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炭酸水  作者: 薄桜
1/3

前編

「求める者。」の続編です。

なので、登場人物の説明がありません。m(__)m


養生人物が、彼氏・彼女の関係になってる以外、

前回から引き継いでるものなんてありませんが・・・

今年は暑い。

強い日差しが照りつけ、陽炎が道に揺蕩う。

蝉達が壮大に鳴き、暑い空気を振るわせる。

毎年暑いと思うが、特に今年はそう思う。

そんな夏休みのある日。

一人での昼食の後片付けも済み、自室で雑誌を広げていると。

チャイムが鳴った。


「こんな暑い日には、外に出たくない~。」

予告もなく、僕の家に来た葵姉は、

自分の家からここまで、しっかり外を歩いて来たはずだが、

言葉とは裏腹に、笑顔で、

「美晴から、薦められたんだけど、映画見ない?」

そう言って、透明なケースに入ったDVDをヒラヒラさせた。

ターコイズグリーンののタンクトップの下に、

ベビーピンクのホルターネックのタンクトップが覗く。

下も、クロップ丈の黒のジーンズに、ビーズで飾られたサンダル。

手には、例のDVDを1枚だけ、

もちろん日傘など無い。

日焼けなんて、頭に無いかのような格好だ。


お邪魔しま~す、と声をかけ上がって来る。

「涼しいのは、リビング? 聡太の部屋?」

「・・・僕の部屋。」

勝手知ったる余所の家・・・と、言う所か、

迷いも無くスタスタと、僕の部屋に向かう。

「あ、飲み物、何かちょうだい。」

そう、一言残して。

行ってしまった方向をしばらく見つめ、

溜息を一つ溢した。


台所に向かい、冷蔵庫を開ける。

1本のペットボトルを取り出そうとすると、

近所のケーキ屋の箱が目に入った。

妹が買ったものだろうか?

中身が気になって出してみると、

箱の上には、メモが貼り付けてあり。

-------------------------

 好きに食べていいよ


         りさ

-------------------------

珍しい事もあるものだ。

箱を開けると、シュークリームが2つ。

パリパリの皮に粉砂糖で化粧され、

ぱっくりと割れた口には、カスタードと、生クリーム。

そして、半分に切られたイチゴと、ブルーベリーが2つ載っていた。

1つ360円のやつだな、

・・・少し、出来過ぎの感が否めないが、

ありがたく、後で頂く事にしよう。

とりあえずは、冷蔵庫から出した、ペットボトルを1つと、

グラスを2つトレイに乗せ、自室に向った。


「はい、飲み物お待ち。」

「ありがとー!!」

笑顔で迎えた人は、僕のベットに転がっていた。

一瞬、僕は顔が引きつったかもしれない。

「あれ? 理佐ちゃんは?」

「友達と図書館。自由研究の資料探しだって言ってた。」

「ふーん、頑張るね~。」

「そっちこそ、受験勉強は?」

「ん~、今はそんな言葉聞きたくな~い!」

両耳を手で塞いでじたばたしている。

・・・そんなに布団蹴らないで下さい。


溜息を一つ吐き、ペットボトルに手を伸ばす。

キャップを捻ると、ぷしゅっ、と炭酸飲料特有の

小気味良い音が響いた。

シュワーという細かな音を立てて、グラスに注ぐ。

2つ目のグラスに注いでいると、

いつの間にベットから降りたのか、横から手が伸びる。

その手は、グラスを掴むと引っ込み、すぐさま

「ぅぐっ」

という声がした。

驚いて、声のした方を見ると、

葵姉は、眉間に皺を寄せ、複雑な顔をして立っていた。

「・・・甘くない。」

一瞬、何を言っているのかわからなかったが、

とある仮説を思い描くと、笑いがこみ上げてきた。

その仮説は当たったらしく、恥ずかしさを誤魔化すように、

声を荒げて、持論を展開してくれた。

「な、何よ! 炭酸っていったら甘いものでしょ!?」

「ジュースの炭酸飲料水ならね、でもこれは、ガス入りのミネラルウォーターなんだ。」

宥めるように言い、ペットボトルを渡すと、ばつの悪そうな顔で、

穴でも開きそうなほどに、まじまじと眺める。

「へー、ライム風味?」

「うん。お気に入りだったんだけど、最近見かけなくってさ、

 こないだ久しぶりに見つけたからまとめて買ってみた。」

「ふ~ん、これ好きなの?」

ペットボトルをテーブルに置き、こちらを見ながら言う。

「炭酸時々欲しくなる時ってない?」

「あるけど・・・。」

「でも、結構甘ったるいし、どれだけ糖分が入ってるかを考えると、飲めないっていうか・・・。」

「・・・・・・糖分。」

「こないだテレビで、どの飲み物にどれだけ砂糖が入ってるか、とかやっててさ・・・凄かった。」

「・・・・・・凄いんだ。」

「でも、これだと平気でしょ? ただの炭酸入りより、ライムでさっぱりしてて飲み易いし。」

「・・・そっか。」

葵姉は、何かに何得したように、そう呟いて、グラスを口に運ぶ。

「そう言われればそうね、ライムが爽やかな感じ?」

「ぷっ、単純?」

「なっ、本当にそう思うのっ! さっきは、予想と違って脳が騙されたの!」

「はいはい。」

「そこっ、適当に返事しない!」

どうやら、収まらないようなので、話題をずらしてみる。

「でもさ、本当に最近レモンのしか無いんだよね。」

「へ?」

「期間限定とかだったのかな~? どっかで見かけたら教えて。」

「あ、あぁうん、わかった。」

「じゃ、持ってきてくれたDVD見てみようか?」

前中後の、前編です。

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