Part5
・・・とにかく、犬牙との出会いは、このジャムパン戦争がきっかけだったといっても過言ではない。高校生らしい、非常にみっともない戦いだったと、今さらながら思う。
戦争は二週間ほど続いた。あまりにも俺たちが購買で大騒ぎを起こすので、学校側が購買部にジャムパン大量入荷という措置までとらざるを得なくなったほどだ。だが、そのおかげで、購買で俺と犬牙が揉めることは無くなった。
それでも、奴との腐れ縁は続いた。
ジャムパンのことからもわかるように、俺とアイツは本質が似ていた。好きなアーティストも一緒、好みのタイプも一緒。それに引き換え、姿や学校での態度はかなり逆だったように思う。
俺は髪も染めて、制服も着崩したステレオタイプな不良。
犬牙は、恰好だけは極めて優等生に近かった。
「俺は性格がひねくれているから。せめて外見くらいは立派にしとかねぇと」
二人で向かい合ってジャムパンをむさぼっていたとき、犬牙が良く言っていた言葉だった。昔からへんてこな理論を振り回して相手をけむに巻くことが好きな奴だったよ、アイツは。
出会ったその日から、俺たちは色々なことではりあうようになった。
勉強ではテストの点数をいちいち比べあった。
運動では必ず同じ種目に出場し、直接対決をした。
何気ないじゃんけんでも、きっちり勝ち負けを記録した。
抜きつ抜かれつ、一進一退。
俺と犬牙との張り合いは、学校内でも有名になった。事あるごとに賭けまで行われる始末だ。俺たちはそれが楽しくて、より一層戦いを激化させた。
三年間、俺たちは競い続けた。はっきりと勝ち負けをつけてきた。そして、いつも一緒だった。当時のアルバムをめくると、必ず俺と犬牙が同じ写真の中に存在していた。もちろん、どちらが多くの写真に写っているかも競ってみた。
残念なことに3枚差で奴の方が多かった。