ」


 なんて言っているくせに、ボクが「お友達」とやらを一生懸命にお母さんに近づけないように気をつけてるのに、


「こてつはどうして、他のお友達と仲良く出来ないのかしら?」

 なんて言っている。


 だ、か、ら! ボクはこいつらをお母さんに近づけたくないの! こいつらは父さんって人よりも、お母さんに媚びるのが上手そうだから、気を緩めないようにしてるんじゃないか! どうしてお母さんはこうも鈍いんだ! ボクがお母さんを取られるような真似、する訳ないじゃないか!


 いつもの写真を撮るときだって、


「他のコと一緒に写れたらいいのにね」

 なんてため息をつく。そんな事絶対にしないぞ。ボクの笑顔はお母さんが喜ぶのが嬉しくって、つい、笑っちゃうだけなんだ。カメラとか言う訳の分からないものに笑ってるわけじゃない。お母さんに笑ってるのに、お母さんは何処まで分かっているんだか。


 本当にお母さんの物凄い鈍さには、まいるんだよな。それでもボクは、お母さんが大好きだけど。



 でも、今日はお母さんが、部屋にこもってずっと出てこないので、ボクはちょっと寂しい。だけど、実は昨日お母さんを守り疲れてしまっていたので、ボクにもいい、骨休みになっていたんだ。


「こてつー! お待たせ。お洋服も、お着物も、沢山出来たわよ。さっそく着てみましょうね」


 扉が開いて突然お母さんがそんな事を言ったと思ったら、ボクはお母さんに抱えられて、いきなり身体に何かをまとわされる。


「はい、お帽子かぶって。お袖を通しましょうねー。まあ。シャツ姿が似合うわ。どう?タエさん?」


「ええ、可愛らしゅうございますね」


 タエさんが、目を細めて頷いているが、ボクは寝ぼけてぼうっとしている。何よりうっとおしい。


 昨日の「お友達」と言い、この、「お洋服」「お着物」と言い、お母さんはどうしてこうも、うっとおしい事を喜んでボクにつきあわせるんだろう?


「こてつ、カメラ見て、笑って」お母さんがカメラを構えて言う。


 カメラに笑ってるんじゃないって言うのに。こんな気分で笑えと言われたって。


 それでもお母さんの顔を見ると、つい、笑顔になりそうになる。ボクも弱いなあ。



「なんだ? またこてつの服を作ったのか?」

 父さんという人が顔を出してきた。


「ええ、こっちは可愛いシャツ。これは袴姿ね。この写真で年賀状を作ろうと思って」

 お母さんが答える。


「ああ、それでこんなに早くに作ったのか。それでもだいぶ早いと思うが」


「あら、ベストショットを狙うのに、早すぎるなんてことは無いわ。それにしてもやっぱり柴犬って和犬なのね。こんなに和服が似合うなんて!」

 お母さんはご機嫌だ。ボクにはつらいけど。


「たしかに袴姿は凛々しいな。柴犬には良く似合う」

 珍しく父さんまで同意した。


「柄もシンプルだし。こてつは男の子なんだから、いつものゴテゴテした服より、この方がずっといい」


「あら、まだ、こんなの序の口よ。もっと、可愛らしいのを作ったの。こっちがメインだから」


 そう言ってお母さんがボクに別の何かを着せる。父さんと、タエさんの顔が、一気にひきつった。


「ほーら、総柄物の振り袖よ。ピンク色で可愛いでしょう? 帯は大きな蝶々結びにしたの。可憐だわ」


 えっと? お母さん? なんだかボク、すごく違和感を感じるんだけど?


「お、おい。こてつはモロに男の子の顔だぞ。少し年期も入って来てるし」

 父さんがドン引きな声で言う。


「でも、こてつは去勢手術を受けてるし。別に可愛ければいいでしょ? 私の自信作なんだから」


 お母さんは一人でニコニコしながら「やっぱり可愛いわ」を連発して言う。


 でもね、お母さん。タエさんは唖然としているように見えるし、父さんは


「そうじゃなく、男顔なんだ」


 と言って頭を抱えているし、写真を載せた、前に見えるパソコンの文字に、「女装」とか、「オカマ」とか、「顔とギャップ」って言葉がいっぱい載っているのが、ボク、すごーく気になるんだけどなあ……。



                                    おわり



最後までこんなネタですいません(笑)。楽しんで書かせていただきました。お付き合い頂き、ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ